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ぼくが、わたしが活動を始めた理由
足元の世界をもっと面白く
タマリ 中村和馬

生まれも育ちも(ほぼ)葛飾柴又。寅さんのごとくふらりと和気町に来てから、もうすぐ十年が経ちます。お気に入りの場所は、行きつけの床屋さん。「すぐそこの十字路の角に昔あったパン屋さんのホットドッグが人気だった」とか「和気町には約八千万年前に火山があり、その火口の上で今暮らしている」など、髪を切るわけでもなく立ち寄っては、珈琲を片手に、店主やときにはお客さんとまちのことについて話すのが、暮らしの楽しみです。
少し好奇心を働かせてみると、地域は面白いモノ・コトで溢れている。それを追いかけているうちに、人と出会い、地域とつながっていく。その積み重ねのなかで、自分の中の「ふるさと」がじわじわと育っていく感覚を持つようになりました。
一方で、便利で情報にあふれた現代では、好奇心を持つ余白が失われがちです。和気町では地域おこし協力隊として、小・中学生の放課後の学び場を運営してきました。子どもたちの興味は画面の中に向かいがちで、大人もまた、忙しさの中で足元の世界を味わう時間を持ちにくくなっていると感じていました。
もっとこの地域を、この世界を、一緒に面白がれないだろうか。そんな思いから活動を始めました。古墳を探検したり、やきもの窯をつくったり、「木を切ってみたい」という声から林業体験を開いたり。それぞれの好奇心を出発点に、活動を紡いでいます。足元から世界を面白がり、多様な他者とともに何かをつくり出す——そんな創造の積み重ねを、地域や学校、子どもから大人にまで広げ、それぞれの「ふるさと」を発酵させていきたいです。


〈出典〉ふえき 89号(2026年1月25日)