ぼくが、わたしが活動を始めた理由

身近な『食べる』が自然と直結していることを体験

エディブル・エデュケーション岡山研究会代表・田辺綾子

  • 知る
  • 2022.04.01

自然に配慮した持続可能なスタイルの食育菜園を学校教育の場に取り入れ、菜園をハブに地域と学校の新たなコミュニティづくりを目指すとともに、食育菜園授業(エディブル・スクールヤード)を普及させるため「EDIBLE Lab. サマーワークショップ」を実施し、人材育成を行っている。

 植物との暮らしは30年になります。たくさんの専門書を取り寄せては試すことを繰り返していくうちに、植物以外にも土壌や生態系のことを知るようになり、完成された自然界の摂理に感動と畏敬の念を抱くようになりました。

 習い事の講師をしていたのですが、子ども達の異変を感じていました。ある日、6歳の子に「ママのお弁当のおかずで何が好き?」と尋ねることがあったのですが、アニメのキャラクターの名前を答えるのです。キャラ弁のことらしい。「それって卵で出来てる?」と尋ねると、「わかんない」と。その子は、キャラクターに象られたおかずがどんな食材で作られているのか、わからないまま食べていることに愕然としました。親の愛情弁当が、そんな皮肉を招いているなんて。ほかにも、唐揚げを自分で作れることを知らない子もいました。

 便利なものに依存した環境下で五感を使った体験が減り、選択肢が少なくなっていること、「知識」を生きる「知恵」に変換できない子どもが増えていることを察し、危機感を覚えました。

 多様性があるゆえに矛盾も抱えたまま、悠々としている自然界の包容力。生きていこうとする健気な姿や、したたかな戦略。こうした自然界の逞しさと子ども達を繋げたいと思うようになりました。

収穫前の緑色の鞘の小豆が何色か、初めて見るのに身を乗り出す子どもたち

 人間には「バイオフィリア」という自然と繋がりたい本能があります。子どもは正直で、すぐにエディブル教室の虜になります。身近な「食べる」行為が自然のダイナミックな営みと直結していることを体験することで、子ども達の「生きる力」が大きくしなやかに育まれることを願っています。

(2022年1月25日 FUEKI No.77)