ぼくが、わたしが活動を始めた理由

学生等と作る文化の拠点づくり。『出会いの選択肢』を増やしたい

Bank Gallery @ENTER WAKE代表・井方克明

  • 知る
  • 2022.04.01

世代や立場を超え、アートや文化をキーワードにした新しい交流を生み、そこからさらなる創造を喚起するための場として、JR和気駅前多目的施設「ENTER WAKE」内にモノづくり・芸術・文化活動の発表拠点を学生と地域の方たちでつくる。

 私の生き方に最も大きい影響を与えた出来事の一つに、とある芸術家との出会いがあります。その人は丸太一本をノミだけで彫り上げる木彫作家で、進路について思い悩んでいた時期で、「世の中にはこんな選択肢もあるのか!」と衝撃を受け、視界が開けた瞬間でした。このような出会いがもたらす人生の転換点は、誰にとってもいつ訪れるかわからないもので、それが若い時期であればより意味の大きいものとなるはずです。

 しかし、このような出会いの場というものは、地方では選択肢が限られるのが実情です。2020年に子どもが自然に囲まれのびのび育つ環境を求めて岡山県和気町という田舎町に移住してきました。和気町は自然や制度、人の温かさなど、とても素敵な環境です。しかし、特に子どもたちにとっての出会いの場は多くはありません。「出会いの選択肢」を、なんとか田舎町でも増やしたいと思い、この活動を始めました。

 表現することのすばらしさは、自分のことを見つめ直す力が身につくこと。そして、自分の思いを整理することやその思いを他者に伝えるためにも役立ちます。その能力は、普段の生活や仕事にも活かすことができると考えています。

 また、表現者としての視点を持つことも重要です。普段何気なく過ごしていると、見過ごしてしまう自然も、ただの景色と化した人間が作ったものも、造形物として視点を変えて見ることができれば、新しい発想を生み出すことができると考えています。敷かれたレールの上を進んで社会に出て働くだけではなく、創造しながら生きていくことでより豊かな社会、人生を送ることにつながると思っています。将来、子どもたちがこの町を、自分たちの生活を豊かにしていくために、表現行為が持つ想像の力が必要な要素になると確信しています。

ギャラリー作りワークショップ【照明設備編】

(2022年1月25日 FUEKI No.77)