cover's column

ダンサー・平井優子さんの新たなものが生まれる原点「手」

my things 一筆書き vol.2

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  • 2026.03.11
絵・タケシマレイコ

「私の身体は、自分の身体なんだけど、もう一人の自分の身体を動かしている感覚です―― そういう意味では『道具』なんでしょうね」

クラシックバレエからコンテンポラリーダンスまで、独自の世界観で表現を続けてきた平井さん。自身がダンサーとして舞台に立つのはもちろん、振付家として公演全体の構成・演出も行っています。

「手」は、他のダンサーよりも比較的大きいことから、自分らしい動きを追求するようになります。他では類を見ない表現の背景には、自身の身体と日々対話し、丁寧に扱ってきた積み重ねがありました。

平井さんの表現で印象的なのは、繊細かつ、時折織り交ざる不思議な動きです。本誌の表紙のモチーフを決める際も「どうしたら表現できるかな」と、様々なポーズを提案してくださいました。

直線的なラインと、関節の柔らかさが特徴の身体。なかなか筋肉が付きにくいことから、20代にはジムでアルバイトをしながら鍛えようとした時期がありました。ただ、「身体に無理な負荷をかけても仕方がない」と思い直し、自身の身体を生かす方向へ舵を切ります。独自路線を開拓する、原点のような出来事でした。

また、振付家としても「手」はなくてはならない存在です。全体のテーマやイメージを「手」で紙に書いたのち、ダンサーの動きや照明の色、舞台美術や音楽に至るまで、「手」で自らパソコンに入力し、具体的にしていく。まるで様々な楽器や音色で“交響曲”を作るかのように、多くの要素を組み合わせて一つの舞台を作っていきます。「見たかったものが、次々と目の前に現れていくのが面白い。自分で踊るのとは全く違う楽しさがある」と笑顔で話す姿が印象的でした。

ダンサーとしても、振付家としても、平井さんが大切にしている「手」。自分の道を創ってきた軌跡が、手の動き一つひとつに宿っているように感じました。

〈出典〉ふえき 88号(2025年9月25日)