cover's column

果実を育て、文化を耕す。手づくりでゆっくりと

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  • 2022.04.12

表紙に掲載された桃は今夏、わが家の果の実ファームで採れた清水白桃です。Mother Treeと名付けた園地の大樹に実った一玉をお披露目しました。

絵・タケシマレイコ

私と妻が岡山特産の桃と葡萄の果樹栽培を始めてから10 年、今年やっと桃栽培のコツを会得した心境です。

二人の出会いは30年近く前、私の主宰するNPO法人アートファームから始まります。以来、演劇やダンスなど舞台芸術の創造・鑑賞・育成・普及・協働の5事業を柱に数々の活動に取り組んできました。その創立マニュフェストに「未踏の荒野を開墾するように岡山という文化風土に蒔かれた小さな種子を、たいせつに育ててゆきたい。促成栽培ではなく、手作り栽培でゆっくりと。より豊かな舞台芸術を実らせるための百年浪漫――」と掲げています。アートとファームの活動と精神を、分かち難く結びつけながら歩んできました。

バブル経済の崩壊後に発足したアートファーム、東日本大震災を契機に営農した果の実ファーム、そして、コロナ禍後の文化と農業の土壌に、これからも種を蒔き育て、花を咲かせ実らせる営みを続けます。

(2022年9月25日 FUEKI No.76)