梅干しのこと
NPO法人瀬戸内こえびネットワーク 斉藤牧枝
玉野の食は豊かです。みやま公園に行けば、新鮮な旬の野菜や魚がいつでも手に入るし、島に出かければ、収穫物を分けていただく幸運がしばしば訪れます。さらに昨年からは、玉野の仲間たちと「畑の会」を結成し、自分たちで育てた野菜を慈しみながら味わうようにもなりました。
瀬戸内国際芸術祭春会期が終わり、ほっと一息ついた6月のある日、豊島で「梅干し用に」と、たくさんの小梅をいただきました。梅干し作りは初体験。果たしてカビを生やすことなく完成にたどり着けるのでしょうか?
ちょうど畑の会のみんなも梅仕事を始めた頃でした。仲間の様子をうかがいつつ、まずは、小梅を黄味がかるまで2~3日追熟。ヘタを取り除き、水洗い。ザルにあげて水を切り、しばらく乾かす。最後に少量の焼酎を入れたボウルの中で転がしたら準備完了。保存容器に塩と梅を交互に詰めるだけ。塩は梅の重量の15%と決め、重石もしないことにしました。
最初はとにかくカビに怯えていましたが、毎日朝夕とガラス容器の中の小梅の無事を確認するうちに、だんだんと小梅がいとおしくなっていきました。10日も見守ると、カビの心配もなんだかもう必要なさそうです。
ふっくらやわらかくなった梅の実は、実際そうなのですが、まるでフルーツのよう。もしかしたら、ほのかに甘いのではないかと愛でながら妄想が膨らみます。容器のふたを開け、ふくふくとした実を一粒つまんで口の中でそっと押しつぶしてみると… ああ、しょっぱい! 強烈に塩が効いています! 当たり前のことにまで、驚いてしまいました。
それでも梅の薄皮の下にある、滑らかな果肉がほどける感じは絶品で、早くも大成功を確信。梅の実は、味見と称してどんどん胃袋に落ちていきます。
今日は7月12日。同じように梅仕事をしていた畑の会の仲間から「土用干しが終わった」と朝いちばんの報告。そうだ、そうだった! 私も天日干しだ! 夏会期が始まったら毎日楽しめるよう、もっとおいしくしなくては! いそいそと梅の実を広げ、眩しい日差しの下に差し出してみました。太陽の熱で温まった梅を、またひとつつまむ極上の一日が、今まさに始まったところです。

〈出典〉ふえき 88号(2025年9月25日)