FACE

コミュニティが編むつながりは、まちの活気と経済を生み出す

  • 知る
  • 2022.07.21

浅口市金光町大谷の門前町にある「大谷みかげスクエア」。レンタルスペースとして地域の居場所となり、チャレンジショップとしてまちに新たなサービスを生み出しています。経済の循環の種をつくり、地域をつなぐハブとなり、まちの人の協働や学びも生み出すこの場所を運営する沖村さんにお話を伺ってきました。(取材・文/森分志学)

森分志学さん(左)と沖村舞子さん(右)

沖村さんは東京の専門学校で建築デザインを学び、編入学した大学を中退後、岐阜県で間伐材の活用、三重県で自然農、静岡県でレンタルスペース、神奈川県で古民家レストランなどと、様々な地域の取り組みに関わりました。2016年、地域おこし協力隊として岡山に移住。住民主体でまちをつくっていく「地域チャレンジトーク」を企画し、移動サービスや空き家活用など、まちの人たちのチャレンジを共にかたちにしていきました。協力隊を卒業した現在は、一般社団法人moko’aの代表理事を務めています。

moko’aが運営する大谷みかげスクエアは、元々は金正館という旅館の食堂でした。建物が取り壊されることを聞き、「壊すならください!」と、沖村さんが譲り受けました。地域の人たちと改修ワークショップを行い、そこで要望を聞くと、カフェなどの居場所を求める声が多く、コミュニティ&レンタルスペースとして2020年8月にオープンしました。地域の人たちが料理をつくったり、プロレス鑑賞会を開催したり、交流や趣味ができるレンタルスペースとなっています。

また、チャレンジショップの機能もあり、スイーツやハンドメイドアクセサリーなど、自分の商品を出店できます。出店者としては、お客さんが来るかが気になるポイントですが、とある珈琲屋さんの出店で人が集まり出したことを皮切りに、出店者も集まるように。今では浅口市外からも出店希望があり、出店枠は毎月ほぼ埋まっています。

チャレンジショップは、地域の人たちと異なる他者の接点をつくる意味でも影響を与えました。地域の外からやってくる出店者たちが並べる商品や駆使する広報ツールなどを見て、地域の人たちが刺激を受けた結果、今では自分たちでまちの情報をInstagramで発信したりしています。

加えて、オープン1カ月後に映画『とんび』のロケ地に選ばれたことも好転の要因でした。映画が公開されると、観光客が商店街にやってくることで、「自分たちのまちをもっとよくしたい」と、まちに活気と協働が生まれました。外の人たちが訪れることで頑張る気力が湧いたと話してくれる地域の方もいらっしゃるそうです。

あのとき、町並み保全のためにこの建物を残さなければ、この展開は当然ありませんでした。今後は、チャレンジショップに出店したい人を増やし、店舗を持ちたいとなったとき、市内の空き店舗や空き家を提供できるよう準備を進めています。また、手つかずの2階は、子どもたちのために使える場所にしたいと、まちの経済と学びの種をつくる拠点としての期待もますます高まります。

〈出典〉fueki78号(2022年5月25日)