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“若者が島に通い続ける”がつなぐ島の幸せ。

飛島ガーディアンプロジェクト代表・日置 幸さん

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  • 2022.04.01

教育と地域振興を掛け合わせて、若者が島の人たちと関わり続ける「飛島ガーディアンプロジェクト」。若者が島民を支えるという一方通行な在り方ではなく、若者が島の暮らしとともに在るというプロジェクトを牽引する日置さんにお話を伺ってきました。(取材・文/森分志学)

 飛島は笠岡諸島の中で一番規模が小さな島で、高齢化率80%後半、居住人口40名弱の限界集落です。日置さんが飛島に関わり始めたのは、興譲館高校のスタッフをしていた頃。学校のカリキュラムで、生徒の引率として飛島を訪れました。

生徒たちや日置さんにとって、飛島は特別な場所となりました。草刈りをして島の人たちから「ありがとう」と言われたり、何気なく話しかけてくれたりすることで、生徒たちはどんどん明るくなっていったと日置さんは話します。そんな元気をもらった飛島も、生徒が卒業してからは訪れなくなりました。半年後、日置さんの声掛けで「島に恩返しがしたい」と思っていた卒業生たちが集まり、彼らはガーディアンになりました。

 「飛島ガーディアンプロジェクト」に関わる若者は現在11人。月1回の頻度で島に来ます。1年目はお祭りなど島の行事に参加し、まずは島を知ることから始めました。2年目は貸してもらえた畑で野菜などをつくりました。畑のアドバイスをもらったり、島の人たちとのコミュニケーションを深めました。3年目となる今年度はアミューズ会を開催。島の人たちの集うきっかけがなかったところに、新たな交流機会をつくることができ、好評だったようです。

 「若者たちが来ることによって、島の人たちが喜んでくれる。通うことに意味がある」と日置さんは言います。通い続けることの真髄は、島の人たちの幸せの維持です。日置さんは「すでに島の人たちは幸せだと思って関わる」ことを大切にしています。島の人たちは若者たちがいなくても十分に幸せ。しかし、その幸せが老化や怪我などで突然続かなくなる瞬間が訪れるかもしれず、その突然に対して、通い続けているガーディアンなら手を差し伸べることができます。そうした存在であり続けるためには、「通い続けること」に尽きるのです。

 日置さんは「自分たちが役割を探しているうちは役割がない。役割は振ってくる」とも話します。島の人たちが年を重ねていくのは決まっている未来。島の人の役割を奪うわけでなく、彼らから「もうこれできんわ。よろしくね」と言われるタイミングがいつ来てもいいように日々学んでいます。

 そのため、島に若者が通える環境を整えることは重要です。現在は、ガーディアンの拠点づくりを目指し、行政と協力して空き家調査も行いました。若者たちは、教育を入口として島に関わり、まずは島から〞与えられ〟て、島に通い、島の人とともに在ることで地域振興を〞支える〟。そんな循環を飛島ガーディアンプロジェクトはつくっているのだと思います。

(2022年1月25日 FUEKI No.77)