福武教育文化振興財団

menu
ホーム > 財団と人 > #3 石田篤史さん
財団と人

#3 石田篤史さん | 公益財団法人 みんなでつくる財団おかやま
対談日:2015.07.07

必要なことにお金を出すという
風土とか文化を育てる

社会課題の解決に取り組むNPO法人や財団法人の活動って、市民にどれだけ浸透しているでしょうか。昨年、公益認定を受けた、中四国地方初の市民コミュニティー財団・みんなでつくる財団おかやま(以下みんつく)は、みんなの「何とかしたい」をカタチにするために資源循環を行うための仕組みを提供し、この仕組みを活用することで地域を良くするアイディアや行動をみんなで応援し、社会課題の解決を進めています。設立に至る思いやコミュニティー財団の役割を代表理事の石田篤史さんに、福武純子理事長が伺いました。

福武 お勤めを辞めてまで、石田さんはどうして財団を始められたのでしょう。ずっとお聞きしたかったんです。県庁を辞めてまでというのは、相当な決心がいりませんでしたか。

石田 けっこう自然だったんです。僕が最後に勤めたのは、美作市にある勝英地域事務所というところでした。平成21年に大きな災害があって、災害の事業は3年間で区切りなんですね。ちょうど3年目で、今なら県庁には迷惑をかけないという思いで、区切りをつけました。
あと、財団を作るという勉強会に参加したことです。その当時はコミュニティー財団という言葉も知らず、市民ファンドと言われていたのですが、なんとなく興味を持ちました。
県庁など大きな組織はどうしても閉鎖的というか、実際には私自身は、県庁の中でとても自由だと感じていたのですが、「やりたいけどやらない」ということを聞くことが多かった。だったらやったらいいのにという思いを県庁内外に感じて・・・最初から100のエネルギーを持っている人がいれば、5のエネルギーの人もいる。5のエネルギーだからやめようじゃなくて、5のエネルギーを出すことによって形になるんだよということを見せたい。一人ひとりに未来を作る力があるので、僕はそれを応援したかった。
日本は課題先進国と言われています。僕は課題先進国かもしれないけど、世界から見たら、めちゃめちゃ豊かで恵まれていることをもっと若い世代を中心に実感してもいいと思って。

福武 課題のない国なんてないですものね。

公益財団に求められているのは
品質の担保と継続性

石田 取り組み方がわからなくて不安がっているなら、ちゃんと取り組める仕組みがあるんだよということを提示してあげたい。もともと土木屋なんでそういう仕組みインフラがあってもいいんじゃないかと。ちゃんと取り組む手段があれば、人は本来もっと前向きになるんじゃないかというのが、思いです。
公益になった後からの方がよりコミュニティー財団の可能性を感じていて、それが当たり前になっていくために、どうやって育てていくかということをすごく意識をしないといけないと最近は特に思っいています。

福武 公益財団に移行するのは、大変でしたか?

石田 おそらく他の組織よりはたくさん説明するべきことがあったと思います。僕が最初に県の担当者と確認をしたのは品質の担保と継続性。この2つが公益法人に求められるものだと考えています。
品質の確保というのは個人に依存しないということと、継続性は、多くの場合は資金があるから解決しますというのも当然あるが、みんつくの場合はそれはないので、じゃあどうやって情報や質を担保していくかということの計画書とか、考え方みたいなのを資料にまとめて出したりしました。

福武 もう少し詳しくお聞きしたいのですが、財源はどうしているのですか?

石田 みんつくの財源も8割2割で、8割寄付ですね。

福武 寄付は、ずっと継続的にあるかどうかわからないですよね。

石田 もちろんそうですね。

福武 常に寄付を集めていないと。

石田 目的のある募金箱をたくさん増やしているんですが、本当にライトにかかわれる寄付を集める仕組みをたくさん作って、少しの思いでもきちんと参加できる仕組みにして、財団を支える基盤は安定させていきたいです。
運営部分は、システム化したりマニュアル化したりして、今まで3人で動かしていたことが、3年経って今は1人で動かしているとか、専従スタッフでないとできなかったことがボランティアのスタッフに担ってもらえるなど、だんだんと効率化できてきています。
あとは、若い40代の経営者の方たちを巻き込むような仕組みにして、私たちのことを知ってもらうとことで応援や参加する仕組みを作ろうとしています。

福武 具体的にはどのような?

石田 40代の意識の高い経営者たちは、今利益は上がっているかもしれないが10年後どうなっているかわからないので、地域がしっかり成長しないとだめだよねという意識を持っている方も多いので、みんつくを知って応援してもらうことで、逆に僕たちがその人たちに何が還元できるかを考えています。例えば、こんなことが地域で起きていますよという情報をお伝えするとか。

福武 助成事業もしているのでしょうか?

石田 しています。例えば、冠基金というテーマを決めた基金を個人や団体に立ててもらって助成する事業と、助成と言いながら原資がなくて、一緒に寄付を集めて、助成すると事業指定助成事業と、大きくはその2つです。冠基金は、寄付者の意向で基金をたてて、僕たちがそれに合わせた助成事業を設計し、そのテーマの対象となる団体を募集します。もう1つは、みんつくで今、岡山の地域で取り組むべきテーマを設定して、地域のみなさんとお金を出し合って、そのチャレンジを応援しませんかという「社会変革金」というものもあります。

福武 寄付は集まりますか?

石田 動いている分だけ集まりますね。動かないと集まりません。

福武 そうすると、ネットを活用するだけじゃなくて、一軒一軒まわって集めるのでしょうか?

石田 どっちもです。事業指定助成というのはある意味では団体や活動を知ってもらうこともターゲットにしているので、どちらかというとたくさんの人に少しでも、千円でも出してもらうというイメージなんです。逆にどれだけ名簿を集められるか、それを団体さんに渡すことによって事業が拡大するというイメージなので、ネットでバンバン拡散するんですけど、それだけでは広がらないので効果をあげるためには、どちらかというと個別に提案とか営業すると言った方が近いです。

資金集めはたいへんですが、
もっと経済観を変えていかないと

福武 何かやって、その対価を得るというのはないんですか?

石田 セミナーとかコンサルティング的なものなどがあります。基本的には寄付集めの代行はしません。1番ニーズがあるんですけど、僕たちはあくまでインフラだと思っているので。シンポジウムの企画やセミナー開催などの収益事業がだいたい2割ぐらいです。運営するためのお金は、今は組織上1000万円ぐらいあったらまわります。去年だったら対価でもらっているもの(事業収益)は約250万円ぐらいです。

福武 あとは寄付なんですね。毎年700、800万円集めるのは大変でしょうね。

石田 寄付の中には、普通に申込み用紙に書いて寄付するんじゃなくて、イベントの中に入っている寄付というのもあるんです。僕たちが毎月29日にしているイベントはそうした機会を提供しています。寄付を参加の手段としてとらえてもらって、意識して寄付する習慣をつけていこということでやっています。子どもたちとは、募金箱とか貯金箱作りをやっているんですが、もっと寄付意識を持って参加できるような企画を増やしていきたいなと思っています。

福武 NPOの活動の一番大きな課題は資金だと思うのですが…

石田 やはり、まずはもっと経済観を変えることかなと。銀行の視点だとNPOという組織はわからないです。会社はお金を借りることはできるけど、会員や寄付を集めることはできないんですね。でもNPOはできるんです。ある意味財源は多様なので、NPOは組織を維持していく能力は本来的には高いと思っています。

福武 アメリカのNPOはすごく寄付を集めていているのに比べ、日本ではほとんどのNPOがそんなに財源は豊かではないですよね。いい方法がないものかなと。

石田 NPOの方にもマインドを変えていくことが大切だと思うんです。僕が研修でNPO向けに寄付集めの話をするときには、まず「皆さんはどういうときにお金を使いますか」と聞いています。モノを買うのはどういうときなのか、その商品を気に入っているときなのか、生活に必要だからなのか、であれば、そのことにマッチしないといけないですよね。助成金であっても補助金であっても、寄付金であっても、ちゃんと出し手のことを意識するということを研修で伝えています。
助成金はもらったら終わりみたいな、形だけの報告書を出せばみたいに考えているところも中にはあるので、そうじゃなくて成果を上げるということが重要なんだと意識づけをしています。特にみんつくの助成の事業には、報告をすることによって、自分たちが事業の成果を上げることで寄付のスパイラルがまわっていくんだなということを意識してもらうようにしていますが、なかなか難しいです。

福武 スパイラルを上げていくのはすごく大事なことですね。寄付文化が本当に広がっていくといいですね。

石田 自分たちが必要なことにお金を出すという風土とか文化をちゃんと育てるというか、気づきのきっかけづくりを大切にしています。
始めた時よりコミュニティー財団をしてよかったなと思っています。今振り返ると最初は正直自分でもよくわかっていなかったけれど、今は・・・20年経った時に、民間の財団やコミュニティー財団は、地域での必要性がもっと高まるだろうなというのがあって、特に僕らの場合、個人がさまざまなかかわりができる財団なので、その可能性、必要性は高いだろうなと思っています。そういう意味では岡山の地域で、最初にそういう取り組みをさせてもらえたというのはとても感謝しています。

福武 NPOは大変だけれども、これからの時代もっといいNPOが増えていかないといけないので、いいNPOを増やすにはどうしたらいいのかなと考えています。企業とNPOはやっていることはあまり変わらないと私は思っていて、そういう意味でNPOはどんどん収益も増やして大きくなってほしいなと思います。

石田 僕もそう思いますね。

小さい仕組みで、みんながちゃんと
サポートできるような社会に

福武 これからは、子育てをサポートするような社会を作っていかないといけないような気がしています。

石田 本当にそうだと思います。今、大学に行くのに奨学金をもらっている率というのが、たしか、15年前ぐらいは20数パーセントだったが、50パーセントになっています。日本の場合、奨学金は機構が中心ですが、アメリカとか欧米は、みんつくのような財団が地域のお金を出し合って学校に行かせるということをサポートしている例もあるので、教育のこととか子どもが育つ環境というのは各家庭だけのことではなくて地域のことでもあると思います。

福武 大きくなくていい、ネットワークが広がっていって、小さい仕組みで、みんながちゃんとサポートできるような社会になるといいなと思います。

石田 確か福岡だったと思うのですが、里親制度みたいなんですが子どもの家があって、里親を受け入れながら、その人たちが近くに住んでコミュニティーを作っていて、相互にサポートして、里親をうけやすくして横のつながりで見えたりとかできるようにしているみたいです。

福武 子どもの基地のようなものがあちこちにたくさんできるといいなと思うんだけれども。

石田 そうですね、子どもがそこに行って好きなことが何でもできるみたいな。

福武 子どもが帰ってもお母さんが夜勤でいないからといったら、そこに泊まりにいけるくらいに、子どもの居場所みたいなところがあちこちにあるといいなと思います。

石田 今、岡山でも居場所づくりの家を造ろうとしているところがあり、それはまずは誰でもというのでなくて、虐待とか何らかの事情のある子が中心なんですが、そこで一時避難的にも住めるし、何かあったら対応できるような家をという話があって、今度詳しく教えてもらうんですが。

福武 ぜひ行ってきてください。私もその話が聞きたいです。

福武 最後に、石田さんの思いを聞かせてください。

石田 僕の岡山での活動の始まりは、もっとみんな自由で、一人ひとりあなたに可能性があるよということを実感するために、プロジェクト制でイベントしたり研究したりするというSPOxT(スポット)という団体です。財団は僕にとってはその延長です。
プロジェクト制でイベントをすることは、「期間を決めて」「自分の得意分野」で社会参加することで、参加のハードルをさげ、楽しみながら参加し、その中で気づきを生んだり、マネジメントを学んだりという、個人のポテンシャルを上げることを目的にしていました。もう一つは会社で働き方やCSV、CSRなどを考え、組織のポテンシャルを発揮することをしていました。そして、社会のポテンシャルの発揮という意味で、個人個人が様々な形で関わりやすいインフラ作りをすすめることが財団での僕の取り組みだと思っています。
僕たちが大事にしているのは意思を持ってお金や時間を使うということです。自分の欲しい未来のために、誰かに任せるのでなく、きちんと参加をする。その一つとして、自分たちで意識を募って寄付する、お金をつかう習慣をつけていくことやその成果が実感できるように環境を整えていくためのみんつくだと思っています。

Profile

江原 久美子

石田篤史 
ISHIDA Atsushi

1977年、倉敷市出身。立命館大学卒業。2000年岡山県庁入庁。特に公共工事のIT化に関わり、入札情報の公開や、成果物データベースの構築による情報の有効活用(CALS/EC)をすすめるなど建設マネジメントを中心に取り組む。2012年に岡山県庁を退職し、市民財団担当として、特定非営利活動法人岡山NPOセンターに入職。一般財団法人みんなでつくる財団おかやまを市民530名の寄付により設立し、現職。(平成26年8月1日に公益認定)
岡山県観光特使、FMくらしき「縁join!SPOxT」パーソナリティー 等。

[Web] 公益財団法人みんなでつくる財団おかやま