教育文化賞

福武教育文化賞について

福武教育文化賞の目的は、岡山県の教育文化の向上に著しい貢献が期待される個人や団体を奨励するために賞を贈り、教育文化の振興による魅力的で豊かな人づくり地域づくりに貢献することです。
教育と文化の両面がお互いの特色を発揮することにより、より良い効果を生み出すことを願っています。

福武教育文化賞受賞者全体写真
※氏名表記 · 略歴 · 顔写真は受賞当時の情報です。

2023年度 受賞者決定

福武教育文化賞

大森 静佳 | 歌人・塔短歌会/編集委員
大森静佳

岡山県の短歌分野を代表する現代歌人であり、教育面でも岡山県内で短歌教室等の講師、指導に当たるなど、普及活動も積極的に行い、文学による地域振興に大きく貢献している。また、岡山市がユネスコ創造都市ネットワークの文学分野での加盟を目指している中、その芸術性・将来性は、文学によるまちづくりで世界と連携するために欠かせない短歌分野でのリーダーとして、活躍が大いに期待されている。

主な取り組みと実績高校時代に短歌と出合い、2年生のときに「毎日歌壇」への投稿を始める。大学在学中、短歌界で最も権威のある新人賞のひとつといわれる「角川短歌賞」を受賞し、現役の大学生での受賞という快挙を成し遂げた。以来、刊行された歌集が賞を受賞するなど高い評価を受けている。さまざまな短歌雑誌で作品を発表する傍ら評論や時評などを執筆している。岡山県内では「高校生文芸道場おかやま」の短歌部門の講師や、新見市哲西町の「幾山河の里短歌大会」の講師・選者を務め、短歌の普及にも精力的に取り組んでいる。2016年から吉備路文学館を会場に開催している短歌ワークショップ「31文字の私に出会う」には、県内はもとより中四国・京阪神・九州から受講者が集い、毎月1回の連続講座と講座修了後に受講者と共に製作する短歌連作集の刊行を続け、岡山の地に短歌の魅力を発信している。短歌分野を代表する歌人として今後の活躍が期待されている。

清水 ゆき | ミュージカル俳優
清水ゆき

活動の拠点を岡山に置き、歌とミュージカルを通じて若手アーティストの育成や地域づくり活動を実践している。岡山市をはじめ倉敷市、瀬戸内市、玉野市など活動範囲が広く、各地でのイベントに積極的に参加し、地元の人々と一緒に地域を盛り上げるなど、地域おこしのプランナーとして岡山県の音楽文化芸術の振興に大きく貢献している。また、平和教育の面では、ピースコンサートの開催や、学校や施設に出向き平和の大切さをアピールする活動を行っており、さらなる活躍が期待される。

主な取り組みと実績高校2年生の時に鑑賞したミュージカルに圧倒され、高校3年生の春、ミュージカル俳優の道へ進むことを決断。歌、ダンス、演技の技術を修得するため、ミュージカル科のある専門学校へ進学。スキルを磨き、専門学校卒業と同時に巨匠横山由和が主宰するミュージカル劇団「STEPSエンターテインメント」に入団する。9年間の在団で様々な役を通して総合芸術を学ぶ中、2007年に倉敷チボリ公園の人気ミュージカル「ハンスの冒険」でハンス役に抜擢される。2012年にイギリスへ語学留学。さらにはミュージカルの本場ニューヨークに渡り、ストリートパフォーマンスから始めて研鑽を積んだ。その後は活動の拠点を岡山に移し、既存のミュージカル出演をはじめ、構成から演出、出演まで一人でこなすミュージカル「みどりの天使」では13役を演じ分けた。近年ではライフワークである「岡山空襲(6.29)を語り継ぐピースコンサート」、小学校での「平和学習」(岡山ユネスコ協会主催)などへの出演、倉敷水島の戦争遺跡を歌った「亀島山の歌」などを通して、平和を芸術でつなぐ活動を続けている。脚本・演出・出演、そして舞台装飾・照明・衣装までを手掛ける「まちおこし創作ミュージカル」にも地域の人々とともに取り組んでいる。

岡山楷の木少年少女合唱団 | 代表 川崎 泰子
岡山楷の木少年少女合唱団

誰でも入団できる地域密着型の合唱団でありながら「将来どんな世界でも活躍できる人に育てる」をモットーに、子どもたちの可能性を最大限に引き出しながら、地域での地道な演奏活動を行っている。小学校低学年の子どもたちを中高校生がリードし、逆に小学生のひたむきな姿から学ぼうとする中高校生の真摯な姿勢がみられ、学校段階を超えた縦のつながりを学ぶ絶好の機会にもなっており、教育と文化の両面での成果が生み出されることが期待される。

主な取り組みと実績岡山市・瀬戸内市・備前市などに住む小学1年生から高校3年生までが所属。誰でも入団できる地域密着型合唱団でありながら、プロの音楽家・演出家・ダンサーなどが「未来を担う子どもたちに最高の音楽環境を」という使命感を持って本格的な指導を行っている。「楷の木」という団名の由来は、備前市の市木で特別史跡旧閑谷学校のシンボルでもある強く真っすぐ育つ楷の木に子どもたちの成長を重ねて命名した。2013年に初の単独コンサートを開催して以来、年1度のコンサートを行い、合唱だけでなくミュージカルにも挑戦し、毎年1,000人以上の観客を動員している。コンサート等の活動成果の発表は、市民センターや公会堂といった施設を活用するなど、地域の施設を文化の発信拠点としている。また地元でのボランティア演奏も精力的に行っている。団員の中には、各種コンクールに挑み入賞実績を重ね、卒団後に音楽大学へ進学する者もおり、演奏活動を通じた芸術文化の担い手を育成する貴重な場にもなっている。

株式会社ありがとうファーム | 代表 木庭 康輔
株式会社ありがとうファーム

障がいのあるなしに関わらず共に幸せに生きることができる「共生社会」の実現を目指す取り組みは、地域社会の課題解決へと繋がり高く評価されている。美術・造形・音楽から飲食に至るまで、多彩でユニークな表現活動を展開し、福祉の枠を超えた文化芸術活動内容には新規性や独自性がみられ、情報発信力も高く、先駆的な活動として全国的な広がりが期待できる。岡山県の地域の活性化と地域貢献に大きく寄与している。

主な取り組みと実績岡山市北区表町商店街を拠点に4種類の障がい福祉サービス(就労継続支援A型事業所、就労継続支援B型事業所、リワーク施設、共同生活援助)を提供する多機能型事業所である。「生き生きと堂々と、人生を生きる」という企業理念を基に、「知ることは、障がいを無くす。」の社会への浸透、共生社会創造を障がい者の真の声と姿を届け実現に貢献することを目指して活動している。
アートとサービス業を2本柱とし、表町商店街で空き店舗を活用した飲食店を運営するなど多彩な事業を展開している。20名以上のハンディキャップアーティストが活躍しており、描いた絵を貸し出すレンタルアート事業や企業コラボなどが行われ、商品パッケージに採用されるなど、アーティスト本人の創作意欲の向上と社会参画に繋がっている。
2020年に「おかやまSDGsアワード2020」を受賞したHUBLab(ハブラボ)では、障がいを持つスタッフが講師を務め、企業廃材をアート素材として再活用し、子どもたちが自由なアイデアで創作活動を行っている。誰もが参加できるボーダレスなアトリエとして多様な交流を育んでおり、インクルーシブ教育の推進と共生社会の実現に大きく貢献している。

玉野みなと芸術フェスタ実行委員会 | 代表 斉藤 章夫
玉野みなと芸術フェスタ実行委員会

玉野みなと芸術フェスタは、港街玉野で文化芸術活動を地域と協働して実施する取り組みであり、2003年宇野港を全国的に注目される芸術港へと願って始めた活動を皮切りに、20年間さまざまな活動を地道に継続してきている。市内各地で多彩なアート活動の実績を重ねるとともに、歴史文化の再発見事業や「みなと音楽祭」の開催、子どもたちが表現活動を体験する「こども芸術アプローチ」に取り組むなど、活動の幅も範囲も広げ、岡山県の芸術文化による地域振興に大きく貢献している。

主な取り組みと実績玉野みなと芸術フェスタは、歴史・文化と融合した活動や社会的に価値ある活動を展開し、質の高いアートを追求しながら市民とともに楽しめるアートイベントを開催している。市民・県民の力の結集と高名なアーティストの参加によって、宇野港を中心とした玉野市街を全国的にも注目される芸術港・ロマン街にしたいという思いから2003年に始まり、今年で20周年を迎える。以来、市民とアーティストが一体となって「面白い町・玉野を実感できる」ことを目指し、作品制作やワークショップ、音楽祭や舞台公演、文化芸術に関するシンポジウムなど様々な活動やイベントを開催し、市民の文化意識の高揚や地域振興を図っている。
2009年に開催された「しおさとまつり」では、伝統芸能の狂言を用いて地域のルーツ産業である製塩の歴史文化を伝え、現在も「玉野しおさい狂言会」として玉野の文化・歴史を笑いながら学び、笑いながら伝える活動を続けている。2018年から開始された「こども芸術アプローチ」では、市内の幼稚園にアーティストを派遣して、子どもたちに造形や音楽、表現活動を体験してもらうなど、次世代育成の教育に取り組んでいる。また、「トップアーティスト招へい事業」では、世界的な音楽家を招いて玉野市内の小中学校でコンサートを開催し、子どもたちに優れた芸術文化に接する機会を提供することで芸術文化を担う人材の育成に繋げてきた。「明神鼻の小屋」では、地域の方々を講師に招き、親子で地域の歴史文化を学べる講演会やワークショップを開催。「リボンの会」では、誰もが集える楽しい広場の再興を目標に定め、文化芸術を楽しめる活動を推進するなど、様々な活動やイベントを通して玉野の文化力向上・魅力向上に大きく貢献している。

2022年度 受賞者

福武教育文化賞

小林 照尚 | 彫刻家
小林照尚

実力派作家として多彩な作品を手掛け、県内各地に設置された屋外作品やモニュメントは地域の人々に親しまれ、作品を通して多くの感動を与えている。作品内容の多彩さ、活動範囲の幅広さは彫刻家として極めて独自性が高く、他の作家を刺激する存在となっている。また、自身の制作のみならず、地域と文化の観点から、人と人との出会い、新たな感動を生み出すことで地域文化の活性化を目指す活動に取り組み、岡山県の地域振興に大きく貢献している。

主な取り組みと実績塑造彫刻を学んだ岡山大学大学院修了後、手掛けたことのない大理石彫刻を学ぶためイタリアに留学し、帰国後、岡山市の特産品である花崗岩の万成石に魅せられ、多彩な作品制作を通して、その魅力を発信している。岡山県現代彫刻選抜展や、汎瀬戸内現代美術展、岡山芸術回廊など、多くの展覧会に出展。屋外作品・モニュメントでは、内田百閒生家跡の『牛』、岡山県総合グラウンド内の木原光知子顕彰碑『泳縁の碑』、仙台市彫刻のあるまちづくり作品『子供の領分:夢見る時代』の他、県内外で多くの作品を手掛け、彫刻家としての実力を認められている。また、近年ではチームで雪像アートにも取り組み、国内外で上位に入賞するなど幅広い活動に取り組んでいる。自身の制作活動のみならず、地域の芸術家や文化活動を支援することを目的に一般社団法人レン・ドウを設立し、代表理事を務め、地域と文化、地域と人などさまざまな出会いや親交を図りながら地域文化の活性化を目指す活動を行い、更に地元ゆかりの作家の顕彰にも尽力するなど、幅広い取り組みを展開している。また、岡山県美術家協会の事務局長も務め、美術を通じた文化振興にも貢献している。

森野 美咲 | ソプラノ歌手
森野美咲

©Yuki Suwa

新進気鋭のソプラノ歌手として、国内はもとより国際的にも活躍し、その実力は高い評価を得ている。ウィーンを拠点にヨーロッパと日本で演奏活動を続け、活動の幅を広げているが、岡山は必ず帰るべき原点の地として、県内で演奏活動を行うなど、岡山の音楽文化芸術の振興に貢献している。国際的な水準の音楽を岡山の地にも紹介してくれる貴重な存在として、次世代の音楽家にも影響を与えるなど、今後、更に大きな役割を果たすことが期待される。

主な取り組みと実績若手ソプラノ歌手として、現在ウィーンを拠点にヨーロッパと日本で演奏活動を続けている。バロックや現代音楽、オペラ、日本歌曲などレパートリーが幅広く、中でもオペレッタやドイツ歌曲に定評がある。
東京藝術大学卒業後はウィーンに留学し、2014年ガルス音楽祭でヨーロッパデビューの後、ウィーン・コンツェルトハウス、シェーンブルン宮殿劇場、ウィーン楽友協会、バロッコ劇場等で数々のオペラやコンサートに出演している。2019年にはウィーンフィル夏のアカデミー『偽の女庭師』題名役でオーストリアツアーを成功させ、プロ野球オールスター戦開幕式で国歌独唱も務めている。また、岡山フィルハーモニック管弦楽団との共演となる『I am a SOLIST』へ出演し、地元岡山から巣立って行こうとする次世代の若者に勇気と感動を与えている。2022年にはオーストリア・バーデン市立劇場で『椿姫』の題名役に抜擢され、実力が高く評価されている。その他、東京オペラシティでのリサイタルシリーズ【B→C】にも抜擢され、自身が作詞をした歌曲集『はじまり』を世界初演し、ソロリサイタルをさせた他、東京交響楽団などとも共演するなど、国内外での活躍の幅を広げ、音楽文化の振興に大きく寄与している。

上田手漉和紙工場 | 6代目 上田 繁男 7代目 上田 康正
上田手漉和紙工場

津山横野和紙、箔合紙を製造する唯一の工場として、伝統工芸に数少ない手漉和紙の継承・保存に努め、その希少性と、重要性は全国的にも高く評価されている。これまで積み重ねてきた歴史を存続させるため、工房の見学や紙漉き体験などを通じて箔合紙の普及にも努めており、技術や文化を継承し、若い世代へ伝え守っていくために極めて重要な役割を果たしている。岡山県の伝統工芸を守り続けていく、かけがえのない存在として今後の更なる活躍が期待される。

主な取り組みと実績上田手漉和紙工場で作られる箔合紙は、正倉院文書に記された美作紙の伝統技法を受け継いでおり、強くて美しい光沢となめらかさ、野性味ある素材感などから海外での評価も高く、東京2020オリンピック、パラリンピックの大会関係者への記念品として選ばれた。
また、伝統文化を存続させるために、工房の見学や紙漉き体験を行っており、地元の学生をはじめ、他地域の人々にも津山の産業に触れてもらう活動を行っている。地元の小学校では、1年生から年に1回紙漉き体験をし、地元の文化祭で和紙を使った作品を発表したり、5年生になると紙漉き時に使うトロロアオイの栽培、収穫、和紙の原料の三椏(ミツマタ)のへぐり(黒皮をそぐ作業)、川ざらし(川の水に晒しあくを抜く作業)を体験する。小学6年生の12月には工場を訪れて自分の手で卒業証書の紙を漉き、世界に一枚だけの卒業証書を作るなど、紙漉き体験などを通じて箔合紙の普及に取り組んでいる。
日本の伝統工芸としての和紙の魅力を、国内だけにとどまらず、全世界に広げていきたいと、日々継承・発展に尽力している。

おはなしのWA♪ | 代表 遠藤 寛子
おはなしのWA

子どもたちへ朗読の楽しさを、元放送局アナウンサーであるプロの話し手が伝えるという独自性のある活動は、子どもたちのみならず、幅広い年代層にも支持されており、全国的な広がりが期待されている。特に、西日本豪雨で被災した兄弟犬の実話を絵本にした『ブラザーズドッグ』の朗読は、子どもたちの心に残り、防災意識の向上にも寄与している。朗読を通じての教育活動、朗読文化の更なる振興に著しい貢献が期待される。

主な取り組みと実績岡山県内を中心に活動してきた元放送局アナウンサーの有志が集まり、朗読を通して東日本大震災並びに西日本豪雨災害の被災地の復興を支援すること、また朗読による伝承や朗読の指導により、朗読文化の振興に努めることを目的として継続的な朗読活動を行っている。
2013年から10年間継続している「3.11朗読と音楽と伝えたいこと」では、福島第一原発事故により一時全村避難を余儀なくされた福島県相馬郡飯館村の方が来岡し、飯館村の状況を伝えている。この縁で、東日本大震災の復興支援として飯舘村の「いいたてっ子未来基金」に浄財を送っている。(なお、2018年からは西日本豪雨災害復興支援の募金活動も行っている。)また同会のメンバーも飯館村を訪問するなど、被災地に寄り添った活動を展開している。2018年に起きた西日本豪雨災害で「あの日何があったのかを、絵本を通して後世に伝えたい」と、実際に真備で被災したロングコートチワワの兄弟犬の強い絆の話をもとに、絵本『ブラザーズドッグ』を発刊した。絵本は、県下小学校400校への寄贈、売上金は被災動物支援団体等に寄付している。
『ブラザーズドッグ』発刊後は、「子どもたちが読むブラザーズドッグ朗読録音会」を開催し、朗読の指導をしつつ朗読の楽しさを伝える活動を行っている。これらの取り組みは、将来を担う子どもたちへ自然災害への備えの大切さを伝えるとともに、本離れが著しいとされる子どもたちが本に親しむきっかけにもなっている。

ズンチャチャ | 代表 須原 由光
ズンチャチャ

Photo yukiwo

岡山県下においてコンテンポラリーダンスの普及啓発を先導的に担い、経験、世代、性別、分野、地域を超えた、型にとらわれない自由な発想でパフォーマンスを行い、その可能性を体現している。地域に根ざした活動として、自らの作品創作だけにとどまらず、子ども、学生、成人など全世代に開かれた体験講座を長年にわたり継続するなど、岡山県の現代舞踊の振興にも貢献しており、今後更なる活躍が期待される。

主な取り組みと実績「一生青春ダンシング!」を信条とするなんでも有りのダンスパフォーマンス集団として、1996年の結成以来、岡山・倉敷を拠点として、県外でも意欲的に作品を発表し、ポジティブなエネルギーを放ちながら進化し続けている。
代表の須原氏は、公演作品の演出、構成、振付、指導他、オリジナルの音創りや映像編集も手掛け、また、個人の魅力を最大限に引き出す演出、音楽やリズムを感じて踊ること、ふり幅の広い作風が持ち味である。一人ひとりの個性や人生、職業などのライフスタイルをモチーフとし、舞踊だけにとどまらず演劇や映像などの手法も生かしながら、多くの人が共感できるエンターテインメント作品を創造している。
公演の他にも、「ズンチャチャと踊ろう ズンチャチャダンスワークショップ」の開催、ワークショップ生とズンチャチャメンバーとの共演作品の創作、岡山県や岡山市のアーツフェスへの参加、地元の和太鼓グループやアートNPOと協働した作品創作など、幅広い活動を行っている。 近年コロナ禍での創作活動は困難を極めたが、ウィズコロナ時代の公演の在り方を模索しながら25周年記念公演『BIRDS』を成功させ、鑑賞者からも高い評価を得ている。

2021年度 受賞者

福武教育文化賞

軸原ヨウスケ | グラフィックデザイナー/COCHAE 代表・アートディレクター
軸原ヨウスケ

近年忘れられかけている伝統文化に光を当てて、民藝や郷土玩具などの周辺を発掘・再発見し、新たな価値を吹き込み再び世の中へ発信する活動は、エリアを超え県内外からも高く評価されている。独特な個性をいかしたグラフィック折り紙などの創作は、伝統文化の新しい視点での継承や復刻にもつながり、次世代を担う一人として注目されている。
また、『岡山発見かるた』のデザイン等を通して岡山の魅力を発信する活動は、岡山県の文化振興にも大きく貢献しており、今後の更なる活躍が期待される。

主な取り組みと実績独学でデザインを始め、デザインユニットCOCHAEのメンバーとして「遊びのデザイン」をテーマに、紙のパズル、グラフィック折り紙、伝統文化に新しい視点を取り入れた玩具の開発、展示やワークショップ、書籍の企画・編集・デザイン等、幅広い創作活動を行っている。郷土玩具にも造詣が深く、企画執筆・デザインを手がけた『kokeshi book』は東北の伝統こけしを紹介したもので、第三次こけしブームのきっかけになったと言われている。
また、近年は「岡山名物きびだんご」(山方永寿堂)などパッケージデザインや、包んで完成する風呂敷の「福コチャエ」シリーズなども手がけている。
企業のほか美術館や博物館とのコラボレーション企画も多数行い、岡山県立美術館主催の現代アート企画展「自由になれるとき 現代美術はこんなにおもしろい!」(2012年)など3点の展覧会ポスターは、グラフィック社が編集・刊行した『展覧会のグラフィックデザイン』(2015年)で紹介された。その他『岡山発見かるた』(2021年/岡山県)の図案とデザインなど、グラフィックデザインの範疇にとどまらない企画性あふれる活動を展開している。

竹内佑宜 | 郷土史家/公益社団法人 津山市観光協会 顧問
竹内佑宜

郷土史家として地域づくりの中核的な存在であり、積極的に活動を展開している。作品や記録資料を調査・収集し、執筆および出版活動を続けるとともに、当時の人々の志や生き方を読み解き、年譜式の資料集やエッセイなど、さまざまなスタイルで情報を発信している。個人的な研究のみにとどまらず、津山郷土博物館などとの情報交換、更には調査を終えた作品群の一括寄贈など、研究機関での継続的な活用を視野に進めており、時勢を見抜いた実行力で、岡山県の郷土研究と地域振興に大きく貢献している。

主な取り組みと実績津山藩の文人画家や幕末の歌人をはじめ、美作地域ゆかりの人物について、長年にわたり作品や記録資料を調査・収集し、研究成果の執筆及び出版活動を続けている。かねてより研究を進めてきた幕末の津山藩士・鞍懸寅二郎について、津山市内の研究者及び墓所である本源寺が協同で「鞍懸寅二郎研究会」を組織し、『史料が語る津山藩士鞍懸寅二郎』を編集・発行した。氏は会長として編集に携わり、貴重な史料集の発刊にも尽力している。
また、多くの観光事業も手がけ、公益社団法人津山市観光協会の会長任期中は、「美作大茶華会」の開催、「津山市観光立市宣言」の議決、「津山観光マイスター」制度の創設など、また「B-1グランプリ」の開催やB‘zの凱旋公演の歓迎プロジェクト等の実施に携わるとともに、津山城の鐘楼復元やさくら基金(桜の苗木植樹)の創設や、津山まなびの鉄道館の開館、SL「C11-80号」の津山駅前移設などにも尽力している。
特に、2015年に開催した「ロバートキャンベルさんと楽しむ秋の園遊会 衆楽の宴」は、キャンベル氏が『衆楽雅藻』を研究するため津山を訪れた際に、その原本と見られる肉筆の巻子《衆楽雅藻 乾》を所蔵する氏と出会ったことが機縁となり、現在の衆楽園での「曲水の宴」の再現と、キャンベル氏を招いてのパネルディスカッションが実現したものである。美作地域の歴史に根差した催事の企画・運営により、地域文化の魅力を発信し、活性化につなげている。

福田廉之介 | ヴァイオリニスト/一般社団法人 The MOST 理事長
福田廉之介

新進ヴァイオリニストとしての活躍にとどまらず、日本の若き才能豊かな音楽家たちで結成された室内オーケストラを主宰するなど、独自の活動を展開している。自身が辿った音楽人生から新たな若い音楽家の芽を育てることを目指し、岡山から全国、更に世界へと次の世代の音楽家を送り出すなど、まさに岡山の文化の発展・成長への欠かせないキーパーソンとして、その活躍はめざましいものがあり、岡山県の音楽による地域振興に大きく貢献している。

主な取り組みと実績幼少から類まれなる才能を発揮し、国内外の数々のコンクールで優勝している。特に2013年のクロスター・シェンタール国際バイオリンコンクールでは全部門出場者中の最高得点奏者に贈られるForderpreisを受賞するなど、ジュニア時代から国際的にも高く評価されている。赤磐市内の中学校を卒業後、シオンの音楽学校をわずか1年で首席卒業し、飛び級入学したローザンヌ高等音楽院も首席卒業。
2020年には若干20歳の若さで、自身を中心に国内外で活躍する若手音楽家たちと室内オーケストラ「The MOST」を結成し、良質で敷居の低いクラシック音楽に触れる機会を提供することにより、未だ裾野の広くない日本におけるクラシック音楽の普及振興を図っている。また、10代以下の次世代を担う人材を対象に、本格的な演奏の場をつくることにより未来の音楽家の育成を目指すなど、更に活躍の幅を広げている。
新型コロナウイルスの影響を受ける中、第1回 The MOST日本公演は、東京・岡山・石川での開催を実現し、2021年10月には第2回The MOST日本公演を、広島・石川・東京で開催し成功へと導いた。国内外での活動を拡大する中、岡山を必ず帰るべき原点の地とし、毎年ソロ活動及びThe MOSTの公演の主要拠点として、岡山のクラシック音楽文化に貢献している。

NPO法人灯心会 スカイハート灯 | 代表 藤原恒雄
NPO法人灯心会 スカイハート灯

長きにわたり、芸術と福祉の連携を実践され、継続的に展覧会を開催するなど、障がい者の方が働きながら文化芸術を楽しめる活動を展開している。信念を変えることなく、個人の特徴や特性を理解し、暮らしやすい環境づくりと、誰もが活躍できる場の実現に取り組む活動は、世界の流れにも合致し高く評価される。
またアートによる社会的自立、精神的自立を目指し頑張る姿やそれらの作品を鑑賞することで、次代を担う子どもたちの教育的成長にも大きな影響を与えている。

主な取り組みと実績支援の必要な障がい者の方々に対して、自立した日常生活や、社会生活及び就労支援などに必要な事業や活動を展開し、福祉の推進を図るとともに、ノーマライゼーションの地域社会の実現に寄与することを目的として、「アートを通して自立を目指す」という創作活動を行っている。利用者の創作意欲を最大限に尊重した活動は、「絵を教える」のではなく「自由に描く」機会を確保し、また生み出した作品を展示し、多くの人に観てもらうことで創作する喜びを感じてもらう取り組みを行っている。
利用者であるアーティストが創作した作品は岡山県美術展覧会などにも出品されており、多数の入選・受賞をするなど、作品としての価値を積み上げることに取り組んでいる。更に創作した作品を販売することにより、自身の手によって生み出されたものが、評価されて利益につながるという喜びを経験できる仕組みづくりは、経済的な自立支援にもつながっている。
林原国際芸術祭 希望の星「モナリザを描くⅡ」に作品が入選、入賞した際には、加計美術館で巡回展が開催されたが、県北からアーティストが来場することは困難であったため断念した。しかし多くの鑑賞者に自身の作品を見ていただく喜びを実感してもらいたいという強い想いから、地元真庭市で「モナリザを描く」展の開催を実現させるなど、アーティストの心に寄り添った支援活動を行っている。

たまのスチューデントガイドプログラムチーム | 代表 妹尾均
たまのスチューデントガイドプログラムチーム

小中高生が瀬戸内の魅力を学びながら、社会に向けて発信していく活動を行うことで、国際理解・地域創生への関心、主体性や英語力、コミュニケーション力の向上につながっている。メンバーが入れ替わる中、継続的に活動を行いながら、設立から延べ600名を超える児童生徒等がプログラムに参加しており、その実践力と教育的効果が高く評価されている。今後の社会教育モデルとしての広がりと、岡山県の地域振興への貢献が期待される。

主な取り組みと実績岡山県玉野市を拠点として、~宇野港を教育フィールドに~をテーマに掲げ、「地域で学ぶ空間が、玉野を良く知り地域とのつながりを意識するきっかけに」「小中高大の子どもたちが一緒に学ぶ空間が、自分の夢や目標を持つきっかけに」「外国人と話す機会が英語を学ぶ意味を考え、国際感覚を養うきっかけに」という3つの要素を取り入れ、幅広い世代と一緒に国際交流活動を実施している。実践的な英語教育の場として、外国人観光客が多く訪れる宇野港・宇野駅で、おもてなし活動や交流を体験することにより、子どもたちの学習意欲や地域に関する興味関心の向上にもつながっている。
また、プログラムの参加者を固定することなく、幅広く参加の募集を行うことで多くの小中高生がプログラムに参加し、更に支援者としてALTや海外からの留学生、外国人ボランティアにも参加してもらうことにより、国際交流の機会が増え、外国人参加者に瀬戸内の魅力を知ってもらう機会となっている。連携してプログラムを実施する地域のガイドボランティアからは「子どもたちがおもてなし活動に関わることによって、地域が元気になる」などの感想があり、地域の方の生きがいづくりにも効果が見られている。
新型コロナウイルスの影響が拡大する中、外国人留学生や地域ボランティア団体等とオンラインによるプログラムを実施するなど、活動を絶やさない努力を重ね、2022年に向けて意欲的に活動を続けている。

2020年度 受賞者

福武教育文化賞

川嶋絢 | ピアニスト/「宙(SORA)への奏で」
川嶋絢

障がいを抱えながらも、幼少期からピアノへの強い想いを抱き、日々努力を重ねながら地道な演奏活動を続けている。身体的なハンデを自ら創意工夫して克服し「聴く人の心に残るようなピアノを弾けるように頑張っていきたい」という前向きな姿勢は、同じダウン症の子どもやその保護者に、障がいにとらわれない生き方の多様性を提案している。大好きなピアノを弾き続け、積み重ねてきた実績は、地域における子育て支援や障がい者への理解を広げることにもつながり、岡山県の音楽による地域振興に大きく貢献している。

主な取り組みと実績保育園での鍵盤ハーモニカの演奏が機となり、5歳からピアノ教室に通い始め、高校2年生の17歳の時、初めて障がい者ピアニストのコンサートに参加した。
手が小さく、通常の指使いでは弾けない楽曲を自分なりにアレンジしたり、音符は自分では詠めないため、カタカナや記号で認識したりと日々努力を続けてきた。
国際障がい者ピアノフェスティバル・全国大会やカナダ、オーストリア、台湾などでの国際大会へ参加する一方、自宅近くのカフェレストランにおける月3回のランチコンサートの実施を軸に、地域の幼稚園や小学校での演奏、病院や高齢者施設などでの慰問公演を行う。2011年には東日本大震災支援チャリティコンサート、2016年には熊本地震復興支援コンサートなどに参加し、精力的に社会貢献活動を行っている。
また、同じ障がいを持つピアニストたちによるグループ「宙(SORA)への奏で」のメンバーとして、独自に各地での演奏活動を行ったり、台湾の障がい者音楽家たちと現地での交流も続けてきた。新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年3月に計画していた津山市での交流コンサートは延期となったが、台湾との国際交流活動はライフワークとして続けたいと願っている。

柴田れいこ | 写真家
柴田れいこ

一貫して女性をテーマとして撮り続けた作品は、地域や社会的問題に焦点が当てられており、そのさりげない表現の中には、それぞれの女性の生き方に対する温かな思いとやさしい視点があふれている。県内外で開催される写真展やトークイベントは、地域について再考する新しい指標となっており、鑑賞者へこれからの生き方を考えるきっかけを与えている。世代を担う表現者の一人であり、その表現活動は幅広い世代への力強いエールとして高く評価され、教育的な効果も期待される。

主な取り組みと実績子どもの独立を機に「自分にも何かできることがあるのではないか」と思い立ち、52歳で大阪芸術大学写真学科に入学し本格的に写真の研鑽を積む。
最初に手掛けた個展「天女の羽衣」では、地域で暮らす女性の今の姿を撮影し、高齢化社会へと向かう中で、女性たちの深層にある不安や焦りを表現した作品を発表した。また日本人と結婚した外国人女性を撮影した「Sakura さくら」は、日本の風習の中で様々な困難を乗り越えて力強く生きている姿に心動かされ、岡山という地域から世界を表現する試みのもと始められた作品である。太平洋戦争で夫を失った女性たちの肖像と証言を記録した「届かぬ文-戦没者の妻たち」は、3年以上かけて50人以上の女性の話を聞き、戦地には赴いていない女性側から戦争の悲惨さを訴えた作品である。
純粋に自分の心の中の表現と向き合って出てきた撮影したいテーマには、マイノリティや社会的弱者についての社会問題が内包されている。地域において個展などを開催し、写真という手法を通して、作品に込められた思いや社会的な問題を鑑賞者に問い、一緒に考え共有することで広がりのある表現活動を行っている。

備中志事人 | 代表 藤井剛
備中志事人

中高生たちの地域づくりに関わる人材育成や地域における学びの場の創出活動を精力的に行っており、岡山県内で同様の活動を展開するグループを巻き込みながら、県全体のネットワーク組織の母体としての役割を果たしている。高校教育などで、「地域学」的な実践型教育が急速に求められるようになっている中で、このネットワークを短期間で広げ深めた実践力は高く評価されており、岡山県の地域振興に大きく貢献している。今後、全国への広がりと、更なる継続的な活動が期待される。

主な取り組みと実績中高生と大人や大学生たちが、世代と地域の枠を越えて出会い、協働の場づくりを通して「自らを変える一歩」「未来を変える一歩」を踏み出すことを応援している。
その中心的な活動として、地域の課題解決などを自分事として志を立て、「マイプロジェクト(行動計画)」にする「コノユビトマレMTG」や「コノユビトマレ合宿」を開催したり、そのプロジェクトを発表してより高めていく「ジブンゴト学会」などを展開したりしている。
また、県内での活動のみならず、全国高校生マイプロジェクト実行委員会(認定NPO法人カタリバ等)が行う「全国高校生マイプロジェクト・スタートアップキャンプ」や「全国高校生マイプロジェクトアワード」の運営補助及び生徒引率など、マイプロジェクトを全国の高校生に広げる取り組みを行っている。
このような活動を行う中で、中高生たちが、興味関心や周囲への問題意識の中から課題を設定し、他者との対話や協働からの学びを通して解決に向けていく過程は、社会に主体的にかかわる基礎力となり、思考力、判断力、問題解決能力が育まれるとともに、自分のプロジェクトを説明することによって表現力も高められることに繋がっている。
さらに、中高生の活動支援に関わる大人たちの結びつきを積極的に強めるとともに、中高生時代に志事人の活動に参加した多数の大学生たちが、次は自分たちが中高生たちを助けたいと申し出てメンバーに加わるなど、同じ志(目標)でつながった志縁コミュニティの形成・拡大と志の循環・継承にも効果が見られている。

2019年度 受賞者

福武教育文化賞

浅野泰昌 | くらしき作陽大学 子ども教育学部 講師
浅野泰昌

乳児向け舞台芸術「ベイビーシアター」研究の国内第一人者であり、学生劇団との協働によってベイビーシアターなどを制作・上演し、乳幼児の情操教育に多大な影響を与えている。また、文化芸術と教育を結び付けた効果的な学生養成、人形劇の上演による地域に密着した地道で継続的な子育て支援は、優れた教育文化活動であり岡山県の地域振興に大きく貢献している。

主な取り組みと実績乳幼児及び児童向け舞台芸術の制作・上演を行う学生劇団「くらしき作陽大学子ども教育学部附属児童文化部ぱれっと」を設立し、指導教員を務める。学生と共に人形劇等の制作・上演や組織運営を行い、全公演の指導や引率を担うなど、学生養成と社会教育及び地域貢献に一体的に取り組み、活動を精力的に牽引している。2008年8月の設立から2019年8月までの公演実績は530回を超え、地域公演の他に、文化庁「文化芸術による子供の育成事業~芸術家の派遣事業~」を担当したり、国際演劇祭(松江・森の演劇祭、いいだ人形劇フェスティバル他)に招聘されるなど専門家の評価も得ながら、現在も実績数を伸ばしている。

菅原直樹 | 俳優、介護福祉士/「老いと演劇」OiBokkeShi 主宰
菅原直樹

高齢化社会の課題解決のため、「介護の現場に演劇的手法を用いる」という介護者が認知症の理解を進め深めることを目的とした活動は、先駆的な取り組みであり、画期的なアイデアである。演劇、介護のジャンルを超えた活動は、それらに携わる人々の意識を変える大きなきっかけとなり、今後も地域振興の向上に更なる貢献が期待される。

主な取り組みと実績「老人介護の現場に演劇の知恵を、演劇の現場に老人介護の深みを」という理念のもと、高齢者や介護者と共に作る演劇公演や、認知症ケアに演劇的手法を取り入れたワークショップを実施。超高齢社会の課題を「演劇」というユニークな切り口でアプローチする活動を続けている。
演劇体験を通じて楽しみながら認知症の人とのコミュニケーションを考える『老いと演劇のワークショップ』の実施や、観客が俳優と共に実在の商店街を歩きながら演劇を鑑賞する、徘徊演劇『よみちにひはくれない』など、数々の演劇公演を行っている。
また、岡山県内のみならず、埼玉、熊本などをはじめ多くの地域で活動の輪を広げている。三重県では、2017年から始まったOiBokkeShi×三重県文化会館「介護を楽しむ」「明るく老いる」の2つを柱とする3年間のアートプロジェクトが進行中である。そのプロジェクトの一環である「老いのプレーパーク」は、2018年、公募で集まった老いや介護に関心のある三重県内の19歳~90歳(結成当時)の公募メンバーにより結成され、その顔ぶれは定年退職したシニア、理学療法士、介護真っ最中の主婦や親子で、参加のメンバーまで様々である。老いの明るい未来を模索し、菅原氏の指導のもと、2018年12月に発表公演「老いたら遊ぼう!老人ハイスクール」を上演した。OiBokkeShiの活動を密着取材した「よみちにひはくれない~若き“俳優介護士”の挑戦~」(OHK/2015年)は第24回FNSドキュメンタリー大賞で優秀賞を受賞、「演じて看る」(KSB/2018年)は平成30年日本民間放送連盟賞で優秀賞を受賞。

山地真美 | 情景描写ピアニスト/Benerootミュージックアート事業部責任者
山地真美

ドローンによる空撮と即興演奏で日本各地の情景を残していくという、新しい芸術表現のジャンルを開拓した功績は大きく、ピアニスト個人の表現活動から大きく踏み出し、地域に根差した活動の輪が広がり続けている。県内にとどまらず、全国、世界への「発信力」「活動の広がり」は地域の未来づくりにとって重要な取り組みであり、今後更なる活躍が期待される。

主な取り組みと実績「情景描写ピアニスト」として、音楽を通して地域の魅力を世界中に発信する活動を行っている。カンヌ国際映画際祭入選作品「ORIGAMI」のテーマ曲に、後楽園の鶴の放鳥を描いたオリジナル楽曲「鶴は舞う」を提供、BSフジ番組「ブレイク前夜」の音楽を担当するなど数々の楽曲を提供した。2017年にはアメリカロサンゼルス公演、2018年3月には上海公演を実現し、上海テレビをはじめとするメディアに「情景を描く日本人ピアニスト」として取り上げられた。2019年にはコスタリカのサンホセ市にて、岡山城主宇喜多秀家のテーマ曲「生きる」をピアノ協奏曲に編曲し、コスタリカ青少年交響楽団との共演を果たした。海外において、地元岡山の児島のジーンズや鯉のぼりを使用したオリジナル衣装も高い評価を受けている。
また、廃校で使われなくなったグランドピアノの寄贈を受けて屋外の情景の中で行う演奏が話題となり、新庄村の凱旋桜、旧閑谷学校、神庭の滝、蒜山高原、牛窓オリーブ園、建部町しあわせ橋などの美しい情景を撮影したドローン映像と自身の生み出したピアノ音楽を組み合わせた映像作品を、「浮世音」として全世界に発表している。
2016年より、「山地真美との100人オケ」を企画。この100人オケは、地域の人たちと一緒に、地域にしかない音楽を作りあげるため、人と人が音楽を通してつながるというプロセスが、100年後の「地域の音楽文化」となることを目指している。2019年春会期の瀬戸内国際芸術祭にて、宇野港でのオープニングアクトを、総勢500人の一般参加者と共に成功させる。「100年後の未来に音楽のおみやげを」という活動方針を掲げ、岡山・関東・海外での活動を進める。現在、おかやま観光特使。