第25回朗読塾公演「林芙美子・波瀾万丈の人生」 西川アイプラザにて朗読

団体名:朗読塾
代表者:沖田喜一 所在地:倉敷市 設立年:1995年 メンバー数:12名
助成年度:2021年度 教育文化活動助成

活動の目的

明確で力強い言葉の表現と伝達を軸に、豊かな表現力を養い、照明、音楽等駆使して、集団による立体的な舞台朗読活動を行う。そして作品の持つ感動や叙情を力強く表現し、朗読の楽しさ、素晴らしさを観客と共有し、芸術・文化の向上、育成に寄与することを目的としている。

活動の内容及び経過

「林芙美子・波瀾万丈の人生」は24回目の公演として計画していたのだが、新型コロナ禍の中でも、文化活動を滞りなく続けて行くことを目指し、短編物を公演した。しかし、今回の作品に対する当初の思いを込め、25回公演として再度取り組むことにした。林芙美子の生き様を表現するために、「放浪記」、「風琴と魚の町」を骨子に構成をした。放浪記はいわゆる日記文学で、かなりの長編である。尾道での小学校時代の様子、東京での女給時代のこと、男運の良くなかったエピソードなどを織り込んで、瀬戸内の景色を背景に、養父となった人が、岡山出身の人だったことなど、瀬戸内での話を主点に構成した。放浪記の作品の冒頭に、「放浪記以前」という、当時の社会状況、流行っていた歌などの状況が書かれており、当時の社会情勢の雰囲気などを表現した。「風琴と魚の町」(尾道での小学校時代の物語)で、幼少の状況を紹介し、その後、女給時代のこと、尾道に帰ってきた様子などを情感たっぷりに、立体朗読で行った。また、風琴の様子を表現するために、アコーディオンの奏者、桧山武雄氏に特別出演を依頼し、快く出演を承諾してもらった。朗読でその時代を感じてもらえればと構成した。3月に配役を決定し練習に入った。しかし、コロナ禍で、練習場が使えない状況もあり、どうなるかと心配もしたが、優秀なメンバーに支えられ、かなり充実した仕上がりになったと思う。今日あまり使われない言葉、独特の方言など多くあり、意味がよく解らない言葉があったが、全員で調べて、だんだんと理解できるように、また、心地よく聞こえるようになり、当時の雰囲気が再現できたのではないかと感じる。例年通りの立体朗読(登場人物と地読みの部分を完全に分け、登場人物のキャラクターを十分意識できるよう配慮する。こういう方法を、立体朗読と自称している)で、より深みのある作品になることを目標とした。また、今回の作品も、その雰囲気作りに、舞台装置、照明効果を大いに活用することにも重点をおいた。シンプルであるが、作品の雰囲気を十二分に醸し出す舞台装置、洗練された照明を駆使できることを念頭に、舞台美術、照明プランを設計し、練習を開始したが、予定通りの結果に満足している。この助成を頂くことによって、その点を充実することができ、本来の目的を達することができた。また、当時のいろいろな背景、状況を紐解くなど、当時の文化の一端に触れることができた。もちろんコロナ対策を十分に実施し、観客は収容人数の半数に設定して上演した。25回という4半世紀にわたる活動の記録を残そうと、当初、記念誌的な冊子を作成することも考え、準備を進めたが、かなり負担が大きく、公演記録の冊子作成に切り替え、過去の上演作品の写真、参加者名簿を掲載することにした。この冊子は来場者に進呈した。この点も当助成を頂いたことで大いに助かり、感謝している。

活動の成果・効果

助成を得ることで、想定した重量感あふれる作品に挑戦することができた。ありがたいことである。来場者の満足できる舞台創作が可能になり、10月30、31日の公演を迎えることができた。コロナ対策で、入場者数を半分に規制したが、両日共に満席になり、全体で250名の来場者を迎えることができた。毎年、視覚障害者の方の来場があるが、録音図書に比べ、情景が浮かび大変良かったなど、絶賛の声を頂いた。その他多くの絶賛の声とともに貴重なご意見も頂いた。メンバーの会費のみでは実現が難しい、満足する舞台装置、満足できる照明・音響の駆使ができたことが助成の大きな力であると言える。岡山県の文化振興に多少なりとも寄与できたと思っている。

今後の課題と問題点

今後のより充実した舞台創作活動を行うには、会場の使用利便さ(土曜日の有効利用(休館無し)、駐車場等)、練習場の確保、経済的負担低減などが大きな課題である。もちろんコロナの終息が第一である。

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