木工の楽しさ・木製品のよさを感じられる授業実践

団体名:図工のキラリをみつける会
代表者:高橋英理子 所在地:岡山市 設立年:2012年 メンバー数:10名
助成年度:2020年度 教育文化活動助成
  • 児童の前で大工道具の扱い方を披露
  • 鉋の扱い方を指導
  • 説明に聞き入る子供達
  • 6年生完成作品

活動の目的

小学校高学年の図画工作科の授業で、木工を扱った題材がある。しかし、これまで教員の木工に関する経験の少なさや授業時間数の確保面から、セット教材で同じような作品を製作して終えることが多かった。
そこで、宮大工に授業にかかわっていただくことで、技術的なサポートや子供達に木工の知識や技能が伝えていただけるのではないかと考えた。
あわせて身近な生活や社会での木製品の存在を子供達が意識できるようにし、日本の伝統的な寺院や木製品に対しての興味・関心も引き出していけるように授業を組み立てていくことにした。

活動の内容及び経過

出雲大社や総社市の宝福寺の修復にかかわった宮大工:芥川英祐氏に、岡大附属小6年生(103名)の卒業木工製作に協力いただくことにした。12月に修学旅行で宝福寺を訪ねたことをきっかけに、子供達に宮大工という職業について知らせ、芥川氏を招きお話を聞く機会を設けた。子供達は大工道具に興味をもち実際に槍鉋を使って木材を削る経験をさせてもらったり、長い年月をかけて寺院を修復することの大変さをお話から感じとったりすることができた。
1月〜2月に、5枚の長方形(たて20㎝横6㎝幅0.9㎝)の板を使った「入れ物づくり」に挑戦することになった。これまで木工作品製作は5年生でのコルクボードづくりで糸鋸を使った程度の子供達である。試作品を工作用紙でつくったが、厚みを忘れるなど見通しがたてにくい子供達が多くいた。しかし芥川氏が丁寧にかかわり、1つ1つの工程で個別指導をおこなってくださったおかげで、子供達は(持ち帰った保護者が驚くほど)しっかりとした作品を完成させることができた。

活動の成果・効果

本実践をおこなう上で教師側も大変勉強になった。事前打ち合わせにおいて芥川氏から木工の基本や扱い方についての幅広い知識の一部を伝えていただいたが、すべてが新鮮で驚くことばかりだった。こうした芸術家やその道のプロに授業に参加していただくことは、子供達だけでなく教員にも意味や価値があると感じた。
お話を聞くうちに芥川氏の生き方や仕事に対するポリシーにも感動したので、「ぜひ図画工作科の授業を通して「人間づくり」の面からも、子供達へ向けてメッセージを送ってほしい」と授業の終末に依頼した。失敗することが次への意欲やよりよいものづくりにつながる…など、芥川氏の言葉は6年生の子供達に響いたようだった。苦労して頑張って作った、自分だけの入れ物づくりの経験があったからこそ、響くものもあっただろう。失敗してもあきらめず頑張ることは、今後の子供達の将来の生き方にも繋がるにちがいない。

今後の課題と問題点

今年度はコロナ禍の中で外部に大々的に公開することが厳しかった。(例年おこなっている個人実践発表会での授業公開ができず、全国・岡山県下への発表が難しく、広げるという意味では厳しかった。)図画工作・美術科に興味をもち日々の授業に悩んでいる、多くの先生方に実践を広げていく方法が課題かと感じた。
実践内容については、幸いにも助成金のおかげで、芸術家を招いての授業実践の方法や公開方法について、ノウハウを含めたものがまとまりつつある。今後も教員の立場としての授業づくりや運営、芸術家の立場としての授業参加の方法や授業内でのポジション(芸術家任せにならないように。)を整理・明確にさせながら、子供達のために授業づくりを考えていきたい。

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