新作狂言「御塩献上」を公演したことにより、瀬戸内広域での製塩の豊かさを学べた
代表者:斉藤章夫 所在地:玉野市 設立年:2012年 メンバー数:10名 助成年度:2020年度 教育文化活動助成
活動の目的
玉野市東部の山田地区には目に見える形で幾つもの製塩の痕跡を残しているが、実は玉野では市内全域で入浜式や流下式塩田による製塩事業が営まれていた。これら玉野の製塩にまつわる歴史・文化・産業・人物などを調査研究し、その結果を狂言という伝統芸能を使って伝えることによって、「玉野はいい町だ」との意識が芽生え「玉野に住んでてよかった」と言うことのできる、そんな郷土愛と文化度の高い明るい社会を目指すのが、この活動の目的である。
活動の内容及び経過
7/14、本年初めての練習を開始、今年の古典演目として「二人大名」「因幡堂」「貰聟」の三題を決定、早速口伝の練習を始めた。同じ頃「北向き地蔵」の逸話を調べる中で、北向き地蔵尊世話人会の方から、地蔵の横に立つくすの木のことを書いた古びた小冊子『私はくすの木』の修復を依頼され、地域の方たちとの繋がりができた。そんな矢先、先生から「今年はコロナ退散の願いを込めた新作狂言『御塩献上』を採り上げて欲しい」との提案があった。話は備前野﨑浜と伊予伯方浜の浜子同士の諍いと仲直りの物語だが、瀬戸内製塩の豊かさを学ぶとともに、コロナ退散を願うという時機を得た番組であった。12/12に開催された福武教育文化振興財団主催のandFオンライン情報交換会で取組を紹介させていただいた。1/11の玉野公演に向け練習を重ねたが、コロナ感染の蔓延により公演前日に急遽中止に追い込まれた。その後も私たちは練習を続けたところ、3/14に「しおさとまつり」を開催することができ、何とか所期の目的を達することができた。
活動の成果・効果
しおさとまつり2020は、玉野での新型コロナ感染者の急増により、舞台作りまでした前日の1/10に急遽開催中止・延期を決定したが、年度内の3/14に開催することができた。1月に比べ気候も良く、公演中のドア開放に誰からも反対されることなく、コロナ対策としての換気も万全を期すことができた。
新作狂言も当初計画の「北向き地蔵」ではなく、備前野﨑浜と伊予伯方浜との競合を主題にした「御塩献上」を演じたが、製塩業が備前地域だけではなく瀬戸内全域で広く行われ、製塩の恩恵が豊かに行き渡っていたことが改めてよくわかった。また、コロナ退散を願った狂言に対し観客の反応も良かった。公演が2か月延びたことによって練習量も増え、それだけ見応えある演技に仕上げることができた。また、来場者からのアンケート結果を見ても、狂言に対する理解者・賛同者が確実に増えていることが確認できた。
今後の課題と問題点
これまで練習成果の発表は、基本1月の玉野公演と3月の岡山(後楽園)公演だけだった。せっかく習い覚えた演目が発表終了とともに埋もれてしまうのは勿体ないと思う。何か機会があれば、他の場所でも我々の思いや伝統芸能の楽しさを伝えることができるのではないかと思う。ただ、現状ではコロナの問題もあり、例えば福祉施設への慰問や小学校での狂言ワークショップなどは当面は実現困難と思われるが、屋外イベント等は可能性があると思う。
従来の1月開催の場合、コロナ対策としての換気にドア開放をすると極めて寒いという問題がある。今年偶々3月に延期したことにより、換気については全く問題なく行えることが分かった。今後もコロナ対策を考えると、成果発表は3月開催が好ましいと考える。