江川三郎八の設計した近代建築の資料発掘、岡山県・大阪府での江川展開催
代表者:難波好幸 所在地:真庭市 設立年:2013年 メンバー数:9名 助成年度:2019年度 教育文化活動助成
活動の目的
江川三郎八が福島・岡山両県庁あるいは個人で設計・監督した建築を研究し、江川の業績と、江川式建築の歴史的・建築的価値を顕彰することが、まず、本会の目的である。そうして得られた研究成果を、地域社会に還元し、岡山県民が、県内に近代建築を広めた建築家の存在を知り、歴史建築物の文化的価値を理解し、地域文化への造詣を深めることで、地域文化振興へとつなげる活動を行うことを目的とする。
活動の内容及び経過
研究会での事例検討や、岡山県立図書館、同県立記録資料館、倉敷市歴史資料整備室での文献調査、現地踏査(中山神社〔津山市〕、岡山学芸館高等学校〔旧西大寺高等女学校、岡山市東区〕、旧中備素麺同業組合事務所〔笠岡市〕、旧永井歯科医院〔和気町〕、旧長田医院〔瀬戸内市〕)を実施した。調査成果の一端として、倉敷美観地区の倉敷館(市重文。倉敷市)が、江川の部下・小林篤二の設計と明らかにした本会会員の研究が、同市発行の『倉敷の歴史』に掲載された。
また、百花プラザ(岡山市東区、2/7〜9)で展示会を開催し、新規物件を含む多数のパネルを展示、多くの来場者があった。さらに今年も、福島県で関係者との交流を行い、本会協力によるパネル展「江川三郎八の足跡」(福島市、3/14)も予定されていたが、新型コロナウイルス感染予防のため延期となった。
加えて、LIXILギャラリー(東京都・大阪府)が開催した企画展「〝江川式〟擬洋風建築−江川三郎八がつくった岡山・福島の風景−」(大阪展:12/6〜2/18。東京展:4/2〜5/23予定だが延期中)に企画段階から加わり、現地案内及び資料提供等を行った。大阪展の開催により、江川本人や岡山県の近代洋風建築の存在を、さらに多くの人に広めることができた。年度末には、難波代表が勤務先で製作した江川式建築の模型2点が真庭市に寄贈され、本会も協力を行っている。
併せて、成果の出版に向けた必要資料も逐次収集・整理を進めている。
活動の成果・効果
毎年、江川展を各地で開催し、江川技師や江川式建築、岡山の近代建築を紹介している。今年度の県内での開催は1回に留まったが、開催地ゆかりの建築を新たにパネルに加えるなどし、展示の充実を図った。そして、会員の尽力により大阪での江川展が実現したことは、思わぬ収穫であった。同展に因んで製作・販売された図録も好評で、今後も江川や江川式建築の知名度向上が期待できる。
また今年は、小林篤二・馬場伝次郎といった、江川の部下とその設計建築にも光が当たり、幅広い展開への端緒となった。会員個人の切磋琢磨、あるいは合同活動での研究・情報公開により、社会貢献を続けていきたいと考える。
情報発信としては、数年前よりフェイスブックを使用しており、閲覧者や問い合わせが増えている。今後も配信を心がけ、新たな発見の掘り起しにつなげたい。
今後の課題と問題点
今年も県内に留まらず、大阪での普及活動を果たすことができたが、福島県での開催延期、そして4月以降の東京での江川展も、新型コロナウイルスの感染予防のため、実現困難の見通しである(附記:最終的に中止となった)。遠出による調査や、集客を基盤とした普及活動の、見通しも立たない。書籍化の計画も、足踏みを続けている。
どうにか閉塞状況を打開したいところである。