四季の行事を通じて文化を形成する地理的要因を再認識し、新たな継承・伝達方法を提起しました
代表者:清水直人 所在地:玉野市 設立年:2014年 メンバー数:10名 助成年度:2018年度 文化活動助成
活動の目的
活動の拠点としている日比/向日比地区界隈の文化形成には、ひびき灘沖に浮かぶ大槌島が深い関わりを持っています。この島は、北は岡山県、南は香川県に二分されていて、岡山県側の所有者は日比地区御崎の御前八幡宮です。地区に伝わる龍神や大蛇伝説は、日比/向日比地区に住む人々はもとより、周辺地域、対岸の香川県の歴史・文化・信仰の形成にも深い影響を与えています。しかるに、地域住民の島への関心が薄れるに従い、御前八幡宮への氏神信仰や地域の祭りなど地域文化と住民との関係も衰退しつつあるのが現状です。豊かな伝承を活かし、地域文化を残し伝えるには、(ひびきなだ文化研究会が現に進めている)郷土史などの文献記録を残すことも重要な活動ですが、継承する方法に新たな考証や工夫を加えながら、感動を呼ぶイベントを開催することなども重要なことと考え、活動しています。
活動の内容及び経過
明神鼻の沖に浮かぶ「大槌島」をテーマに、春茶会、活動報告&講演会、地区に残る伝説をモチーフにした創作狂言、しめ縄制作&展張、と春夏秋冬それぞれに4つの催しを開催しました。
春:「大槌島の桜を愛でる明神鼻の茶会」では、亭主をメンバーが務め、日比/向日比地区の歴史や景観、活動の目的などをお話しし、地域が有する時間・空間の魅力より深く感じてもらいました。また、次年度開催のお茶会に色を添えるために、備前焼窯元に行き抹茶碗をメンバー8人+指導者2人で制作しました。
夏:「活動報告&講演会」では、地域の方々に活動の趣旨を認知していただくために開催しました。多くの方の理解が広がることで今後の活動の継続や催しの規模、様々な調整がスムーズに運び、ネットワークが構築されます。活動報告に加え、講演会では「大槌島と日比の町」というタイトルで、ひびきなだ文化研究会の林良三氏にご講演いただきました。大槌島と日比の町界隈の歴史、文化、伝説とそれらの繋がりや関係を、文献をひもとき約1時間にわたりお話しいただき、約50名の聴講者に大きな感銘を与えてくださいました。
秋:創作狂言「オロチの妙薬」は、大槌島に住む大蛇を物語の主軸にメンバーで創作し、玉野しおさい狂言会の方に狂言用の台本に仕上げてもらいました。イベント当日は、EXCAFE/杉本さんの大蛇をイメージした焼き菓子と、ぜんざいなどでおもてなしを行いました。台本の内容には、現在残っている伝承や逸話などを基に現代の視点で新たな解釈を加え、伝承や逸話の起こる理由や背景を考察し、観客に感動を呼び起こすような内容やセリフに脚色しました。また、場面の中に篠笛を挿入し場の雰囲気を更に盛り上げました。
冬:「しめ縄制作」では、藁を農家さんからいただくことに始まり、地域の方にしめ縄制作方法の指導・協力をいただき、明神鼻の小屋から大槌島を視線で詣でるためのしめ縄を制作、設置しました。このしめ縄は春に開催する茶会において、大槌島を象徴的に飾る展示台のような役割も持っています。
活動の成果・効果
土地の伝承や歴史は義務教育期間を過ぎると、知り得る機会は少なくなります。大槌島の大蛇伝説などの伝承を知識として得るだけではなく、「食・学び・鑑賞・体験」の4つをテーマに四季のイベントを開催しました。その鑑賞や体験を通して大槌島と自分との関わりを実感し、地域の祭りや催しを行う意義や動機を醸成するとともに、文化を形成する地理的要因を再認識し、これらを新たな角度から継承、伝達する方法を提起することができました。また、SNSや新聞などへの露出を増やすことにより、地域コミュニティーを外部からの視点で認知することができ、様々なコミュニケーションを誘発することに繋ぐことができました。
今後の課題と問題点
活動を始めて5年目となり、地域の高齢者や文化活動従事者等への認知が進んできました。しかしながら、子育て世代に対しどのようにして認知・参加を促進させていくかが課題となっています。今後は、この活動をイベントの開催以外での活かし方ができるよう検討、工夫していく必要があると感じています。