岡山県内に現存している戦後の昭和期における建物の現地調査報告

団体名:一般社団法人日本建築学会中国支部岡山支所 岡山近代建築研究会
代表者:上田恭嗣 所在地:岡山市 設立年:2006年 メンバー数:22名
助成年度:2018年度 文化活動助成

活動の目的

これまで、岡山県内における明治以降の近代建築については、岡山県教育委員会が「岡山県の近代化遺産」として取り纏め報告書を作成している。しかし、昭和の戦後における近現代建築にかかわる報告書は、県内では取り纏められていない。また、全国でも事例は少なく、あまり手懸けられていない。
そこで、日本建築学会中国支部岡山支所に設立している岡山近代建築研究会で、岡山県内に現存している戦後の昭和期における建物について、先見性のある報告書として纏め上げることを企画した。
21世紀は、これまでのように建物を建て続ける時代から、有るものを如何に使い続けていくかも問われる時代になりつつある。また、一般の方々にとって、身近にある建物の価値・評価・見方といったことに対して関心度を高めていただき、これまでつくり上げてきた岡山の特色ある建築文化についても考えていただく一つの試みにしたいとの思いがある。次の時代に向けての建築の在り方を考えるきっかけにもしたい。
具体的な建物選考にあたっては、県内各地域の心に残る建物、特徴ある意匠、特色ある構造計画等で優れているもの選定し、その建物について評価を行い、今後の保存・活用に向けての基礎資料になることを目的とした。
そして、その成果を建築界のみならず、一般の県民の方々をはじめとして、次の世代を担う若い学生たちに岡山の建築に関心・興味を持ってもらうきっかけになることも願った。

活動の内容及び経過

ふた月に一回程度のペースで会合を開き、部員の視点で協議し建物選定を行った。具体的には、岡山県内を9地区に区分し、その中にある優れた建物を提示する作業から入った。それらを持ち寄り、リストアップしたものをその内容について会合で協議・選定した。その後、各区分毎に調査員を決め該当建物の現地調査・聞き取り調査・写真記録等を行った。そして、記録した各建物について再度内容について選考を行い、一次選考物件を決定し、建築面からの評価・考察を行い取り纏めた。

活動の成果・効果

当初の段階では、岡山県内にどれほどの優れた特色ある建物がリストアップできるのか未知であった。しかし、選定を進める中で対象物件として200件以上を掲げることができた。また、選考にあたっては個人情報の関係から住宅・共同住宅棟は今回の対象から外した。その後、各建物についての情報提供・共有を行い、150件程度に絞り、現地調査を行った。現地調査等を行った後、最終的に135件の建物を選定した。そしてその後、各建物について文献・資料調査等を行い、建物の評価・考察文を作成し、その内容についてメンバー会議で確認し、一次報告書として取り纏めた。
今回の報告書は、建築系の大学・高校等の建築教育機関・その付属図書館、県内公立図書館、対象建物の多い市・町の文化財課、県内建築団体等に報告書を送付し、専門分野の部署への配布と一般県民にも図書館を通して閲覧できるよう情報提供を行った。(作成報告書同封)

今後の課題と問題点

選考にあたっては、選考に漏れた建物もあり、次年度以降の検討も必要である。
一般の方々により広く昭和の建築について知っていただくための企画、広報活動を展開する必要がある。また、優れた建物の所有者・管理者等へのご理解・ご協力を得て、次の時代につなげていただくことが重要である。さらに、身近な特色ある建物について広く一般に方々に関心・興味をもっていただくことが大きな課題である。

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