方谷研究会の開催と会報誌「山田方谷ゼミナール」第6号の刊行
代表者:朝森要 所在地:岡山市 設立年:2012年 メンバー数:75名 助成年度:2018年度 文化活動助成
活動の目的
山田方谷に関心を寄せる人々に意見交換、自己研鑽の場を提供し、また、在野で研究をする人々に情報交換を行う場を提供することにより、「方谷学」の発展を図り、併せて会報誌の発行を通じて情報を広く発信して地域の文化の向上を目指す。
活動の内容及び経過
①研究会の開催
10月27日に岡山シティーミュージアムの講義室を会場に、会員をはじめ65人の参加者を迎え、第7回研究会を開催。発表者は当研究会顧問・和仁守氏の「文久の改革と山田方谷」、当研究会顧問で元岡山県建築士会長・藤井義和氏の「備中松山藩御茶屋『水車』の実像にせまる」、当研究会顧問・岡田克三氏の「方谷山田先生遺跡碑について」と、3名が日頃の研究成果を披露。藤井氏のテーマは、当初は岡山県建築士事務局長の皆木國義氏が発表する予定であったが、皆木氏が9月初旬に急逝され、このため建築士会で協議し、同会長の藤井氏に皆木氏作成の資料を使って哀悼の意をこめて発表していただいた。奇しくも、第7回は3人とも方谷ゆかりの史跡についての研究成果の発表で、いずれも、現地あるいは遠路足を運んで調査を実施したもので、従来行っていたような文献等の資料に吟味検討を加えて新たな解釈を施して発表する研究ではなく、墓石や碑、水車小屋といった建造物の由来や構造の特色を探った山田方谷の研究成果の発表で、新鮮な印象を受けた参加者も多かった。
②会報誌「山田方谷ゼミナール」第6号の刊行
前年の研究会における発表者の発表要旨を収録するほか、研究ノートとして「晩年の山田方谷とその子女」(森俊弘会員)、「山田方谷と関藤藤陰」(山本邦男会員)を掲載、前者は焦点が当てられることの少なかった方谷と子女との情こまやかな交流を紹介し、また、後者は同じ譜代である備後の福山藩と備中松山藩との幕末激動期の交流、藩儒藤陰と方谷との関係を書状から読み解き浮き上がらせたもので、方谷研究に新たな視点を提供した。その他、エッセイ・探訪、書評も掲載し、森熊男会員による漢詩講座も連載した。
③その他
- 山陽放送が主催する「磯田道史歴史トーク」に、当研究会の朝森会長がパネリストとして出演することから、研究会では会員への案内はもとより、各方面への周知宣伝に協力した。
- 「方谷大河」書名運動実行委員会が企画する「おかやま方谷まつりツーリズム2018」山田方谷にふれる旅の実施を支援した。
- 2月に高梁市にオープンした山田方谷記念館について、当研究会の山田敦顧問が館長を務めることもあって、各方面への施設オープンの紹介を支援した。
活動の成果・効果
- 山田方谷に関心を抱いて地道な研究を続ける在野の研究家に発表の場を提供できた。また、方谷ファンや郷土史家には学びの場、情報交換の機会を提供できた。研究会には東は神戸、西は広島県の神石町からの参加者もあり、会員相互のネットワークの広域化を図ることができた。
- 研究会は第7回を数えるが、マンネリに陥ることもなく、新たな視点、アプローチによる研究発表により、方谷学の進展を図ることができた。
- 会報誌の刊行により、山田方谷、さらには地域の文化に関する情報を広く発信できた。
- 方谷ゆかりの高梁他備中地方が西日本豪雨により甚大な被害が生じたことから、県外から被害状況や見舞金についての問い合わせがあり、当研究会で仲介周旋した。また、新札となる渋沢栄一と山田方谷との関係についての問い合わせや山田方谷についての講演会の講師派遣も事務局にあり、会員が対応するなど、山田方谷に関する県内のプラットホーム的な機能を担った。
今後の課題と問題点
- 研究会の対象、内容から会員に高齢者が多く、今後、若年層の会員を増やしたい。
- 研究会の開催と会報誌「山田方谷ゼミナール」の刊行が主な活動となっているが、新史料の発掘調査、紹介に努めるとともに、ゆかりの地の探訪や現地研修、あるいは、方谷の漢詩や書状、方谷全集を読む会の定期的開催活動も検討したい。
- 山田方谷は藩政改革の一つとして地域の殖産興業、地場産業の振興に努め、「ゆべし」の生産を奨励したと言われるが、その実態究明の現地調査を計画したが、担当の会員が多忙なため、今年度は実現が叶わなかった。
- 前項で、当研究会が県内の山田方谷に関するプラットホーム的な機能を担ったことについて記したが、これについては、高梁に山田方谷記念館がオープンしたことから、今後は記念館が同様な役割を担うものと考える。
- 経費の支出の大半を占めるのが会報誌「山田方谷ゼミナール」の作成発行であり、目下、助成金を得て第6号まで刊行できたが、今後は毎年の刊行が危ぶまれることも予測され、財源の確保、あるいは会報誌の発行態様の変更も検討が必要である。
- 年に一度開催する研究会の他に、会員相互の情報交換の場を検討する必要がある。