姫新線全通80年を機に地域資源を見直して地域活性化
代表者:河原敏之 所在地:美作市 設立年:1993年 メンバー数:30名 助成年度:2018年度 文化活動助成
活動の目的
姫新線が地域の発展に大きな影響をもたらしてきたことを、その事業推進に貢献してきた先人を顕彰しながら振り返り、郷土の学習、地域活性化、認知症予防、姫新線の活用と存続につなぐ。
活動の内容及び経過
2016年の姫新線全通80周年を機会に、敷設当時の歴史を掘り起こすなかで、播美をつなぐ鉄道とトンネルの建設に情熱と私財をつぎ込んできた豊福泰造氏が、トンネルの掘削後に破産して淋しく生涯を終え、その功績が顕彰されることがなかったことが明らかになり、地域資源を見直して活用することとした。まず2017年度の美作市自治創生事業補助金を使った旧出雲街道保全事業で、姫新線全通80周年を記念する石碑を設置し、姫新線整備の経緯や豊福氏の事績を書き込んだ。
さらに、鉄道とトンネルに懸けた想いを物語にし、美作市が収集した写真や絵でわかりやすく紹介する冊子が、岡山県内の鉄道に詳しい小西伸彦氏の監修を受けて完成した。A5版、38ページ、1600部印刷。冊子の内容は、播磨-美作間の鉄道敷設に向けて設立された播美鉄道会社の豊福泰造社長が明治45年、最難関とされた美作土居から播磨西大畠へ抜ける万の乢のトンネル工事を計画。大正2年に掘削を開始し、火薬やつるはしによる人海戦術で4年間進めるも硬い岩盤に阻まれ、資金難で中断を余儀なくされた。その後、国が工事を引き継いで昭和11年に姫新線が全通。昭和初期の線路敷設作業や完工を喜ぶ関係者をはじめ、乗客であふれた美作土居駅、吉野川の鉄橋を渡る急行列車などの写真や絵に加え、元国鉄マンと姫新線開通前に掘削したまま放置されていたトンネルを歩いて通った元教諭の証言や関係年表も載せ、歴史を振り返った。
出雲街道土居宿を後世にのこす会は、旧出雲街道の宿場町として栄えた町に、先人が残した歴史とともに史跡・遺跡を可能な限り保存し次代へ残し、観光地とタイアップする歴史の道として地域活性化を図ることを目的に1993年に設立。土居宿の惣門のうち西惣門を美作土居駅前に復元する事業の推進、案内看板の設置、周辺自然環境の保護に関する事業などを積極的に行い、埋もれかけた土居宿の歴史を掘り起こしてきた。近年は、旧出雲街道保全のための草刈り作業や一里塚の松・榎の剪定作業が中心になっていたが、今回姫新線の歴史を振り返り、その存続を図るなど活動の幅を広げることにした。2018年6月30日、旧出雲街道の草刈り作業のあと、関係者が集まって石碑と冊子のお披露目式を行った。
活動の成果・効果
冊子は、地元住民、小学校、図書館等に配布。先人の功績を顕彰したうえで、学習教材、地域の話題づくりに活用されていて、土居地区に伝承されてきたトンネル掘削の苦労話が風化しつつある中で、その歴史を明らかにして刻んだことにより、後世に伝えることができる。また豊福泰造氏の地元馬形からの要望で全戸(50戸)に配布され、先人の偉業を偲ぶとともに一定の名誉回復にもつながり、地域活性化に大きな成果があった。豊福氏の縁戚の方からも冊子送付の要望があり、先祖から聞いていたことが本になり喜んでいるとの感想をいただいた。さらに、近年の出雲街道土居宿を後世にのこす会の活動は、旧出雲街道保全のための草刈りなどが中心だったが、並行して走る姫新線に関して取り組んだことで活動の幅が広がり、会の活性化にもつながった。
今後の課題と問題点
配布先での活用はされているが、当会が主催してのワークショップ等は実施できなかった。また、姫新線の活用と存続につながる方策を考えていきたい。