母親の自己効力感を高める、読み聞かせを援用した子育て支援プログラムの実践

団体名:岡村幸代
代表者:岡村幸代 所在地:岡山県 設立年:2012年 メンバー数:1名
助成年度:2018年度 教育活動助成
  • 図1.育児に対する自己効力感尺度総得点の変化

活動の目的

本活動の目的は、絵本の読み聞かせ・母親への心理教育・母親の育児への自己効力感を高める取り組み、の3点に絞った子育て支援プログラムを構築、実践することである。また、本プログラムは、講座への参加体験が、家庭や地域での母親も支えることをねらいとしている。母親が支援を感じながら、講座と家庭の両方で、絵本の読み聞かせや達成可能な行動目標の設定と遂行を重ね自己効力感を高める過程を支援し、子育て意識の変容が促されることを目指す。
本プログラムは主に絵本を用いるため、限られた資源で活動する地域の子育て支援の場においても手軽に導入、実施できるプログラムとして、支援の拡大が期待できる。

活動の内容及び経過

岡山市立芳田公民館の主催講座「つながるひろがる絵本の力」として2018年4月に4回、5月に1回の計5回実施した。対象者は未就園児とその母親であり、5回の講座に継続参加可能な20組をチラシ配布にて募った。20組の母子(母親20名、子ども22名)が講座に参加した。
初回の講座では、講座のスタートキットとして、絵本1冊、書き込み式ワークブック、筆記用具、袋を配付した。
講座は毎回同じ構成にし、母親対象の心理教育、読み聞かせ、行動目標の設定等母親の自己効力感を高めるためのグループワークを中心に行った。
心理教育では、絵本の読み聞かせの際の子どもへの関わり方等を簡単に紹介した。読み聞かせは、絵本を46冊常備し、集団での読み聞かせ、親子での読み聞かせを順に実施した。母親対象のグループワークでは、母親どうしの関係を生じ易くするため、子どもの年齢や生まれ月、居住学区等でグループを作り、話し合いながら個々の行動目標を設定した。母親が設定した目標は、「夕方リビングで1日2冊は絵本を読む」「夫と二人の時間を作る」「1日1回少しでも外に出る」等であった。

活動の成果・効果

質問紙調査を実施し、育児に対する自己効力感尺度(金岡、2011)得点の変化パターンを分析した。育児に対する自己効力感尺度得点上昇群における時期の単純主効果が認められた(F(2,32)=11.30,p<.01)。統制群(講座に参加していない母親の群)のデータと多重比較した結果、第5回(フォローアップ)得点が第1回及び第4回の平均よりも有意に大きく(MSe=4.0984,p<.05)、統計学的な分析からも、講座の実施による効果が示唆され、母親が自信をもって育児に取り組める気持ちが向上したことが示された。(図1)
第1回講座終了後の母親のアンケートでは「目標を決めて達成するという取組みは、なかなか分かっていても1人では出来ないが、今回は皆でするので出来そうな気がする」、第2回以降では「出来た事に注目すると、意外と自分は頑張ってるなということに気付いて少し前向きになれた」「公園での遊び方を他のママに聞けた」「続けることが自信に繋がると思った」「子どもが絵本をしっかり見てくれるようになった」等があり、講座での活動が家庭での母親を支えている可能性が示唆された。

今後の課題と問題点

今回の分析結果を基にさらに講座の内容を改善することと、参加したお母様方から、絵本について知識を得たいという希望があった。心理教育を充実させるとともに、新しいワークを開発する等、講座の内容の改良が必要である。

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