美術展「スッチョンチョンで行く!」を天神山文化プラザにて開催、オープニングイベントとしてジャズインプロビジェーションを実施
代表者:岡部 玄 所在地:総社市 設立年:2001年 メンバー数:10名 助成年度:2016年度 文化活動助成
目的
私たちを取りまく社会は今「環境破壊・経済的格差・戦争」という大きな難問=危機に直面しています。芸術が社会を動かすファクターの1つであるとすれば、一介の美術修行者に過ぎない私たちでさえこの難問と無縁ではあり得ません。この難問から目を逸らすことなく、日々模索・探求する努力を重ねていく中で「美しい」や「醜い」と感じる出来事としての美術領域で新たな言葉=表現が提出される必要があります。
その未知の言葉=表現を探る手掛かりの1つとして“身体=環境”を考えました。見渡せば山川草木・鳥獣虫魚、制作時に触れる自然から贈与された素材・・・・そして己自身の身体。と“身体=環境”との接点はいくらでもあります。・・・にもかかわらず“身体=環境”との大切な触れ合いを阻む“何か”が存在しています。・・・というより、むしろ私たち自身がいつの間にか“何か見えないベール”を(例えば思考形態として、生活様式として・・・)身に纏ってしまっていることに気付かされます。
この“見えないベール”を剥がすことがまず必要です。その実験作業を「街を耕す」と名付けました。実験作業=試行錯誤を日々繰り返し、その過程や成果(生命エネルギー)を街=社会に還元することで地域社会の文化・生命力の向上に寄与したい。
内容・経過
天神山文化プラザの第3・第4展示室及びロビーを使用して7名の作家により美術展を開催。初日にジャズインプロビジェーションを演奏者2名(藤本、岩本)で実施。
定着メンバー5名(岡部、中山、野田、松本、役重)には使用素材として、ウランの崩壊後の姿である「鉛」をテーマ設定。これは使用経験のない素材と取り組むことで、それぞれの殻(ベール)を破る一助とした。
招待作家2名(児玉、藤本)は日々意欲的な制作活動を続けており、その発表の場を提供することを目的とし、また当美術展に新鮮な空気=活力の注入を期待して出品を依頼。児玉氏には第4展示室で思いっ切り発表してほしいと2年前より依頼。藤本氏には氏の制作現場である灯心会(勝山)を訪問し氏の持つ魅力が存分に伝わるような出品をと1年前に依頼した。
以上7名の作家が各自個展規模の作品を持ち寄り、その個々の魅力をそこなうことなく全体でいかに調和できるかに心を配りながら展示作業を行った。これは社会と個との関係性のトレーニングに通じると考えている。
展覧会終了後、約3ヶ月かけて記録集(200部)を作成。撮影は加賀氏(べあもん)、レビュー執筆は福田氏(天神山文化プラザ)と台湾から来られた劉氏(田園城市文化事業)に依頼した。
成果・効果
初日朝早々にRSKの取材があった。放映は水曜日夕方。昼からのオープニングジャズインプロビジェーションは藤本氏の展示場所である中2階で、藤本氏(ベース)とガムラン奏者の岩本氏によって行われた。来場者(約40名)はその新鮮な音の世界を熱心に聴き入っていた。ざっはうさぎが録画取材。
開催期間が県展準備と重なり、天神山文化プラザ内での同時開催が第5展示室での版画展のみという特殊な時期にもかかわらず432名の来場者を得ることができた。「良い展覧会だった」「巡回展にしたらいいのに」という過分な声も寄せられた。天神山文化プラザの方がわざわざ新聞社にお電話して下さるというリアクションもあり、一定の評価と理解がなされたのではと推測している。
参加作家のそれぞれ取り組みの深度・密度に応じてそれぞれに得るものがあったと思われる。
今後の課題と問題点
新たな言葉=表現の提出にはまだ程遠く、これからも日々たゆまず精進=試行錯誤を繰り返し実行していく必要がある。
展示への感想の中で「重い!」という意見があったが、それはテーマ素材「鉛」の持つ社会内での位置や「鉛」特有の雰囲気が強く反映されたためだろう。直言すれば、テーマ素材「鉛」に引っ張られたとも言えるわけで、独特な強さ重さを持つ「鉛」と軽やかに接するという道もあったはず。さらなる表現・感性の豊かさを獲得する工夫が求められる。