五感を磨き、感動する心を育て、人間を輝かせる「煎茶文化」を社会に発信
代表者:赤松 京 所在地:岡山市 設立年:1987年 メンバー数:60名 助成年度:2016年度 文化活動助成
目的
日本茶がペットボトルの茶となりつつある現在、日本人の心の覚醒が必要である。「文人煎茶の愉しみの世界」は、ひととき日常を離れた世界に自らを遊ばせ、さらに内なる自分自身をも見つめる心豊かな世界である。五感を磨き、感動する心を育て、人間を輝かせるかけがえのない「煎茶文化」を社会に発信し、次世代に繋げねばならない。煎茶文化は「知と美の世界」である。様々な学びを通して知識を深め、自分自身を高めていくことが必要である。
内容・経過
2016年4月3日ルネスホールにて一茶庵岡山支部30周年記念煎茶会を開催。日常から心を解き放つ、煎茶文化の愉しみの世界の一端を386名の人々に紹介した。今回ルネスホール空間に設えた3席について説明する。まず、1階ホール入り口に、軸「明珠在掌」を掛け、宝物のような豊かな世界がすぐそばにありますよというメッセージを投げかけ、煎茶画題「不老長春」の松と薔薇をいけて寿ぎの思いを伝えた。
1階ホールを屏風で仕切り、玉露を愉しむ席、雁ヶ音を愉しむ席を設え、玉露を愉しむ席は、手前1人客4人で囲む卓6卓にて、茶技茶法3法を紹介。軸「桃花流水」李白の詩句を掛け、青い山、碧山に心の旅をして、甘い玉露の味わいのなか桃源郷に遊ぶ心地を体感。五感を通して愉しむ世界を伝えた。
雁ヶ音を愉しむ席は、手前座を設営し25名ずつ入席の設えに。大明竹に心の塵を払い、文人の友七絃琴の音に心を洗う、「去俗」の世界に誘う席とした。軸「墨蘭図」を掛け、屈原という高潔な文人に思いを馳せる。茶技茶法2法を紹介して雁ヶ音の苦みの絡んだ味わいに情感を重ねていく世界を創った。さらに内なる自分自身をも見つめる世界であることも伝えたかった。
2階金庫棟にては点心酒亭席を設えた。「煙霞に茶を煮る」という、文人の古来愉しんだ世界を紹介。麗らかな春日のなか自然の中で愉しむ気分を体感していただいた。
今回は玉露と雁ヶ音の茶葉を使い、こだわりの茶技茶法のいくつかを紹介し、奥深い煎茶の愉しみの世界を拙いながら精一杯発信した。
6月12日の研修会は、唐の盧同の茶詩を読み解く中で、「去俗」という煎茶文化の精神性と、「文人」という煎茶文化を担ってきた知識人についての理解を深めた。
成果・効果
386名の人々に「煎茶文化の愉しみの世界」を発信することができた。お運びいただいた多くの方々、初めてという方も多く、皆様から嬉しい反響をいただいた。幕末から明治大正と煎茶文化の力強い時代の空気感を感じるルネスホールにて開催でき、新たな煎茶文化普及活動ができた。研修会後は、文人煎茶についての理解や興味がさらに深まり、家元訓導「学びて人となれや、学びて自在となれや」をかみしめた。
今後の課題と問題点
お茶がペットボトルとなりつつある危機を感じる。煎茶文化は日常の煩わしさから自ら心を開放し、豊かな自分自身を創っていくかけがえのない伝統文化である。この文化を支え次代に継承していく仲間を増やしていかねばならない。また心を病む現代人、若者の魂を救い人間を輝かす貴重な文化でもあり、是非社会への浸透を頑張らねばならない。多方面からの支援をお願いしたい。