コミュニケーション能力を育む小学校英語
代表者:後閑智美 所在地:岡山市 助成年度:2016年度 教育活動助成
実践活動のねらいと期待する成果
(1)ねらい
本校では、「小学校英語」を中心に、外国語活動・教科イマージョン学習・短時間学習を核にした「石井型イマージョン教育」の研究・実践を12年間行ってきた。文部科学省から「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」が示され、平成32年の学習指導要領の改訂に向けて、小学校における英語教育の拡充強化を図ることが掲げられ、実践を積み重ねてきた。本校においても、グローバル化に対応できる「生きる力」を児童に育むことが一層必要であると実感しているところである。具体的には、英語を使ったコミュニケーション能力やグローバルな状況に対応できる実践力を、児童に身につけさせていきたいと考えている。
そこで、本校では、「自分の思いや考えを伝え合う子どもの育成」を研究主題に掲げ、英語を活用したコミュニケーション能力の育成に重点をおいて実践研究を進めていきたい。
(2)期待した成果
今年度は、本校で行っている英語教育の研究成果を発表する「公開授業研究会」を、6月と2月に計画し、また、岡山大学の外国人留学生との交流会や岡山市に在住する外国人との国際交流活動、オーストラリアの小学生との交流会、国際貢献等に関する話を聴く活動なども企画した。これらの場で、英語を活用して積極的に相手とのコミュニケーションを図ろうとしたり、様々な異文化に触れてその特色をとらえようとしたりする次のような児童の姿を期待した。
・「言語活動」として、学習した「表現」を積極的に使って話そうとする。
・外国人の会話をよく聞き、分かる「表現」をヒントにして受け答えをしようとする。
・話したり聞いたりする活動を通して、英語を使った会話に慣れ親しもうとする。
実践活動の内容と方法
次に示す2回の「公開授業研究会」、外国人と直接に会話ができる「交流会や修学旅行でのインタビュー活動」等の場が、英語を使って実践的なコミュニケーション能力を培う場となっていたか、また、実践的に英語を活用する場となっていたかを児童の様子から考察する。(1)岡山市小学校英語教育公開授業研究会
①日時平成28年6月16日(木)
②内容公開授業4校時4年生「図工(イマージョン学習)」・5校時5年生「外国語活動」、研究協議会
③講師広島大学大学院准教授兼重昇先生
…参加者63名(外部23名)
(2)岡山市立石井小学校における特色ある教育
(イマージョン教育)公開授業研究会
①平成29年2月7日(火)
②内容公開授業4校時2年生「図工(イマージョン学習)」・5校時6年生「外国語活動」、
短時間学習(TV放送・イングリッシュタイム)、研究協議会
③講師広島大学大学院准教授兼重昇先生
…参加者105名(外部59名)
(3)6年生の実践活動
・修学旅行でのインタビュー活動
得られた成果及び評価
(1)岡山市小学校英語教育公開授業研究会(平成28年6月16日)
4年生の「図工(イマージョン学習)」と5年生の「外国語活動」の公開授業をとおして、英語を使ったコミュニケーション能力の育成について提案を行った。英語を使う必然性をもたせるための工夫として、イマージョンアートでは、作品を互いに紹介し合う場を設けて“bright”“cool”などの作品の印象とその理由を英語で伝え合うようにしたり、使用する道具や材料を「Shopコーナー」に取りに行く設定をして“MayIhavea〜,please?”と言うと道具がもらえるように工夫したりした。造形的な関心の高まりに加え、獲得した英語を使ってコミュニケーションをとろうとする姿が見られたとの講評をいただいた。
5年生の外国語活動では、自分や友達の性格を表す英語表現を題材として、友達や先生の特徴から性格を表す表現を考えたり、“HowdoIsay○○inEnglish?”と新しい表現方法を尋ねたり、“What’sspecialaboutme?”の英語表現を活用したゲームを取り入れたりする活動を行った。このことで、児童は積極的に英語表現に親しみ、活動への意欲が高まっていたと参加者から高い評価をいただいた。
(2)岡山市立石井小学校における特色ある教育(イマージョン教育)公開授業研究会(平成29年2月7日)
6月の「岡山市小学校英語教育公開授業研究会」を受け、コミュニケーション能力の育成を軸に研究を進め、2回目の公開授業研究会を行った。
2年生のイマージョンアートでは、ポリ袋に好きな装飾をして「見たこともない魚」をつくる造形活動に取り組んだ。制作途中に「SharingTime」を設定し、つくった魚を“Thisisour○○fish.Ourbestpointis〜”と紹介した後“Anyadvice?”と友達と交流する中で、自分たちの考えを伝えたり、作品に自信をもったりすることができるようにした。また、「PresentationTime」では、作品の工夫やポイントを説明した後、“Whatdoyouthink?”と感想を聞いた。説明を聞いた児童は、改良につながるよさを“IthinkIt’sbeautiful/cool/nice/cute”などの感想と“Because〜”で理由を表現することで、英語を活用しながら具体的な気づきを進んで伝えようとした。
6年生の外国語活動は、単元「MyDream(未来に向かって)」の最後で、自分の将来の夢を5年生に伝える「MyDreamFestival」を行い、意見を交換し合う時間となった。6年生は、自分たちのスピーチを理解してもらえるように、資料を提示したり、ジェスチャーをつけたりするなどの工夫を行った。内容が分からない場合には、5年生が意思表示カードを見せたり、“HowdoyousayinJapanese?”と伝えたりしながら、双方向のコミュニケーションを行うようにした。こうすることで、英語を使って会話をする必然性ができ、単元のキーワードや今までに学習した英語表現を活用して意欲的に対話をしようとすることができると考えた。
授業の終末には「CommentTime」を位置づけ、スピーチをした時のポイントについて振り返ったり、5年生に聞いてもらって感じたことや気づいたことを伝えたりするようにした。このことに関しても、講師の兼重先生から、「論拠をはっきりとさせながら、感想を伝えたり説明をしたりする力が伸びるなど、英語の時間に学んだことが、国語をはじめ他教科の言語活動にもよい影響を与えている。」との講評をいただいた。
(3)6年生の実践活動
6年生は、例年、修学旅行で京都を訪れた際に外国人観光客に英語でインタビューをしている。相手国の様子を真剣に聴く児童の姿勢に好感をもって話してくださる外国人が多かったことや、岡山の魅力を児童が一生懸命に伝えたことで、日本の中で次に訪ねてみたい所を「岡山」と答える外国人が多くいたことを、6年生は大変喜び満足していた。
今後の課題とその解決への展望
本研究を推進していく中、学校評価アンケートで「英語の時間は楽しい」と回答した児童は88%で、保護者アンケートでも90%の方から「子どもは英語の学習を楽しんでいる」と高い評価をもらった。コミュニケーション能力の育成についても、「英語を勉強することで誰とでも話ができるようになった」と肯定的な評価をしている児童が81%で、年々評価は高くなっている。この項目の保護者評価は82%、教職員評価は88%といずれも成果を上げている。児童の思いや必然性を大切にしながら、今後は「聞く」「話す」活動に加えて「読む」「書く」活動を充実させていくことで、実践的なコミュニケーション能力をさらに育成していきたいと考えている。また、異文化の中でのコミュニケーション能力育成が可能な単元を、ESDの視点から再整理し実践していく計画もある。カリキュラムの作成と共に、全ての教員が「児童を評価する力」をつけながら、短時間学習との関連を大切にした外国語活動や教科イマージョン学習の授業を行うことができるように、指導体制の充実を図ることも推進していきたいと考えている。