友だちと心を通わせながら 生き生きと学習する児童の育成 〜特別支援教育の視点を生かし 思考の交流のある協同学習の実践を通して〜

団体名:総社中央教育研究会
代表者:横山昌弘 所在地:総社市 
助成年度:2016年度 教育活動助成
  • 1年生算数「かたちづくり」
  • 2年生国語「スイミー」
  • 4年生につながる読みの系統
  • 学習アンケートでの肯定的な割合とASSESS 学習適応感尺度

実践活動のねらいと期待する成果

(1)ねらい
平成22年度からの協同学習の取組や平成26年度からの「思考の交流」に視点を当てた取組を通して、児童の自己肯定感や自己有用感の高まりが見られ、自分の考えを生き生きと語ることのできる児童が増えてきた。しかし、「児童の意識の流れに沿った協同学習にするにはどのように課題を設定すべきか」「だれもが協同で学ぶことの良さを実感するためにはどのように課題を設定すべきか」等、「焦点化された課題設定」の必要性が明らかになった。本校では、この焦点化への取組は特別支援教育の視点で授業を見直すことにつながると考えた。つまり、「焦点化」等の特別支援教育の視点を取り入れながら課題設定を工夫し効果的に協同学習を展開することで、思考の交流を促進することができると考えた。
(2)期待した成果
①「思考の交流のある協同学習」への取組は児童にとって見通しを持ちやすく分かりやすい授業につながる。このような授業を続けることが学力の向上につながると期待する。
②中学校区で連携して研究に取り組んだり、積極的に成果を発信したりすることで、「思考の交流のある協同学習」という学びを柱とした小中一貫教育が進むと期待する。
③積極的に研究と修養に取り組み、意欲と責任をもった教育活動を展開することのできる教職員の育成につながる。

実践活動の内容と方法

(1)思考の交流のある協同学習にするための取組
授業は、何を学び、どんな力をつけるのかを子ども自身がはっきりともつことが必要であり、子ども自身が自らつかんだと思わせることが大事である。そこで、ねらいの焦点化と活動の焦点化に重点をおいて取り組む。
①ねらいの焦点化や活動の焦点化に視点を当てた実践
ア1年生の算数科「かたちづくり」の導入(ねらいの焦点化)
教師は突然1枚の布で図形を隠したり見せたりする。「長い四角はどうなったのか」と発問すると、児童は身体が前に乗り出すほど、目を輝かせて図形の変化を見つめようとする。「分かった」と知的好奇心は高まり、「どこをどう動かせば形が変わるのであろうか」というねらいを主体的につかんでいった。
イ2年生の国語科「スイミー」での読み(活動の焦点化)
スイミーが出会った生き物の挿絵を複数提示し、「スイミーが元気になったのはどれか」と発問するとき、あえて間違っている挿絵を入れておく。児童は、正しい選択理由を考える際に、文章中の比喩表現に着目し、スイミーの心情の変化を比喩表現を通して読んでいこうとした。
②読みの系統
学び方を知らないものに思考が生まれるわけではない。国語科でもそれぞれの単元で学ぶ読み方がある。表は、児童に示した4年生「プラタナスの木」の学習での読み方が他の学年の読み方とどうつながっているのかを示したものである。児童は何を物差しに学習すればよいかという見通しをもち主体的な学習につながっていった。
(2)研究の深まりにつながった取組
①専門家からの継続的な指導
算数科では小学校での経験がある大学教授を、国語科ではユニバーサルデザインで全国でも有名な講師を招聘し、教科と特別支援教育の両面から研修を行うことができた。
②小中の連携
本校の校内研修に中学校区の全ての保幼小中の教師が参加し、協同学習という学びを通しての連携が深まった。
③外部への発信
ア3小学校、1中学校の視察を受け入れ、授業公開を通して研究成果を発信した。
イ学校だよりや研究紀要を通して、学校を取り巻く人たちに取組の様子や児童の実態を発信した。学校だよりは70号発行し外部評価の機会となった。

得られた成果及び評価

(1)学習アンケートでは、ほとんどの項目で1学期より3学期の方が高くなっている。90%を超える児童が「授業が楽しい。分かる」「ペアやグループで学習することが楽しい。分かる」と答えている。ASSESS学習適応の値は、学習内容が難しくなるにつれ下がる傾向があるが、ほぼどの学年も1学期より3学期の方が高くなっている。友達とともに学ぶ中で楽しさを実感し、前向きに学習に取り組んでいると考える。このように、焦点化を「ねらいの焦点化」「活動の焦点化」に具体化し、特別支援教育の視点を生かしながら思考の交流を目指すことにより、生き生きとした学習に迫ることができたと考える。
(2)国語科の校内研修会には近隣の保幼小中から100名を超える教員が参加した。幼児教育3年間、義務教育9年間を見通した、同一歩調での指導につながっていった。
(3)視察や授業研修会へ挑戦する雰囲気がある。中には、授業公開に向けて、1学期から計画的に学習を進めたり、総合教育センターへ出向いて指導を受けたりするなど、常に積極的に取り組もうとしている。

今後の課題とその解決への展望

(1)全ての授業が上手くいったわけではない。仕掛けを考えすぎるあまり、児童の主体性がないがしろになる場合もあった。今後は「ねらいの焦点化」「活動の焦点化」「読みの系統性」が形だけにならないよう、児童の実態に応じたものにする必要がある。
(2)次期学習指導要領のねらい「主体的で対話的で深い学び」は思考の交流のある協同学習にもつながることである。「主体的で対話的で深い学び」と「思考の交流のある協同学習」の関係付けをすることが必要であると考える。

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