新学習指導要領におけるアクティブ・ラーニングによる「学力向上」をめざす保幼小中の連携

団体名:西大寺中学校区12校園(保幼小中)
代表者:梶原 敏 所在地:岡山市 
助成年度:2016年度 教育活動助成
  • 自分の考えを伝える
  • 第2回公開授業研究会

実践活動のねらいと期待する成果

(1)ねらい
西大寺中学校区は、長年、学力の低迷や意欲の低下、生徒指導上の問題などを多く抱えていた。中学校で取り組んでいる「協同学習」の手法は、アクティブ・ラーニング(「主体的・対話的で深い学び」)の考え方そのものである。これを効果的に推進するために、本学区の保幼小中12校園と連携し「学力向上」をめざすことを目的とした。
(2)期待した成果
保幼小中がそれぞれの段階で「協同学習」を継続的に実践し、子ども同士のつながりのある保育・授業づくりをすることで「学力向上」や「授業放棄・不登校ゼロ」につながることを期待したい。

実践活動の内容と方法

(1)12校園合同研修会
①テーマ:0歳から15歳までの保育・授業の創造
②期日:平成28年7月29日13:00〜16:50
③会場:西大寺ふれあいセンター
④参加者:12校園の教職員
⑤講師:根本光子氏(つくば市立並木小学校元校長)
⑥内容:根本氏による講演では、子どもたちの家庭環境を含めた実態を分析しどのように育てたいか目標を定めること、アクティブ・ラーニングは安心して間違えたり支え合えたりできる集団と没頭できる授業があることが重要であることを学んだ。その後、各教科・分野に分かれて班別研修会を行い、1学期の取り組みから困り感や達成感を報告し合い、今後について意見交換を行った。
(2)各校園の取り組み
①雄神小学校・雄神幼稚園
小学校では、算数の授業について年3回の公開授業を行った。6月に6年生、9月に1年生、1月に3年生で、外部講師として近藤弘行先生(岡山大学教育開発センター特任教授)を招いた。
研究協議では「導入、一人学び、ペア・グループ学び、まとめ・振り返り」という場面ごとに、「子どもが主体的に学べていたか」「一人一人が考えを表現し、その考えを深めていたか」という視点で意見交換を行った。児童一人一人が考えをもち、思いを表現するという目標は概ね達成できている。そこで今後は、話し合いがより深まりのある場となるように、題材・タイミング・発問の工夫などに目を向け、さらに研究を進めていきたい。(小学校)
幼稚園では、9月14日に公開保育を行った。未就園児との関わりの中で、相手の思いを聞いたり、自分の思いを分かるように伝えたりする姿が見られた。今後も小規模園の強みを出しながら、幼児に『聴く力』がつくよう研究を進めていきたい。(幼稚園)
②西大寺小学校・西大寺幼稚園・西大寺保育園

「一人一人の思いや願いから学び合いの生まれる授業を目指して」を研究主題として、小集団の学びの在り方を中心に研究を行い、公開授業を7回実施した。『学び合いの授業が生まれる』というのは、子どもたちにグループでの聴き合いを強要するのではなく、相談しないと分からない、話し合いたくて仕方がないという状況をつくることである。そのための効果的な指導・支援の方法や課題設定(ジャンプ課題)、教師の子どもへの対応の仕方について研究を深めていった。(小学校)
友達と関わることが楽しいと感じ、相手の思いを考えたり受け入れたりしながら、遊びや生活、友達関係をより豊かにできるように、環境構成や援助のあり方を探っていった。(幼稚園)
個々の発達に合った援助をすることで、一人一人が自信を持って安定して過ごしている。公開授業などに参加する中で、就学前だけでなく先の発達を見越した保育を考える機会になった。(保育園)
③西大寺南小学校・西大寺南幼稚園・金岡保育園
小学校では、研究主題「思いや考えを伝え合い、高め合う子どもの育成」をめざして全学年で道徳の研究に取り組み2回の公開授業を実施した。高学年では、道徳の時間に「責任」について考え、自分たちの学校の中での役割について振り返った。低学年では「思いやり」について考えた後、生活科の「昔遊びをしよう」の学習で、地域のお年寄りから教えてもらった昔遊びを、幼稚園や保育園の園児と触れ合いながら教えるという活動を行った。本校は小規模であることから縦割り活動も多く、異学年と交わって遊んだり、活動したりする機会も多い。異学年交流を通して自分の思いを伝え合う経験をした児童や園児は、さらに自信をもって伝え合いをしたいという意欲をもつようになると考えられる。
④豊小学校・豊幼稚園・豊保育園
研究主題「基礎基本の定着を図り、学び合う子どもの育成」をめざし、全学年算数科の研究に取り組んだ。「基礎基本の定着」に向けた取り組みは、朝学習で「足し算・かけ算のスピードプリント」を新たに導入したり前年度学習した漢字や計算の問題からなるプリントを週末の宿題としたりしたことなどである。公開授業研究会では、児童ができそうだと思える授業にするためにどのようにしていくかについて研修した。(小学校)
夢中で遊んだり、感動体験を積み重ねたりする中で、思いを伝えたいという気持ちが高まり、幼児同士の伝え合う力の基礎を築くことができるのではないかと考え、言葉を豊かに育むための環境構成や援助のあり方を探っていった(幼稚園)
子どもたちが意欲的に遊びに取り組み、自分の思いを伝え合いながら遊ぶことができる環境や援助の仕方を探っていった。他校園の取り組みを見ることで、見通しを持った保育をすることの大切さに気づくことができた。(保育園)
⑤西大寺中学校
毎年6・11・2月に公開研究授業を行っている。
スーパーバイザーとして佐藤雅彰氏(元富士市岳陽中学校校長)、佐藤暁氏(岡山大学大学院教育学研究科教授)を招き、参加者は50名程度である。高学年ほど、自分の考えを伝えたり仲間に依存したりしながら主体的・対話的に学んでいるが、授業の中で言葉が分からなかったり、イメージができないことで学びが停止する生徒も少なくない。物や絵、写真を準備すること、学びに入れない生徒には仲間とつながるまで丁寧に支援が必要であると指摘を受けた。研究協議では参加者を交えたグループ研修を行うことで「アクティブ・ラーニング」への理解が深まった。

得られた成果及び評価

各校園とも積極的に公開保育・授業を実施するとともに、他校園を訪れて研究協議を行うことで「学力向上」に向けての具体的な課題を共通認識することができた。また「アクティブ・ラーニング」への理解が深まり、新たに取り組む校園が増えた。

今後の課題とその解決への展望

児童、生徒の実態から計算力、思考力、語彙力、表現力の不足が共通理解できた。今後も12校園で研修を深め、進学の際の段差を取り払うために連携することが不可欠であること、また全国及び県学力学習状況調査の結果を分析しながら検証していくことが重要と考える。

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