学習効果を高めるコミュニケーション授業と包括的アプローチ
代表者:影山勝己 所在地:岡山市 助成年度:2016年度 教育活動助成
実践活動のねらいと期待する成果
(1)ねらい
生徒の学習効果を高め、学力向上を促す方策は様々に考案・実施されているが、中等教育学校という独特の教育スタイルを持つ本校においては、本校に適した方策をしっかりと持っておく必要がある。開学以来、進路指導・生徒指導の両面の工夫と合わせて効果的な学習指導と学習を促進させる学級集団づくりに取り組んでいる。先行研究で、生徒の学習適応感を向上させるにはSEL(社会性と情動の学習)を中心としたコミュニケ−ション授業の充実が効果的であると報告されていることから、本校でもより有効な授業展開を工夫し、校内での他の活動と包括的に関連づけて展開することを考えた。
(2)期待した成果
基礎期(中1,中2)にしっかりとした人間力の土台を固めることによって、自ら課題を見つけ、解決方法を探ろうとして積極的に学ぶ姿勢が培われる。それは学習面のみならず、地域や家庭における他者との関わり、さらには将来社会に出た時に関わることになる全ての人々との間で、人間関係を良好に保ち、豊かな心を持って生きていく人間を育てることに通じるものと確信する。また、学習面に限って考えても、協同学習・アクティブラーニングの効果の向上に確実につながる。さらにはあたたかく受容的な学校風土・学級風土をつくることにもつながり、不登校やいじめの起こりにくい学校にすることができる。
実践活動の内容と方法
(1)コミュニケーション授業
時間割に組み込まれている学校開設科目コミュニケーション(1単位)の時間を使って実践した。従来の「話す」「きく」「書く」といった国語教育の視点をしっかりと残しながらも、SELやピア・サポートのスキルトレーニングで活用されている「自己理解」「他者理解」「感情理解」「コミュニケーションスキル」「問題解決」などの要素を含んだ授業を展開した。教材は既存のトレーニングプログラムを45分の授業に合うように改変したり、補助資料を自作したりして作成した。「する(みる)→考える→わかる」の流れで、体験的に学び、メタ認知を行って、個々の振り返りのなかから大切なことが発見できるように働きかけた。協同の体験と個の学びを組み合わせて、常に生徒の思考がアクティブになるように努力した。
(2)包括的アプローチ(MLA)
①品格教育……12ヶ月のテーマとなる言葉を掲げ、毎月のはじめにテーマに合った自己目標を立てる。月の中頃に一度振り返る時間を持ち、月の終わりには自己反省をする。毎日書く生活ノートに品格教育専用の記入欄を設けて、担任が主導して指導した。テーマを自分のものとし、主体的に実践した。
②PBIS……先行実践では望ましい行動項目を示した「行動表」は教師が作成して示しているものが多い。本校では、この行動表を年度初めに生徒自身に作らせるところから実践した。自分たちが生活する学校の中で、どのように振る舞うべきかを生徒自らが考えることによって、主体的な取り組みとなるように仕向けた。手順は「各自で作成」→「班で共有」→「学級でまとめる」→「学年で統一する」という流れで、教師が音頭を取りながらもお仕着せではない生徒の言葉で、望ましい行動や態度について一覧表にまとめた。そして、各学期の終わりに生徒同士で「GoodBehaviorCard」を贈り合い、行動表に照らして望ましい行動をたたえ合うようにした。
③教職員研修……教育活動が円滑に行われるためには教職員の高い同僚性が求められる。OJT研修を5月と10月に、教職員全体研修を7月に、有志研修を10月に実施し、スキルの向上を目指すとともに、同僚性の向上にも努めた。
④家庭との連携……生徒がそれぞれの発達段階で乗り越えるべき課題をしっかりと乗り越え、心身ともに成長していくためには、家庭との連携協力が必要である。これまでも、授業参観・懇談等で保護者との連携は行ってきた。本年度は3月に「ほっとする研修会」と銘打って、特に基礎期の保護者を対象に交流し情報交換できる機会を設定した。
得られた成果及び評価
(1)コミュニケーション授業
「話す」「きく」スキルが入学時よりも高まり、発表したり、話を聴いて意見を述べたり、テーマを設定して議論したりすることを楽しむようになっている。そればかりではなく、生徒が互いを思いやり、仲間とのつながりの力を使って、自分たちで考え、選択し、行動できる集団に育ちつつあると感じる。この授業を実施した7期生は不登校や問題行動が全くなかった。担任団からは、この授業の効果が大きいとの感想を得た。
(2)包括的アプローチ
品格教育は生活ノートへの記入欄を設けて一人ひとりへの意識付けを強化することができた。特に2年生は毎月のテーマを道徳授業と関連させて扱い、しっかりと自己の行動をふりかえり、よい心がけを行動であらわそうとする姿勢を培うことができた。PBISは生徒の実態に合わせた取り組みを工夫したことで、規範意識を高め集団を育てることに効果があった。夏の教員研修では教職員も行動表を作成して意識を高め、理解を深めることができた。また、様々な形で教員研修を行うことで、知識・理解の深化だけではなく、同僚性の向上に寄与できた。保護者とのつながりも意識することで、多面的な生徒支援のための連携が多少なりともできたと考える。すべての活動を通して、教職員と生徒のつながり、生徒同士のつながりがあたたかいものになっていると感じる。
今後の課題とその解決への展望
コミュニケーション授業は、本年度の実践が単年度の一過的なものに終わらず、継続的になされることが大切であり、そのための連携と授業を担当できる人材育成が課題である。また、本年度この授業を受けた1年生がさらに力を伸ばしていくために、タテ(先輩後輩や教員と生徒の関係)・ヨコ(友人との関係)だけではなく、ナナメ(異校種・異年齢)の関係から学ぶ機会を設定することが望まれる。そのためには県内大学との連携授業などを展開していくことが望ましい。また、包括的アプローチについても、本年度の活動を根幹として、次年度以降生徒指導アプローチの一定の型として学校内に定着・浸透させていくことが望まれる。