潜在保育士復職支援研修
代表者:澤津まり子 所在地:岡山市 助成年度:2016年度 教育活動助成
実践活動のねらいと期待する成果
(1)ねらい
現在岡山県では、保育所入所希望者が年々増加しており、保育を支える保育士の人材確保が急務となっている。今を生きる子どもたちの健やかな育ちを支援し、かつ、貧困家庭の支援、社会参画し自己実現を図りたい保護者支援のためには、待機児童の解消が必須条件である。そのため、資格を持ちながら保育士として働いていない潜在保育士を掘り起し、保育所等への職場復帰に向けた支援が必要とされている。そこで、就実短期大学幼児教育学科では、平成26年に岡山県の委託事業として、潜在保育士復職支援プロジェクトを立ち上げ、研修及び情報交換会を実施した。保育士資格があっても、結婚、出産による退職、現場経験がない、長期にわたって保育から遠ざかっているなどの理由から、保育士の仕事への復帰を思い悩む人のために各種の研修会を実施し、復帰への後押しを行っている。平成26・27年は、岡山県の委託事業として実施した。
28年度は、貴財団の助成を受け、広報等によって幅広く受講者を募り、継続して復職支援の研修を実施し、一人でも多くの復職者を保育現場に送り出すことによって、待機児童の解消を図りたいと考えている。また、この研修の場を卒後リカレント教育の場として兼ねることにより、離職者を防ぐ対策の一助としたい。
(2)期待した成果
幅広く参加を呼び掛けて、一人でも多くの復職者を保育現場に送り出すことを第1の目標とした。また、離職者を防ぐ対策の一環として、この場を卒後リカレント教育の場としても兼ねることにより、安定した保育士の人材確保を期待する。
実践活動の内容と方法
(1)研修会
研修は3日間にわたり講座、及び実技で構成し、復職保育士や地方自治体の関係者を交えた情報交換会を実施した。また、就実こども園での体験実習を2日間行った。受講者は延べ57名(詳細は表1の通り)であった。
(2)情報交換会
岡山市岡山っ子育成局保育・幼児教育課の担当者2名から、再就職に関する取り組みについて説明があった。次に復職に成功した昨年度受講者から研修を受けるきっかけや研修会後の心境の変化と就職までの経緯などの話があった。その後、受講者から再就職にあたっての心配事や疑問点についての質問に対して、岡山市の担当者及び復職に成功した昨年度受講者から解決に向けてのアドバイスを受けた。
(3)就実こども園での体験実習
2日間(平日、土曜日1日ずつ)、9〜16時まで1〜4歳児の希望するクラスに入り、保育士の日常業務を体験した。この実地研修では、保育の環境における基本を学び、担任への質疑応答の時間を設けた。子どもと直接関わる中で、年齢による発達過程や個人差等の違いを理解した上で、その場に応じた対応を学習する機会となった。
得られた成果及び評価
(1)アンケート調査
今年度研修会の参加者に対し、無記名式のアンケートを実施した。その結果は図の通りである。
自由記述欄に、「5年ほどブランクがあるので保育について認識を深められて非常にありがたい」「園に持ち帰り、日々の保育に役立てたい」「実務経験が無く、教科書や講義と保育現場では違うこと、また年齢によって子どもの姿が違うことがわかり勉強になった」などの感想が寄せられた。保育士という仕事への興味、現場への復帰等に対する期待や、現職者の意欲向上が見られた。
(2)動向調査
今年度潜在保育士復職支援プロジェクトの実施状況をまとめると、下記の通りである。
復職支援の成果として、7名(7/12,58%)は一定の成果があったと考える。残り5名についても引き続き支援していきたい。また、卒後リカレント教育の場としては、受講者の半数が現職であった(図2参照)ことから、今後も継続して実施していく必要があると思われる。
今後の課題とその解決への展望
参加者を多く募るための広報活動として、SNS、TV、ラジオ、新聞広告を使った戦略に力を入れ、本学卒業生以外への告知、同時にリカレント研修の場でもあることを強調し、受講者の拡大を引き続き模索していきたい。受講者の意見に謙虚に向き合い、ニーズを把握した上での研修内容の改善を図っていきたい。
また、潜在保育士のみに着目するのではなく、これ以上潜在保育士の増加を食い止めるためにも現職者へのケアとして、相談業務等を充実させ現職者の働く意欲を高めることが必要である。今まで以上に行政とより強固な連携をとりながら、他の大学との連携を図るなど、横のつながりを構築することも重要であり、養成校、保育現場、保育行政が協働で保育環境の改善に取り組んでいきたいと考える。