禅寺とアートの共鳴「心のひだ・きびの美術」

団体名:心のひだ・きびの美術実行委員会
代表者:岡部 玄 所在地:総社市 設立年:2014年 メンバー数:9名
助成年度:2015年度 文化活動助成

目的

身体および心の奥深い所と付き合いながら、独自な思索・制作活動を実行し続けている総社ゆかりの作家8名により、“場との共鳴”“作家間の共存”“見てくださる方々との共振”の実現を通して、魂の贈与の場の立ち上げを目指す。また、現代社会は脳化が進行し、身体性(存在そのものの姿)が忘れ去られようとしています。身体を重視(座禅・飯法)する文化の伝統を継承し続けている禅寺・宝福寺と深く関わることで、さらなる身体性(作品の姿を含む)の確立の機会としたい。ひいては、地域社会の文化の発展・社会平和の礎になれれば・・・。

内容・経過

第2回総社芸術祭において「心のひだ・きびの美術」を5月1日〜10日に宝福寺で開催。来場者1998名。記録集(40ページ)200部作成。
展示:浅野は日本画の技法による絹本作品、2曲屏風「刻の波」、3点組作品「刻の波」、「風をまとう」を庫裏の3部屋に配置して展示。岡部は流木による立体作品、「仰ぎ見る私の青空」を山門に、「お前はサボテンのように砂漠に突っ立ったまま死ぬのか」、「複合体」を庫裏に、「お前は象のように隠れて死ぬのか」、「複合体」、「森の中を歩くよに・・」を方丈に展示。樫尾は染色作品の大作「もやをよそはう」を庫裏の梁に、「みちすがら」をその脇の壁に掛かる笠と並べて展示。草間は国際コンペ入賞のテキスタイル作品の大作「Flow」を大玄関の間に配置して展示。甲田は心機一転して取り組んだ木彫作品「始まりの記憶」、「あるべき場所」を食堂に、「記憶チップ」をその脇の障子の桟に配置して展示。児玉は油彩による作品、サーフボードにペイントした「夜に立つ霧」、家状の大作「夜にたつ霧」、50号の「そこはかとない緑色、そして赤色」、80号の「黄烏瓜の散歩道」を児玉が日頃制作に使用する室内イーゼルとともに、墨によるドローイング作品の掛け軸「夜に立つ霧」以上の5作品を方丈の4部屋に配置して展示。佐藤は油彩作品の5点組作品「untitled」、他2点の「untitled」を方丈の襖に展示、島田は赤い布による襞の作品「遠との共鳴—記憶の波音」を方丈の庭側の3mX24mの部屋いっぱいにインスタレーションした。
特別企画:ギャラリーコンサート(中ムラサトコ・バロン)、ギャラリートーク(岸本奈義町現在美術館館長)を実施。

成果・効果

1998名の来場者におおむね好評だった。照明などは特別用意しないで自然光のまま展示。改めて、常日頃展示している「ホワイトキューブ」を考える機会になった。歩行困難な高齢者も来場くださり、そのエスコートは得難い経験を与えてくれた。「現代アートは分からない」という声もあったが、一定の理解はされたのではないだろうか。今回の美術展には準備期間を含め1年あまりを要したが、参加作家にはそれぞれの取り組み方の密度に応じ、それぞれ得たものがあるだろう。今回得たものを今後の生活・創作活動(作品の深化・向上、場との調和力の向上、企画活動など)に活かしていきたい。

今後の課題と問題点

場との調和を厳密に考えるとまだまだやるべきことは山積している。たとえば、繰り返し繰り返し展示場所に通うことや、その場のための制作が要求されるだろう(作家に負担を強いることにはなるが)。また、「現代アートは分からない」という声に応える工夫をこらしていくことが必要である。「魂の贈与」および「身体性の確立」を目的に挙げたが、実現にはまだほど遠い、今後の大きな課題である。また、今回参加した作家以外にも、まだまだ“総社ゆかり”の人材は豊富である。今後も丁寧に掘り起こしていきたい。今後の研鑚が作家の向上をもたらし、ひいては総社および社会の文化力の向上に寄与されていくのではないだろうか。

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