岡山後楽園の能舞台で岡山市立三勲小学校と合同で「はじめての能楽大会」
代表者:原田一成 所在地:浅口市 設立年:2000年 メンバー数:12名 助成年度:2015年度 文化活動助成
目的
「能」は日本の伝統文化として、長い歴史を有しているが、現代の若者にとっては、非日常的な存在である。若者たちが日本の誇る文化に触れ、そしてその魅力に気付き、これからの国際化社会で、日本の伝統文化を主体的に発信しうる存在になれることを目的とする。
内容・経過
2000年に授業の一環として、総合学習の授業が取り入れられた。本校では、この総合学習を「マイスタースクール」として、その道のプロフェッショナルの方を招いて、その技術を実際に学ぶ時間に当てている。開始当初から広島県福山市の大島能楽堂で国際的に活躍されている女性能楽師の大島衣恵先生や加藤千絵先生、森田流笛方の八木原周平先生に、舞、笛を教えていただいている。大島先生が岡山市立三勲小学校でも能を指導されている縁もあって合同で始めた「はじめての能楽大会」も今年で16回目の開催となった。
今年度、おかやま山陽高等学校で能を履修した生徒は8名である。そのうちの1名は3年間、能講座を履修した生徒である。残りの7名は能に触れること自体が全く初めてだったので、まずは基本である正座をし続けることからスタートした。同時に美しい立ち方や所作への矯正、声を出すという稽古も行っていったのだが、そのような教育を受けたことがない生徒にとっては、非常に難しいようであった。先生方のご指導により、すり足から舞へ、笛の指使いから囃子へとゆっくりではあるが、着実に成長できたことは生徒にとっても自信になっていた。小さな成功体験の積み重ねがあったからこそ、生徒は自信を持ち、自らの力でモチベーションを高めて着実に次への段階へ進むことができたのである。ここまでの学習成果を発表する場として用意されているのが、本来では上がることも難しい岡山後楽園能舞台での「はじめての能楽大会」である。
成果・効果
平成27年11月12日(木)に岡山市立三勲小学校と合同で開催した「はじめての能楽大会」では、例年以上に多くの方々に観覧していただき、盛況を博した。この会の開催に当たっては、小学校の関係者や多くの保護者の方々に多大なご尽力をいただいた。第1部で三勲小学校の児童90名とおかやま山陽高等学校8名による学習発表会が行われた。高校生8名による「羽衣」は日頃の練習の成果を発揮し、謡と舞、笛ともに最後まで緊張感を持って演じ切ることができた。リハーサルの段階から、緊張の色を隠せなかったが、無事舞台を終えた後の安堵の顔が非常に印象的であった。常日頃、あのような空間に立ち、演じることがない者にとっては、貴重な経験になった。第2部での先生方による「敦盛」は、本物の持つ洗練された奥深さと舞台の底から湧きあがる力強さを感じさせ、一瞬にして、それまでとは違った雰囲気を作り上げた。生徒や児童は、ただただその圧倒的な迫力に驚き、本物しか持ちえない力に魅了されていた。ここまで、先生方に指導はしていただいても、舞台上で舞や笛、大鼓をされている姿は見たことがなかったので、いつもとは違う凛とした雰囲気を纏った姿は、生徒にとって非常に印象的であっただろう。「百聞は一見に如かず」ではないが、本物に触れた経験は、生徒たちにとって非常に有益であった。今後の生徒たちの人生においても、「本物に触れ、学ぶ」という経験は必ず生かされると思う。
今後の課題と問題点
「能」という伝統文化に関わり、裾野を広げる活動として行っている「はじめての能楽大会」も今年で16回目を無事終えることができた。今年度は1名の生徒が3年連続で能講座を受講し、昨年度は三勲小学校での能学習経験者が本校に入学して能講座を履修した。人数としては決して多いわけではないが、今までの取り組みが小さな花を咲かせたと考えている。これからも小さいかもしれないが、その花の数を増やすことができるような活動を地道に続けていく決意である。