タブレット端末を活用したe-learningの在り方に関する研究

団体名:就実中学校ICT教育研究グループ
代表者:木多功彦 所在地:岡山市 
助成年度:2015年度 教育活動助成
  • ①学習する内容を選択する
  • ②英単語を見る
  • ③英単語を判定する
  • 個人成績表のサンプル

研究・実践活動のねらいと期待する成果

(1)ねらい
本校では、平成27年度の中学一年生全員にタブレット端末を使用させることにした。しかし、ICTを活用した教育はまだ緒に着いたばかりであり、環境の整備、指導モデルの開発、デジタル教材の開発の充実等、多くの課題がある。そこで本研究では、岡山大学大学院教育学研究科寺澤孝文教授の指導・助言のもと、学習意欲と学力の向上を図る新しいe-learningシステムの構築とコンテンツ・指導法の開発を目指す。
(2)期待した成果
寺澤教授のマイクロステップ計測技術によって、これ
まで見えなかった生徒一人ひとりの日々の学習の積み重
ねが可視化できるようになった。この技術は、紙のドリル学習(玉野市立玉中学校、平成19年実施)やNINTENDODS用のソフト「THEマイクロステップ技術で覚える英単語」(麻布高等学校、平成20年実施)等により、既に様々な学校で実施されてきたが、用紙・印刷・配達に係る費用の問題やドリルをやり取りする際のタイムラグ等
の問題があった。しかし、本研究によりマイクロステップ計測技術をタブレット端末に実装することができれば、上記の問題点を克服することができ、真に有用なe-learningとして広がっていくことが期待できる。

研究・実践活動の内容と方法

(1)マイクロステップ計測技術を用いた英単語ドリル学習の実施
岡山大学と「学力向上検証事業に関する委託契約(平成27年10月1日〜平成28年3月31日)」を締結し、寺澤教授が開発したマイクロステップ計測技術を用いた英単語ドリル学習(以下、マイクロステップ・ウェブ・ドリル)を、タブレット端末において実施した。大学生等への事前調査によって「レベル1(易しい)〜レベル5(難しい)」の5段階に分類された英単語(『NEWCROWN一年生』三省堂)を、レベル1から順に学習していった(平成28年1月中旬以降は、学習するレベルを各自が選択できるように指導した)。

<学習の手順>
*②〜③をくり返した後、「まとめのテスト」や現在の心理状態についてのアンケートが行われる。

生徒の学習状況は、タブレット端末から3G回線を通じて岡山大学のデータセンターへ送られた。学習到達度がグラフで示された個人成績表が作成され、成績表は担任の教師から生徒へ手渡された。また、成績表には大学教授や学生からの応援メッセージ等も載せられており、平成27年12月15日、平成28年1月9日、1月25日、2月22日、3月13日の計5回、結果のフィードバックが行われた。
(2)classi株式会社が提供するサービスを活用した、本校独自のデジタル教材の開発
・朝学習(「就中タイム」8時45分〜9時)や授業で、本校教員が作成した小テストをタブレット端末で実施。
・個人目標や学習への取り組み等に関するアンケートをタブレット端末で実施。
・授業で使用する資料(PDFファイル、音楽ファイル)をタブレット端末に送信。
(3)無料で配信されているアプリを活用した効果的な指導方法を研究する。
<生徒が利用したアプリケーションソフト(一部)>
・「シンプル単語帳」(sika524)
自分で単語帳を作成し、学習するアプリ。
・「暗記ドリルメーカー」(KATATEApps)
教科書等を撮影した画像から問題集を作ることができるアプリ。
・「中学生漢字(手書き&読み方)−無料の中学生勉強アプリ」(学校ネット株式会社)
手書き漢字ドリル。
・「あそんでまなべる世界地図パズル」「あそんでまなべる日本地図パズル」(DigitalGene)

得られた成果及び評価

平成27年11月に行ったアンケート(対象:中一女子、60名)では、「タブレットを使用した学習は楽しくわかりやすい」と回答した生徒が多く、「タブレットを使った授業や学習をもっと受けてみたい」と回答した生徒も多かった。タブレット端末の活用は、生徒の学習意欲を向上させることが期待できる。また「英単語学習」という積極的に取り組みにくい学習であっても、マイクロステップ・ウェブ・ドリルでは「学習しやすい」と回答した生徒が多く、「英単語を覚えることができそうだ」と前向きに捉えている生徒も多かった。
本研究に対する教育関係者の関心も高く、平成27年11月には長野県高森町より町長以下6名が本校の視察に訪れ、平成28年1月には株式会社ベネッセコーポレーション及びclassi株式会社からのヒアリングを受けた。

残された課題とその解決への展望

本年度はタブレット端末導入一年目ということもあり、「できそうなことをやってみた」という部分が多い。アンケートの自由記述では、「もっとタブレットを使った授業をしてほしい」「もっと反応の良い端末を使いたい」等の意見もあり、タブレット端末を活用した授業を、量・質ともに高めていくことが今後の大きな課題である。
今回、寺澤教授に多大なお力添えをいただき、タブレット端末を使用したマイクロステップ・ウェブ・ドリルを実施することができたことは、本校の教育活動にとってプラスになっただけでなく、タブレット端末を活用したICT教育推進に向けて、大きな第一歩を踏み出すことができたと考える。

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