アートによる地域との連携—現代アート作家瀧澤潔氏と学生によるイルミネーション制作—
代表者:中田稔 所在地:津山市 設立年:2005年 メンバー数:25名 助成年度:2014年度 文化活動助成
目的
保育者を目指す幼児教育学科の学生全員によって、2005年より地域の子どもたちが喜び、楽しめるイルミネーションを制作し、クリスマスの時期に、地域住民を招いて点灯式を行ってきた。今年度10回めを迎えるにあたり、子どもの夢を育むという原点に立ち返るとともに、美作地域で唯一の大学として、アートによる地域との連携や地域の活性化の視点から、学生自らが、地域の子どもたちや招聘した芸術家と、主体的に交流に取り組むことを目的とする。
内容・経過
本実行委員会は、学科の学生代表14名と学科教員で構成される組織である。12月の点灯式に向けて、5月20日に新年度第1回の会合を持ち、実行委員長、副委員長を選出し、以後随時委員会を開き、イルミネーションの構成や芸術家の人選、点灯式の企画等を検討してきた。そして、そこでの決定事項をもとに、学科全体で点灯式に向けての準備を行った。
招聘作家については、越後妻有アートトリエンナーレ等でも活躍されている現代アート作家の瀧澤潔氏に決定し、9月29日に会場の下見と学生とのディスカッションを行なうために瀧澤氏が来校された。1日の滞在ではあったが、学科全学生を対象にしたパネルディスカッションや、実行委員の学生とのブレインストーミングによって、イルミネーションを行う意味やアートの持つ力について討議し、認識を深めた。
その後、瀧澤氏とはメール等で連絡を取り合いながら、イルミネーションに関わる作品のコンセプト等を調整し、保育者を目指す学生の「舟出」を表す作品の制作が決定した。これを受けて、10月中旬より約1カ月間、学科全学生が、紙粘土で思い思いの舟を制作した。舟には、これから保育者として社会に出て行くにあたっての夢や希望、決意や不安などを書き込んだ。
また、津山という地域のよさを伝えるために、市の花である桜をモチーフにした切り絵を制作した。さらに、幼児との交流として、美作大学附属幼稚園の園児に、絵を描いてもらい、イルミネーションとして飾ることにした。
11月初旬より会場の設営を徐々に進め、当日披露する歌の練習等も実行委員がリードして熱心に行った。
11月28日、瀧澤氏が来校され、3日間で作品の設置作業を行った。これには、実行委員会の学生だけではなく、多くの学生ボランティアや学科教職員が関わり、高さ13m、幅30mのネットで覆われた本館に1500個の紙粘土の舟と500個の5Wの白熱球による作品「美作大学のためのインスタレーション—舟出—」が完成した。この他にも瀧澤氏のアドバイスのもと、幼稚園児の絵約200枚を投影する高さ5mの塔「子どもの塔」と、約450枚の桜の切り絵をトンネル状にして縁石に配置した「サクラの小径」も制作した。
12月3日夕刻より、地域住民、親子連れや学生、およそ300名の観客を前に歌を披露した後、イルミネーションの点灯を行なった。当イルミネーションは、12月25日まで点灯され、多くの人の目を楽しませた。
成果・効果
瀧澤氏との制作活動によって、大学としてイルミネーション点灯式を行う意味を再考することができた。また、普段アート作品に直接触れる機会が少ない学生や地域住民にとって、みんなで1つのものを作り上げる楽しさや素晴らしさを共有するよい機会となった。さらに幼稚園児の作品を展示したことで、子どもたちにとってもより一層身近なイベントとなった。
今後の課題と問題点
点灯式当日は、多くの地域住民に足を運んでもらったが、制作段階で地域とどう連携していくかが課題である。また、招聘作家と学生との直接的な交流場面が、下見と作品設置の期間に限られたり、実行委員以外との交流場面が少なかったりしたことも課題として挙げられる。