備前・備中・備後の織物産業の変遷展示を通して今後の地域織物産業の方向性を考える
代表者:鈴木まどか 所在地:倉敷市 設立年:2010年 メンバー数:12名 助成年度:2014年度 文化活動助成
目的
『ジーンズ以前〜備前・備中・備後の織物文化〜』をテーマに掲げる、本年度の倉敷生活デザイン展の開催は、前回のテーマ「既製服」(川下)に対して、その素材である帆布、細幅織物など地域織物産業(川中)に焦点を絞り、日本及び世界の産業動向の中で備前・備中・備後の織物産業の過去および現在の実物資料を展示して、今後の地域織物産業の方向性を考える。
内容・経過
本展覧会は、岡山県岡山市から広島県尾道市に至る地域における、明治期以来の西欧からの技術移転による大量生産を可能にした動力機械を用いた工場制織物工業を生産品で示す、今までにない最初の展覧会であるだけでなく、この地域特有の織物文化の伝統を受け継ぐ最新の織物開発も取り上げた画期的展覧会である。
展覧会は、3部構成で、各部のタイトルと概要は以下のとおりである。第1部の「幕末に準備された近代日本織物工業〜帆布と細幅織物〜」は、縞帳、備前小倉帯地、帯地見本帳を示す。
第2部の「機械紡績による輸出織物〜綿糸から合成繊維へ〜」は、日露戦争から第1次世界大戦の頃に本格化する機械制綿工業による日本綿産業の世界的飛躍を中国向け輸出品の腿帯子(たいたいつ)や先染め生地見本でたどる。最近発見された産業文化資料として、日本綿工業が原料工業・半製品工業を脱して精製品工業となった「第1次大戦ブーム」期以降のいわゆる「戦間期」の輸出向けや国内向けの帆布、織物見本帳、石油ランプの平芯などや第2次大戦後の日本工業の復興を促した輸出織物のシッピングブック、輸出用絣洋服生地、ビニロンの工業化で登場した「合繊帆布」をはじめ、合成繊維製品も展示した。
第3部「ジーンズへの道程〜ファッションとしての綿織物〜」では、1968年5月パリでの「五月革命」の社会変革を背景にサンローランは、「サファリ・スーツ」をデザインし、帆布などの防水された厚地の綿布を堂々とファションに取り入れる。この影響下に、綿織物や日本の伝統的素材への再評価に転じる変化を振りかえる。
以上のように第1部と第2部とは、幕末から第2次世界大戦後の綿産業が日本の経済復興に果たした役割を展示資料で示し、第3部は、それ以降の新動向を表す生産品帆布バッグや組紐技術で試作されたロボット用人工筋などの新生産品の中に生き続ける伝統的技術を示した。
成果・効果
展覧会は、倉敷市玉島地区の数多くの地域住民が出入りをする倉敷市玉島市民交流センターの美術展示室(2014年8月23日〜31日:来場者1000人)およびふくやま草戸千軒ミュージアム(2015年1月1日〜25日:来場者2700人)で開催した。玉島では夏休み期間であったために親子連れの観覧者が、京阪神地区からの専門家に交じって、展覧会場に出入りするなど展覧会開催の効果は、広く一般人に及んだ。
また小学生を対象とした展覧会に併設したワークショップは、帆布にステンシルで模様を描くコースター作りで、15名の参加者を得た。従って展覧会の成果を図版・文字で定着させる研究報告書作成は今後の展覧会活動の充実のため重要な意味を持つものである。
今後の課題と問題点
未来の備前・備中・備後の織物産業に対する動向を探るには、丈夫さと機能性が要求される作業服・制服の素材だけではなく、縫製品に及ぶ調査研究が不可欠である。縫製業は、当地の得意とする重要な産業であるので、素材と併せて近い将来には、ファッション性が要求される作業服やジーンズの展覧会を企画すべきとの結論に達した。