「備中足守藩 木下家資料」の調査研究を通して地域の魅力を再発見
代表者:倉地克直 所在地:岡山市 設立年:2014年 メンバー数:13名 助成年度:2014年度 文化活動助成
目的
展覧会の開催や図録の制作を機に、有識者の協力を得て、これまで本格的な調査研究が行われていなかった備中足守藩木下家資料について、今後調査研究が進む状況をつくり、その成果を展示などを通して発信することで、修復保存活動や、岡山市全体および足守地区における地域の誇りの再発見など文化面での賑わいづくりにつなげ、資料が末永く愛されるための出発点となることを目的とした。
内容・経過
特別展「岡山に残った豊臣家〜備中足守藩木下家資料〜」を平成27年1月9日(金)から2月8日(日)まで開催し、それにあわせて図録を制作した。
この展覧会は、長く岡山市教育委員会に寄託され、平成23年に同じ岡山市の施設である岡山シティミュージアムへ寄託された備中足守藩木下家資料について、可能な限りまとまった形で展示しようとしたもの。
また、展示では、木下家文書を収蔵する岡山県立記録資料館や、木下家にゆかりの深い高台寺の文化財を借用したほか、幕末まで同じ木下家が治めた日出藩(今の大分県速見郡日出町)についても資料のほか、映像や写真で紹介した。
図録では、これら合わせて126点の展示品を収録したほか、この分野における有識者から寄稿いただき所収した。
成果・効果
展覧会の開催や図録の制作を機に、大学の研究者、京都国立博物館や東京文化財研究所などの研究機関、県や市の文化財関係者、木下家文書の寄託先である岡山県立記録資料館、高台寺や木下家の関係者などの協力を得て、展覧会の開催や図録の発刊が行われたことは、これまで本格的な調査研究が行われていなかった備中足守藩木下家資料について、今後調査研究が進む状況をつくる出発点として成果があり、平成27年度も研究会の計画が進みつつある。
また、岡山(足守)の地に、ねねや豊臣秀吉をはじめ豊臣家ゆかりの資料が残り、伝えられてきたことを、あらためて世間に認識してもらう機会となったほか、足守以外に唯一木下家が大名として残った豊後日出藩ゆかりの大分県速見郡日出町の関係者とも交流が進んだことも、備中足守藩木下家資料の調査を続ける上で実りがあった。
図録も、初めて備中足守藩木下家資料の主要資料を網羅し、冒頭に挙げた研究者や研究機関の方々、木下家の関係者等にも執筆いただいて発刊することができた。
今後の課題と問題点
今回の成果を受け、備中足守藩木下家資料の寄託を受けている岡山シティミュージアムにおいてどのように展示していくのか、そしてようやく灯った調査研究の火を消さないように持続していくのか、一気呵成に計画して息切れし頓挫してしまわないような、中長期的な見通しを立てることが必要と考えている。
また、岡山シティミュージアムにおいては、年間で多くの展覧会を実施し、学芸員による調査研究等の時間がとりにくいこともあり、関係機関やこの分野の専門家の支援なしには事業が進展しにくい実情もある。さらに、現在保存を念頭に置いた環境管理の視点から、これらの資料が足守地域から離れ、岡山シティミュージアムに寄託されているが、地域の誇りとしての資料が、例えば、いつ展示を見に来てもその内の何かが展示されているというような、地域の人々が何かよりどころとできるような展示環境を作ることができるかどうかも重要である。