放課後児童クラブにおける障がい児 支援教材の研究開発

団体名:くらしき放課後児童クラブ大学連携研究会
代表者:赤木恒雄 所在地:岡山県 
助成年度:2014年度 教育活動助成
  • 図1 試作品の表紙
  • 図2 試作品の内容(2コマ)

研究・実践活動のねらいと期待する効果

障がい児の健全育成を図る上で、放課後児童クラブが果たす役割は益々大きくなり、体制の整備が強く望まれている。倉敷市では、障がい児受入数の急増により、障がい児への対応力の強化・向上が求められており、指導員の養成や専門性の向上に向けた研修体制の整備・充実が課題となっている。
倉敷市も平成21年度から指導員に対して「障がい児対応専門研修(2年更新)」を実施しているが、より成果を上げるための方策として、指導員向けの研修教材の作製が求められている。従来から、特別支援学校の児童・生徒や教員を対象にした教材は比較的豊富であり充実しているが、放課後児童クラブでの活用を念頭においた教材は必ずしも多くはみられない。
そこで、本研究では、特別支援教育分野の研究者のいるくらしき作陽大学とマンガ・アニメコースを持つ倉敷芸術科学大学が倉敷市や地域と連携して、放課後児童クラブの充実に向けて、障がい児の支援を目的としたアニメによる指導者向け教材を開発することを目的としている。

研究・実践活動の内容と方法

・大学連携事業の打合せ会(7月21日)
会場:くらしき作陽大学参加者10名
この打合せ会において、今年度中にアニメによる放課後児童クラブ指導員向け教材(試作教材)を完成させるために、全体計画を再度検討した。その結果、申請時に研究方法として記載していた玉島地区と水島地区の児童放課後クラブ指導員等からの聞き取り調査を実施することは時間的に無理であることから、放課後児童クラブ指導員に協力してもらい、児童クラブの課題等を示してもらうことになった。具体的には、玉島地区ではながおキッZ児童クラブ指導員、水島地区では二福のびのびクラブ指導員及び郷内児童クラブ指導員である。そして、支援ハンドブックの内容(あらすじ)については、くらしき作陽大学の特別支援教育の橋本正巳教授を中心に依頼した指導員の人たちが分担して作製することが、また支援ハンドブックの大筋が確定した段階で、倉敷芸術科学大学のマンガ・アニメコースの中川浩一教授が中心となってそのハンドブックのアニメ化を担当することが決定された。

・第1回定例研究会(8月26日)
会場:くらしき作陽大学参加者16名
最初に、新たに依頼した放課後児童クラム指導員から学童保育の現状についての報告がなされた。引き続き、各指導員から学童保育の実践報告がなされた。
その後、放課後児童クラブ指導員向けの支援ハンドブックの全体概要について検討し、事例紹介本で、ストーリーマンガ本にすることを決定した。また、中川教授からアニメ本にするためには、本に登場する指導員の人数、児童の人数、さらに指導員、児童にどういった性格を持たせたらよいか決めてほしいとの依頼があった。

・第2回定例研究会(9月18日)
会場:ながおキッZ児童クラブ参加者16名
放課後児童クラブのイメージがわかりにくいので、施設見学も兼ねて、ながおキッZ児童クラブを会場に研究会を開催した。
前回の中川教授のアドバイスを受けて、支援ハンドブックの内容構成を4章に決め、主人公などの名前を決定した。橋本教授と打ち合わせをしながら、各指導員が作成してきたシナリオをスクリーンに映して、参加メンバーで文言等について検討し、3章までの話しの流れをつくった。

・第3回定例研究会(10月28日)
会場:二福のびのびクラブ参加者14名
放課後児童クラブであっても、ながおキッZ児童クラブとは施設の規模等が異なることから、見学を兼ねて二福のびのびクラブで研究会を開催した。まず、前回取り扱えなかった第4章のシナリオについて検討し、4章全体の話の流れを完成させた。そして、全体の話しの流れが完成したので、文章化されたストーリーをどのようにアニメ化すればよいかについて検討した。

・第4回定例研究会(11月4日)
会場:くらしき作陽大学参加者20名
橋本教授や定例研究会参加者のアドバイスなどによって完成した話しの流れを、中川教授がアニメ化するために、より具体的なことについて確認した。そして、このストーリーを完全にアニメ化するには時間的余裕がないことから、絵コンテを用いて話しを展開することとなった。
登場人物、名前等について再度確認がなされた。次回は中川教授を中心としたグループで話しあい、完成したストーリを絵コンテ化した原稿をもらうことになった。

・第5回定例研究会(12月2日)
会場:ながおキッZ児童クラブ参加者18名
中川教授及び山下真未講師らが絵コンテ化した原稿を研究会参加者に配布し、問題点のチェックを行った。また、アニメ化する中で詰められていなかった部分や文言の統一が取れていない部分が見つかったので、橋本教授や指導員から修正コメントをもらった。修正の必要な部分等を持ち帰り、再度ハンドブックの修正をすることとなった。

・第6回定例研究会(平成27年3月12日)
会場:くらしき作陽大学参加者16名
第5回研究会で修正の依頼のあった箇所を訂正した原稿を会場で配布し、最終チェックをした。この時点でも加筆が必要な箇所があったので、橋本教授や指導員にチェックを依頼し、修正用のコメントを受け取った。ほぼ内容は完成したが、ハンドブックにするために必要な巻頭言、おわりに、構成員・協力者などのデータを受け取り、それを支援ハンドブックに加えて冊子にすることになった。

得られた成果及び評価

1.成果は、当初の計画通り、障がい児の支援を目的としたアニメによる放課後児童クラブ指導者向け教材(支援ハンドブック)の試作品を作製できたことである。(30頁)
2.この指導者向け教材を作製するプロセスを通して、この研究会に協力してもらった指導員も平素から障がい児に現場で対応している内容を再度見つめ直し、指導のポイントを十分に把握し、整理することができた。
3.支援ハンドブックの構成内容は次の通りである。
・指導員さんへのヒントがいっぱい
・くらしきっこ児童クラブの紹介
・放課後児童クラブの紹介
【第1章】ねぇ!気づいてよ!はなしをきいてよ! p9
〜特性を知ると同時に指導員が気づく大切さを伝える〜
【第2章】チームでチャレンジ!指導員集団 p13
〜一貫して取り組むことの大切さ〜
【第3章】思い合えるなかま集団になろう! p17
〜お互いを理解し合える関係づくり〜
【第4章】6年間。いっしょにいるよ! p23
〜子ども集団の中で生活すること〜

残された課題とその解決への展望

今回完成した試作品を玉島地区・水島地区の放課後児童クラブで試用し、試作品の試用効果を分析し、さらに使用しやすいように試作品を絶えず改善していくことが今後の課題である。

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