グローカル人材育成の「海外インターンシップ・海外販売実習の取組」と「キッズビジネスタウンの取組」によるビジネス専門高校生の思考力、会話力向上に向けた指導について

団体名:県立津山商業高校グローカル人材育成プログラム2014実行委員会
代表者:吉田 信 所在地:津山市 
助成年度:2014年度 教育活動助成
  • シンガポール MAX KOI FARMでの販売風景
  • 小学生お仕事体験 in 津商モール 受付風景

研究・実践活動のねらいと期待する効果

1ねらい
「グローカル人材育成プログラム〜つしょう夢づくりプラン〜」として、国際感覚を身につけた地域の担い手としての人材育成に努める。
①シンガポールでインターンシップを実施し、異文化理解と英会話によるコミュニケーションの実践、県内からの進出企業を訪問してグローバル感覚を育成する。
②全校生徒による販売実習「第6回津商モール」で「小学生お仕事体験in津商モール」を開催し、小学生がビジネスの仕組みを体験する取組を生徒に運営させ、課題解決力と地域の方とのコミュニケーション能力を図り、地域に貢献する。

2期待した成果
①海外販売実習の取組は実際に販売体験や企業実習体験をし、異文化理解や国際感覚を持つ生徒の育成が期待できる。
②津商モールの取組は課題解決能力を養うことに繋がり、地域の小学生にビジネスの仕組みや働くことの楽しさを教えることで知識や思考力が身に付き、商業を学ぶ生徒のモチベーションを高める商業教育の育成が期待できる。

研究・実践活動の内容と方法

①シンガポール海外販売実習
今年度で海外販売実習の取組は3年目である。授業の中で錦鯉の生産・飼育と商品開発を行っており年2回地元の「道の駅」で販売実習を行っている。今回は海外販売実習に加え企業見学を取り入れた。
参加者:地域ビジネス科3年科目「ベンチャービジネス」選択者内希望者8名引率:2名
事前学習:11/4輸出する鯉の選定、11/10梱包・出荷作業、11/27・12/5ALTによる英会話研修、11/13・11/18・11/20シンガポールに関する講習・調べ学習、販売促進活動(PR、チラシ・ポスター作成)、12/9最終打合せ・販売実習物品準備
販売実習:12月11日(木)〜16日(火)
場所:MAXKOIFARM(シンガポール)
実習内容:12/12企業見学JETROシンガポール支局にて「シンガポールにおける経済事情」講習、販売会場準備、12/13〜14販売実習、12/15企業見学サンマルクカフェにて「海外におけるビジネス展開」など講話、市内研修
事後学習:1/23本校「課題研究発表会」報告、報告書作成、校誌「自彊」への報告書投稿

②小学生お仕事体験in津商モール
実施日:11月22日(土)9:30〜12:30(10:30〜11:30お仕事体験)
場所:岡山県津山総合体育館とその周辺
参加者:小学4〜6年生90名
実施内容:銀行口座開設・ハローワークで仕事探し・職場面接・仕事体験・退職手続・給与受け取り・納税
仕事内容:販売員(高校生の店舗15ブース)、警察官、消防士、新聞記者、ラジオ局員
概要:本校全校生徒による販売実習「第6回津商モール」のイベントとして今年度初めて開催した。津山市内の小学4〜6年生50名を募集したところ、多数申込みがあり、申込者全員に参加してもらった。本校1年生が小学生にサポート役として付き添った。小学生は希望の職種を選び、1時間の仕事体験後、給与として一人500円の当日販売実習で使用できる模擬通貨「つう」を受け取った。

得られた成果及び評価

①シンガポール海外販売実習
ア販売実習
事前学習で調べたシンガポールについての知識やALTによる英会話研修の成果を、販売実習を通じて実際に体験することができ、錦鯉という商品に対する価値観の違いを始め、異文化に触れることができた。販売初日は事前学習プリントを握りしめての接客だったが、何を言われているか理解できず、言葉も笑顔も出なかった。2日目は知り得た文化の違いを踏まえ、相手をより知ろうと笑顔で耳を傾けた結果、聞き取れた単語とジェスチャーを使えば、思いは伝わることが分かった。同じ商品についてもターゲットや価格設定が日本と大きく違うことを知り、マーケティングの重要性も学んだ。
イ企業見学
販売前日にJETROシンガポール支局による講習で、経済や文化、ライフスタイルについて学び、シンガポールに関する、より具体的な知識を持って実習に臨め、異文化理解が体験を通じて深まり、英会話によるコミュニケーションの実践につながった。サンマルクカフェCEOによる講話は、地元企業の海外進出成功事例であり、興味深い内容であった。異文化を理解した上でのマーケティング、海外でのマネジメント、起業家精神についてなど、今までの授業で学んだことを実践においてどう活用するかを知ることができ、引率教員にとっても、今後の授業展開に大いに役立つ内容であった。

②小学生お仕事体験in津商モール
1年生80名がお仕事体験のスタッフとして働いた。大きな行事の運営側として、スムーズな進行を心掛けるとともに、小学生の目線になってわかりやすく話をし、安心して行事に参加してもらう気遣いをすることも必要であった。お兄さんお姉さんの立場で、小学生に仕事の内容や挨拶の仕方などのビジネスマナーについて教える立場となり、商業高校で普段から身に付けている知識や技能を生かすことができた。事後アンケートでは、「大変だったけれど、やりがいがあった」「小学生の立場になって考えながらサポートできた」「しっかりコミュニケーションをとれた」など成果を感じる感想が多かった。小学生や保護者のアンケートにも、「働くのは楽しかった」「津商の人が優しく丁寧に教えてくれた」「来年も来たい」「生徒は挨拶がよくできていた」という好意的な意見が多かった。

残された課題とその解決への展望

①シンガポール海外販売実習
参加生徒のコミュニケーション能力向上とグローバルな視点の育成に多大なる効果があった実習であるが、同じ科目を選択している生徒や、全校生徒へその成果や貴重な体験を十分伝えきれていないことが課題である。報告・発表は事後だけでなく、計画準備から段階的に行っていく必要がある。また、輸出・渡航費用の負担が大きいので、助成金等をいただき実施してきたが、今後の継続のためにも安定した財源が必要である。

②小学生お仕事体験in津商モール
今年度は手探りでの実施であったため、生徒主体での企画・運営に至らなかった。津商モールの全体像を知らない1年生にとっては多少荷が重かったが、生徒は小学生への説明・声掛けなど工夫しながら立派に対応できていた。次年度は、会場を本校体育館に戻し、新たな体制で実施する。お仕事体験は津山商工会議所青年部と共同開催する。体験内容・運営方法等をより充実したものにし、本校生徒の主体的なコミュニケーション能力・思考力・課題解決能力を身に付ける場としたい。

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