自立した個を育てる学び合いの研究 キーワード:『論語』の学び

団体名:和気あいあい学びプロジェクト委員会
代表者:香山真一 所在地:岡山県 
助成年度:2014年度 教育活動助成
  • 探究学習発表会でのポスターセッション
  • 小学校での『論語』出前授業 本校生徒が先生役でグループ学習

研究・実践活動のねらいと期待する効果

1ねらい
『論語』に見られる、教師と学習者双方向の談論風発、学習者の主体的・協働的な学びを実現する。

2期待した成果
①高校生の主体的・協働的な学び機会を増やすことによって、学びを我が事とする意識が高まり、自己指導力が伸長し、地域・社会の形成者としての当事者意識が強まる。
②和気閑谷高校の源流である閑谷学校の主要なテキストであった『論語』を学習課題として介して、小中高の異年齢で学び合い、責任を持つことによって個の自立心を育む。

研究・実践活動の内容と方法

⑴授業改善
平成26年度は「どの子も分かろうとする授業(単元)」をテーマに、略して「どのわか」授業研を年4回(6/3家庭総合、9/24関数研究、11/25国語総合、1/13社会福祉基礎)実施した。公開授業と研究協議のセットでの研修会である。
「どのわか」授業研の評価基準(達成目標)は、以下のとおりである。
①授業の目標を毎時間生徒にわかりやすく示している。
②授業の手順を毎時間生徒にわかりやすく示している。
③学習の「ふりかえり」を生徒自身に行わせている。
④授業でICTを活用している。
⑤授業でアクティブラーニング(グループ学習など生徒の主体的な活動を取り入れた学習)を取り入れている。

⑵総合的な学習の時間のPBL
個の探究心を引き出すには、学ぶ値打ちのある課題と、課題解決学習(PBL)が効果的である。
そして、地域・社会の形成者としての当事者意識を育むには、総合的な学習の時間(校内名称「閑谷學」)にPBLを導入し、地域の課題に取り組むという体験が効果的である。体験やフィールドワークを通して自分の周辺にある課題に気付き、その改善策を提案する経験を通して、個の自立心や探究心及び地域・社会の形成者としての当事者意識を育むこととした。
企画担当として地元の和気町の支援職員が職員室に常駐して、地域の教育資源を掘り起こし、10の大テーマのもと23のプロジェクト学習を編み、7月下旬に高校1・2生を異年齢班別行動に誘った。
10の大テーマは、①和気の自然環境、②町内のインターナショナル、③和気で育てる、助ける、④スポーツを通した学び、⑤伝統・文化から学ぶ、⑥和気の歴史・謎に迫る、⑦バーチャル公務員になる、⑧和気で「生きる」を考える、⑨和気を元気にする、⑩和気町をブランディング、である。
たとえば、①では、岡山県自然保護センターと鳥取大学附属フィールドサイエンスセンターとの協働によって他の地域との比較を通して和気の植生の特徴を可視化するプロジェクトを用意した。⑤には、老いを演劇で考える、あるいは地元の作家と備前焼の特徴を考える、また「冠句」という伝統文化の継承を考える等々、5つのプロジェクトが立ち上げた。
その発表会は、別紙案内文書のとおり、3/5に本校体育館で開催した。20を超える課題別のグループごとに、課題、プロセス、根拠、まとめ、といった探究的な様式を意識したプレゼンテーションやポスターセッションを実施した。

⑶『論語』を学習課題として介した学び合い
和気閑谷高校では、『論語』を生き方の鑑として活用している。独自のスケジュール帳である『論語手帳』の週毎の頁に掲げられている論語の章句を朝のSHRで朗誦することから一日が始まり、全校集会の度に独自のテキストである『論語百章』を用いて朗誦する。
そこで、本校の生徒が、近隣の小中学校に出前授業に出かけ、『論語』を学習課題として介して学び合うことによって、『論語』を身近に感じる機会を創り出したいと考えた。
出前授業を実施した小中学校は、和気中、本荘小、藤野小、和気小の1中3小学校である。結果、関係した本校生徒にも授業を受けた小中学生にも大きな変容が見られた。

得られた成果及び評価

1アンケート結果に見られる結果
⑴授業改善
①授業の目標を毎時間生徒にわかりやすく示している→86%の教員が毎時間明示
②授業の手順を毎時間生徒にわかりやすく示している→36%の教員が実施
③学習の「ふりかえり」を生徒自身に行わせている→56%の教員が実施
④授業でICTを活用している→67%の教員が実施
⑤授業でアクティブラーニングを取り入れている→77%の教員が取り組んだ
⑵総合的な学習の時間のPBL
全校生徒に対するアンケートの、「学校では、地域の施設を利用したり校外の講師から学ぶ機会があり学習がより深まっている」という項目では、肯定的回答がH25の76%からH26は81%へと増えており、確かな手応えがあった。
⑶『論語』を学習課題として介した学び合い
これは、インタビューによる質的調査であったが、小中学校に出前授業に行った生徒たちは、口々に大きな達成感を興奮気味に話してくれた。最初は『論語』の学習を受け身でとらえていた者も小中学生に教えるという体験の中で、自分が教える、あるいは互いに学び合うことによって、子どもたちの目が輝く貴重な瞬間に立ち会うことで、自己効力感を確実に増して自信をつけることができた。

2マイナスの評価
⑴〜⑶の実践は緒に就いたばかりなので、継続性が課題である。

残された課題とその解決への展望

⑴〜⑶の三位一体の実践は、着実に前進している。
⑴については、平成27年度は、毎日の授業のなかで生徒の人間力を高めることを目標に、「学習目標」「生徒の省察(振り返り)機会」の充実と深化をさせるべく、「どの子も自分ののび(伸び)を実感できる授業(単元)」の研究(略称、「どののび」)をスタートさせる。
⑵については、H26に地域課題を採り上げ過ぎて運営がたいへんだったことから、課題数は半分に絞り込んで質の充実と深化をさせていくこと、高校一年生については学び方を学ばせるプログラムを最初に取り組ませること等、改善を図った。
⑶については、H26の成果として『声に出して読みたい論語百章』を刊行したので、これをテキストとして近隣の小中学生や地元住民の方々との学び合いの機会を一層増やしていくつもりである。

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