絵本の読み聞かせ活動による中学生の情操教育と地域と学校、行政の連携の在り方
代表者:谷原和子 所在地:瀬戸内市 助成年度:2014年度 教育活動助成
研究・実践活動のねらいと期待する効果
1ねらい
学校支援ボランティアの一環として、朝読書の時間に絵本の読み聞かせを始めて2年余り、中学生を対象として絵本を読むという極めて例の少ない取り組みを暗中模索の中、試みてきた。果たして中学生に絵本が受け入れられるのか、良好なコミュニケーションを築き、情操教育に結びつけることができるのか。
これらの成果を得るために、中学生との交流の場を設け、地域住民と中学生の絆をより深め、中学生の大人への信頼を獲得する。また、地域住民の学校への関心度を高め、問題解決のための地域力を醸成し、子どもたちの健全育成の一翼を担うとともに、この活動を通して、市内小中学校の横断的なネットワークをつくり、多くの人が関わることで地域力、学力ともに高めていけるような活動として定着させる。
2期待した成果
- 読書ボランティア「ゆめ読」メンバーと中学生の良好なコミュニケーションの構築。
- 市内の他校で同じボランティアに関わる人たちとのネットワークの構築。
- 中学生の精神的成長。
- 地域住民の中学校への関心度の高揚。
- 地域、学校、行政との連携を深める。
研究・実践活動の内容と方法
1ビブリオバトルの開催
日時:平成26年12月24日
会場:瀬戸内市中央公民館研修室
12月のビブリオバトル(知的書評合戦)を開くにあたり、中学生とゆめ読メンバーは何度も打ち合わせを重ね、準備を進めた。12月の本番の予行演習として、夏休み中に市内保育園3か所で園児を対象に中学生が読み聞かせを行い、園児に気に入った絵本を選んでもらうというミニビブリオバトルを実施した。進め方、司会等、中学生が主体的に取り組み、当日は校長、教頭、図書館長、市長など行政関係の主だった方たちにも参観してもらうことができた。
12月の本戦に向けては司会シナリオの作成、会場設営や新聞、公民館便り等のメディアへ向けての広報活動、出場者募集、観戦者募集の働きかけ等、ビブリオバトル開催に係るほとんどを中学生が実行した。当日は邑久中学校のみならず、市内他校からの出場者、観戦者に加えて、一般市民からも出場の応募があり、中学生の進行で予選からなごやかな雰囲気で進めることができた。終わりに図書館長からの講評もあり、参加者の自信につながった。
2絵本フェスタの開催
日時:平成27年3月27日(金)14:00〜16:00
会場:瀬戸内市中央公民館研修室
講師:市居みか氏(絵本作家)
演題:「絵本ってなんだろう?」
この催しについても、演題看板作成、司会、会場設営等に加え、講師接待、託児といった細かい役割を中学生が主体的に分担し、確実に実施することができた。
得られた成果及び評価
1ゆめ読メンバーと中学生とのコミュニケーション
ビブリオバトル開催に向けて、何回もの打ち合わせを通して、十分なコミュニケーションが図れたと思う。普段の朝読書だけでは図れない意思疎通や連携が一つのイベントを計画・実行していく中で密になり、交流回数も増えたことは大きな成果につながったと思う。
2中学生の精神的成長
今回の取り組みの中で最も大きく成果が上がった項目である。当初は全く予期しなかった中学生の積極的な活動には驚くばかりだった。授業や部活、校内活動で忙しい中、今回の二つのイベントを私たちボランティアの出る幕がないほど、すべての役割をこなしてくれた。そして、何よりもビブリオバトル参戦でのプレゼンで、人前で発表することにより「自信」をつけてくれたことは私たちにとっても大きな喜びの一つとなった。
3全市的ネットワークの構築
今回、邑久中学校で取り組んだビブリオバトルに参加してくれた他中学校でもビブリオバトルを実施したいとのこと。一緒に何かをするというまでには至っていないが、この実践が市内他校に波及し、中学生がやってみたいとの意欲を示したことは一つの成果であったと思う。
4地域、学校、行政との連携
月に一回の読み聞かせ活動に市長に参加してもらったり、交流会に教育長の講話をお願いしたりと、行政役職との連携にも努めてきたが、今回、保育園でのミニビブリオバトルには市長、図書館長、学校長などが参観してくださり、中学生の頼もしい姿を見てもらうことができ、また読書ボランティアの活動にも理解を深めてもらうことができ、今後の活動支援につながったと思う。
残された課題とその解決への展望
中学生と一緒に一つの事業をやっていくという今回の試みの中で想定外であったのは、中学生の忙しさだった。学業、部活に加え、さまざまな学校行事をこなしながらの校外活動は大変だったろうと思うが、そのような中でも意欲的に取り組み、読書ボランティアがたじたじとするほどの活躍で、十分な成果を残してくれたと思う。もうひとつの予期しなかったことは「中学生のやる気」である。担当してくれた司書教諭も困惑するほど今回、中学生たちは活躍した。私たちも正直そこまでやってくれるとは思っていなかったこともあり、戸惑いの連続だった。しかし、中学生に任せてみようとの思いで見守った結果、どのイベントも彼らの実行力に助けられた。チラシづくり、看板作り、呼び掛け、会場づくり、進行とどれをとっても素晴らしい出来栄えだった。
今年度の取り組みをきっかけとして、次年度もビブリオバトル等のイベントは残して、恒例の活動として実行していくことでメンバーの同意を得た。今後は中学生、ボランティアともにより多くのメンバーが関われるように持っていくことも必要だろう。瀬戸内市では平成28年の5月ごろまでに待望の新図書館がオープンする予定になっている。朝読書の読み聞かせを発端とした今回の活動を通して得た自信と実行力を新たな場所で、社会的マンパワーとして発揮できるような働きかけとシステムづくりを課題として活動を続けていきたい。