英語ディベートを軸とした実践的英語力育成

団体名:清心女子高等学校
代表者:問田雅美 所在地:倉敷市 
助成年度:2013年度 教育活動助成
  • 作成したテキストBook 1表紙
  • 作成したテキストBook 1のChapter1 Lesson 4

研究・実践活動のねらいと期待する効果

1ねらい
将来、科学分野に進学すると、研究室のゼミや、学会のポスター発表など、人前で自分の考えや研究を発表する機会が多い。英語で発表を求められることもある。英語ディベートを通して身につける、情報収集をもとに自分の意見を論理的に相手に伝える力や、相手の意見に的確に応答する力こそが、科学分野の国際的な人材に求められる英語力である。また、英語ディベートに先立つ活動としてのライティングも論理的な英文作成力の基礎となり、将来の英語論文作成の糧となるはずである。
そこで、語学としての英語だけでなく、科学を学ぶツールとしての英語を身につけさせる、という目的で生命科学コースに設定されている学校設定科目「実践英語」では、英語ディベートへの取り組みを軸として、段階的に実践的な英語力をつけることをねらいとする。

2期待する成果
過去4年間の英語ディベートへの試行錯誤の取り組みから、ある程度効果的な指導法や教材が蓄積されてきた。3学年を同時進行で指導するため、複数の教員が担当せざるを得ないが、どの学年を誰が担当しても一定の指導が行えるよう、学年(段階)ごとの教科書(テキスト)を作成したい。基礎となる事項をまとめた本体部分(今回の作成テキスト)にディベートのテーマに沿った資料集を加えた形を想定している。生命科学コースでは、生命科学分野の時事的なテーマを扱うことが予想されるため、資料集もそのような内容になる。今年度は、高等学校1年生のテキストを作成する。

研究・実践活動の内容と方法

1平成25年度清心女子高等学校1年生作成テキスト使用授業
生命科学コース20人、週1回
文理コース選抜クラス21人、週1回

2第5回SSH科学英語研究会
日時:平成25年6月23日(日)13:00〜16:00
場所:清心中学校・清心女子高等学校
内容:公開授業①NELPディベート、公開授業②生命科学コースディベート授業、研究協議
対象:英語教育関係者、SSH関係者、一般希望者
参加者:67名

得られた成果及び評価

今回作成したテキストは、時間的及び経済的な制約のため、1年間の授業の前半部分にあたるBook1となった。今回のテキスト作成の目標は、ディベートの基礎として、生徒に英語でのアカデミックライティングを紹介し、また倫理的な判断を求め、自分たちの書いたものをお互いに分かち合い、ともに議論しあうことであった。最近まで、高校生は発展的かつ段階的なライティングの指導を十分に受けていたとは言い難く、これは、今後の高等教育、特に理系に進学する生徒にとっては大きな問題となると考えたからである。
「実践英語」の授業において、今年度の生徒たちは、テキストのなかった時期の生徒たちと比べると、いつ何をどのように学習するのかが明確であった。しかし、実際に作成したテキストを使用したところ、トピックのバランスをはじめ、いくつもの改善点が見つかった。

残された課題とその解決への展望

今後の課題は、今回前半部分のみとなってしまったテキストと、その後に使用した後半部分の教材に、使用してみて改善が必要と感じられた部分を盛り込んだ、改訂版テキストを完成させることである。今回作成したテキストを土台とした改訂版テキストを全体のプロトタイプとして、それをさらに改良することにより、本校用のテキストに留まらず、ディベートの基礎学習を網羅した高校生用のテキストを完成させたい。十分検討を重ねたうえで書籍化できれば、ディベートを取り入れた活動を行いたいと考えている高等学校の先生方にも役に立つものとなると期待できる。早い段階での完成を目指したいと考えている。
また、基礎学習ののちに取り組む、生命をテーマとしたディベートに備えての資料集も、年次ごとに実施内容や生徒の発表内容を冊子化し、今後の資料として活用できる形にしていきたい。
本研究は、英語ディベートを軸とした実践的英語力育成を目指すものである。しかし、今年度は英語ディベートを目指して段階的なライティングやスピーキングなど様々な活動を取り入れたものの、英語ディベートの基礎を固めることで終わってしまった。高等学校3学年全体としては、1年生でディベート基礎、2年生でディベート実践、3年生で発展的プレゼンテーションという流れで「実践英語」全体の計画をしているが、今回の研究では、結果として1年生の基礎の部分にのみ主たるフォーカスを当ててしまったことが悔やまれる。今後、もう少し大きな視点で全体計画を策定できればと考えている。

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