学びあう子どもを育てる授業づくり

団体名:津山市立加茂小学校 授業づくり研究会
代表者:後河 肇 所在地:真庭市 
助成年度:2013年度 教育活動助成

研究・実践活動のねらいと期待する効果

1ねらい
①子どもたちに「学ぶ力」の基礎を培い、友達とのつながりの中で生きることの喜びを実感させる。
②課題解決学習に核を据えた授業改善

2期待した成果
①数値的な学力の向上
②学習意欲の喚起
③家庭学習の充実
④児童の学校への帰属意識の高揚
⑤児童の自主、自発的活動の充実

研究・実践活動の内容と方法

①先進校視察
平成25年9月28日(土)岡山県倉敷市立琴浦南小学校研究会への参加
ア参加者数4名
イ視察内容
・授業参観
・講演:講師佐藤学
・研究協議の参観

②校内公開授業
ア回数:5回(含:公開研究会)
イ事前の教案検討会8回

③外部講師の招聘と理論指導
ア岡山大学教育学部佐藤暁教授
7月13日(土)打ち合わせ会:参加者2名
8月27日(火)校内研修授業案検討への助言
10月7日(月)公開研究会指導助言
イ臨床発達心理士村中哲央氏
8月30日(金)校内研修会子ども理解のためのケース会

④公開研究会の開催
10月7日(月)
公開授業5年1組算数科「分数の大きさ比べ」
研究協議外部参加者5名

得られた成果及び評価

授業研究は「算数科」を中心に行った。これまでの本校での算数の授業では、問題の答えがわかることやそれを発表することが算数の学習だと児童は捉える傾向があった。それを転換することが算数科での中心的な課題と捉えた。同時に授業づくりの観点からは、児童が一人で考えるだけでなく、複数で考える場面(ペア学習・グループ学習)を取り入れ、児童同士がかかわりを持つことを大切にすることを課題とした。
次に佐藤先生から助言をいただいた、児童に示す課題の重要性を重視した。児童にとって「学ぶ価値のある課題」を提供できるかどうかでその授業の成否の大半が決まるといってよい。「学ぶ価値のある課題」とは、児童が「学びたい」「学んでみたい」「わかりたい」と感じる課題である。学習意欲を喚起する課題の提示ができることが授業づくりの中心になる。そのためには教材研究、教材解釈に重点を置くことが大切になる。ある意味、算数科では課題はわかりやすいだけに、児童の興味が持てるものに置き換えて提示する研究ができた。
授業展開でよくみられる形態は、対教師型である。児童は指導者である教師に向かって話し、答える傾向が強い。例えば、数人のよく発表する児童がいれば、表面的には「活発」に活動し、「意欲的」に学習しているように見える。しかし、児童の多くは「任せている」のであり、主体的に学習しているとは言い難い。すべての児童が自分のできる形(例えばホワイトボードの活用など)で参加が可能な授業を作ることが重要であり、それが学力の向上につながるという仮説で研究を進めた。
研究を進める中でモデルとなる授業を実際に見ることが近道になると考え、琴浦南小学校の研究会への参加を決めた。「学びあい」を研究してきた実績があることで本会の研究に参考になると考えたからである。
実際に見てみると、児童の机の配置、指導者のポジショニングなど見た目だけでも違いを感じることができた。また、児童は主体的に活動し、投げかけられた課題に対して自然に周囲と相談したり、尋ねたりする光景が当たり前のように展開された。すべての児童が授業に参加していること、友達の意見や話をよく聞き、学習を通して児童同士がつながっていることなどが見て取れた。安心してくらしができる学級ができあがっていることが学習活動を充実していることになっているのである。
また、授業後の協議会の持ち方も非常に参考になった。簡単に言えば授業の中の指導者の言動を取り上げるのではなく、ある場面での児童の様子や言動からその児童の学びを読み取る協議会の運営になっていた。「学び」をテーマにするのであれば、こうした協議会形式を取り入れていくことの重要性を確認した。
そして、10月に校外に向けても本会の研究を公開する目的で「公開授業研究会」を開催した。時期的に多くの研究会が開催される頃であり、自主公開であったため、外部からの参加は少なかったが、これまでにない、児童の学びを核にした協議会を持つことができたのは大きな成果であった。
数値的には、最も研究テーマに近い実践ができた学年では算数Aについて県が実施した「確かめテスト」とH26全国学力状況調査を比較すると、平均で約1.2ポイント上がっている。単純に比較できるものではないが、一つの示唆は与えていると思われる。

残された課題とその解決への展望

本会が目指す授業が達成できたわけではない。特に10月の公開研究会以降、複数の学級で指導困難な状態となり、日々の対応に追われることが増え、研究を進めることが非常に困難な状況となった。
そうした状況となったことの検証が十分にできていないが、明確なことがいくつかある。
その一つは、授業で示される課題が児童に適していないことであり、さらに対教師の授業展開がなされていることである。児童にとってわかりづらい授業、参加できない授業が続くことは学級の「荒れ」の一因になる。研究の成果が授業で確実に実践されていなかったことが大変残念な結果を招いた。
そして、教室がすべての児童が安心して、くらすことができる安定感ができあがっていなかったことである。その根本には教師と児童との間に基本的な信頼関係が築けていなかったことがある。どんなに研究を充実させてもこの部分が構築できていないと何も形を成すことができない。夏季休業中に臨床発達心理士を招いて研修をしたのも基本的な部分での問題を解決するためであったと言える。
掲げたテーマや研究方向、内容を十分に深化できない一年間であったが、児童とのよりよい関係性を築くことを大前提に今後も児童全員が参加する学びあいのある授業づくりに向けての研究を進めていきたい。

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