宇野港芸術映画座/Uno Port Art Films(UPAF)

団体名:宇野港芸術映画座/Uno Port Art Films(UPAF)
代表者:上杉幸三マックス・タハラレイコ 所在地:玉野市 設立年:2009年 メンバー数:25名
助成年度:2012年度 文化活動助成(3ヵ年助成)
  • 7mx4mの巨大スクリーンを自家制作 スタッフ総出で張り合わせた
  • 昨年を上回る観客動員。岡山・倉敷・香川からの人が多く見受けられた。 神戸や東京からも来てくれたお客さんもいた
  • 字幕の読めない幼い子ども達のために「生吹き替え」上映したイラン映画の名作『太陽は僕の瞳』
  • 恒例となったスカイプ国際Q&Aも好評 映画ファンからの鋭い質問が飛んだ

ターゲット・対象者

地元玉野市民、直島・豊島アート観光に訪れる国内外からの観光客、中四国近県や関西、関東の都市部からの映画愛好者

目的

お金儲けではなくアートとして映画を創り、それを通して人生を見つめようとした制作者たちの映像作品を海外/国内、古今東西から紹介し、商業映画以外あまり映画を観る機会のない地方の人々と、直島・瀬戸内アート観光に来る旅行者らが共に楽しめる映像芸術鑑賞の場を設け、地元・観光客両方のための国境のない新文化を岡山に産み出す。

手段

毎年夏に4日間〜7日間、朝昼晩の上映シリーズを行う。
日中は玉野市産業振興ビルで、夜は元JR宇野駅構内の現在空地になっている埠頭で、瀬戸内海を眺めながらトレーラー上に張られた大型スクリーンで野外上映を楽しむ。

1年次

2010年8月2日〜8日(7日間の開催)5カ国から27作品10プログラムを上映。
サブテーマは1)瀬戸内エイガ!、2)世界のアート映画秀作品、3)アメリカ−若者の声。
ヨーロッパで高い評価を得ているレバノンの映像作家アクラム・ザアタリの作品、自分の母親が故意的に忘れ去ろうとしたアメリカ日系人収容所での記憶の映像化を試みたリア・タジリ(米)の『歴史と追憶』、セルビア生まれのインディー・ドキュ界の新星イヴァナ・トドロビッチの作品2本、本田孝義監督の岡山のニュータウンと自分の家族の歴史を照らし合わせたパーソナル・ドキュメンタリー、手描きアニメのローリー・ハイリス(米)のアニメーション映画、世界に認められている赤磐のアニメーター中村智道監督の作品などを上映。またアドビ財団ニューヨーク支部の協力を得て、ニューヨークのマイノリティの子供達(中高校生)が作った作品を上映。

2年次

2011年8月5−7日&12−14日の2週末、13カ国から37作品14プログラムを上映。
上映作品中6割が日本初公開、8割が日本語/英語字幕を新たに自分達で制作しての上映。
震災の年だったため、急遽「核とわたしたち」シリーズを設け、上映+話し合いの場を作ろうと企画した。フィンランドの核廃棄物処理施設を扱った話題作『100,000年後の安全』、被爆体験を持たない世代がどう被爆の経験を引き継いでいくかを問う『ヒバクシャとボクの旅』、故田中好子初主演と放射能汚染で再注目された日本の名画『黒い雨』、アメリカで最初の反核映画『広島・長崎1945年8月』(1970)などを集めた。活発な論議がなされ、上映後のデョスカッションが2時間半も続いた日もあった。「映画の力」セクションでは、震災後の状況で子ども達に夢と希望を与えようと、1950年代の仏名画『赤い風船』を字幕の読めないちびっ子たちのために生吹き替え上映。その他愛媛出身の女性監督、小野さやかが自らの家庭内性暴力やネグレクトを掘り下げたドキュメンタリーなどの長編力作等上映。

3年次

2012年8月11−14日の4日間、12カ国から28作品9プログラムを上映。新たにハワイ国際映画祭及びニューヨークのヴィルチェック財団の協力を得て、外国から米に移民した監督たちが作った秀作数本上映した。またイランの巨匠(アカデミー賞ノミネート、モントリオール映画祭グランプリ多数)マジッド・マジディ監督との直接交渉により、子ども達に永遠の名作『太陽は、ぼくの瞳』(日本ではDVD未発売)を提供してもらえ、前回好評だった「生吹き替え」で上映。その他、日本インディー映画界の鬼才、土屋豊監督の未公開新作『GFPBunny』、アフガニスタンのカブールの子ども達のためにスケボー施設/教室を立ち上げる軌跡を綴った『スケーティスタン』等。アドビ財団の協力で世界の中の高校生作品を上映するユースプログラムも3年目を迎え、新たに米で起こった人種差別事件に影響を受けた高校生が作ったミュージックビデオなどが上映され、スカイプQ&Aでは地元玉野の高校生とニューヨークの現地制作者らが意見を交換できた。

3年間の事業内容の傾向

宇野港芸術映画座は元々、ニューヨーク生活20年、自らもアート映画の製作を続けるユニット、上杉幸三マックス(宇野出身、現在玉野市在住)とタハラレイコ(東京出身、ニューヨーク在住)が、上杉の故郷である玉野・宇野港への思いと瀬戸内の現代美術性、それにNYを介して届く世界中の映画/映像芸術の世界を融合させて繰り広げる夏の芸術映画上映イベントとして発足させた。毎回を貫くテーマを「Life,Art,Film(生きる・創る・映画)」とし、作り手や被写体の生き様を映す力強いアート映画作品を古今東西から集め、他では得られない芸術映画視聴体験を、宇野港周辺の野外上映や特設会場にて提供する。チラシから上映まで完全日英バイリンガルイベント。これらの主旨/傾向は変わっていない。

3年間の観客・参加者等の傾向

スタッフ不足から宣伝まで十分に手が回らなかった2009年の第1回目からすると年を追う毎に徐々に観客数も増えてきた。2012年の第3回目ではコンスタントにそれぞれのプログラムに人が集まってくるようになった。同年は毎プログラム平均で約40人~50人の集客があった。中でも神戸や大阪、東京からのお客さんや、昨年のオーストラリア人やアメリカ人に続き、直島観光帰りのフランス人客等、国際色も出て来て、だんだん理想の姿に近づいてきた。

今後の展開・予定

資金集めが毎年の課題だが、今後はNPO法人化(平成25年3月現在申請中)に伴い、助成金申請の枠を広げて行くと同時に、地元系の企業スポンサーに働きかけ、安定継続した運営費の調達を目指す。今後も地道に続けていくことで宇野港で行われる異色の国際イベントとして、末永く地元の人々や観光客に楽しんでもらえるように努力したい。

3年間の事業

当初は地方では実現しにくい国際的な質と内容を誇れる映画祭として一部のアート映画好きの人々に歓迎された一方で、商業的でないことが、逆に取っつきにくさや難解な印象を地元の人々に与えた感はあった。ただ、それも回を重ねる毎に懐かしい国鉄跡地での珍しい野外上映ということが人々の興味をそそり、だんだんと足を運んでいただけるようになったと思う。町中でもユニークなデザインのスタッフTシャツやポスターなどで3年目になると「いつ?どこでやってるの?」と声をかけられることも多くなった。現在玉野市では「うのずくりアーティスト移住計画」が推進されているが、私たちも微力ながら、新しい宇野の魅力の一片となれていると思う。他にも行政からは備品提供、後援など毎年理解と協力を得ている。宇野港土地、商船三井フェリー社からの毎年の協力は欠かすことができない。

活動の周知方法

−山陽新聞記事、タウン情報岡山等の雑誌。
−玉野市、岡山市、倉敷市、高松市、直島町等、100カ所以上のカフェ、雑貨、コンビニ等でのポスター掲示。毎年平均5〜6000部のチラシ配布。
−RSK山陽放送(TV・ラジオ)、RNC西日本放送,KCT倉敷CATV、等の情報番組で取り上げていただいた。
−HP、FB、Twitter他SNS等のインターネットでの展開。

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