岡山原田芳雄映画祭(原田芳雄作品8本の上映とゲストトークショー)の開催
代表者:吉富真一 所在地:岡山市 設立年:2011年 メンバー数:10名 助成年度:2012年度 文化活動助成
目的
2011年7月に71歳で130本以上の映画作品を残して亡くなった俳優・原田芳雄。生前は夫人の実家がある岡山に帰省し、子どもたちと近所を散歩したり海水浴を楽しむなど、「岡山を第二の故郷」と公言する俳優・原田芳雄。彼の死を悼み、代表作を上映するとともに、映画俳優・原田芳雄とはどういう役者だったのか、役者として人間としての魅力は何だったのかを、岡山との関わりにおいて、その魅力を探り、広く紹介する。
経過
平成24年7月28日、29日に岡山天神山プラザホールにて原田芳雄出演作品「火の魚」「反逆のメロディー」「父と暮せば」「新世界」「どついたるねん」「寝盗られ宗介」「竜馬暗殺」「大鹿村騒動記」を上映。併せて原田芳雄と関係の深いゲスト8名(俳優・石橋蓮司、俳優・大楠道代、俳優・佐野史郎、脚本家・荒井晴彦、監督・林海象、監督・黒崎博、映画評論家・寺脇研、原田芳雄の娘であり俳優・原田麻由)のトークショーを開催。
成果
上映作品、ゲストのトークから、既存のスター俳優を超えた不世出の俳優として、人間としての原田芳雄の魅力、実力を再認識することができた。来場者800名。以下その一部を披露させていただく。
「陽炎座」「大鹿村騒動記」で共演した大楠道代さんは、「芳雄さんはいつも現場に入る前に『打ち入り式』といって関係者を招いて食事会を開いてくれるんです。これは製作前の下ごしらえみたいなもので、これに参加すると現場がとてもスムーズなの。またみんなで芳雄さんちを居酒屋扱いしていたな。」という興味深いエピソードを披露。
「竜馬暗殺」共演以来数々の共演をし、40年間の親交があった石橋蓮司さんは「芳雄は喧騒の中に身を置くことが好きだった。そこから何かを見つけ出す嗅覚を持っていた。オレは人と距離を置いて観察するタイプ。オレにとっては最大の他者。あいつはオレにとって女房みたいなもの。あいつもオレのこと女房みたいに感じていたんじゃないかな。オレ自身、芳雄がいなくなった実感がない。みなさんが映画を見続ける限り、芳雄はスクリーンに生き続ける。そうやってずっと芳雄の映画を見続けていってもらいたい。」という感動的なコメント。
娘の原田麻由さんは「芳雄は、生活の中に仕事のことがダダもれだったので、仕事とプライベートの境界線がまったくなかったんです。父を中心にいつも周りにいろんな人がいる環境でした。家族だけで食事していると逆にぎこちなかったです。」という家庭での一面を披露。
ファンからの松田優作さんと原田さんの関係についての質問に石橋蓮司さんが「優作は本当に、芳雄を慕っていたよ。ファッションから家までマネしていた。でも唯一、芳雄が優作から学んだものは、バーボンの飲み方だけ。」という嬉しいエピソードを披露。
今後このような豪華ゲストによるトークは実現不可能だと思われるし、終わってしまうのが惜しいほどの充実したものになったと自負している。
素材の関係で、初日はデジタル上映、2日目は35ミリフィルムの上映となった。突然の映画フィルム消滅の危機の報道を受けて、今回の「寝盗られ宗介」「竜馬暗殺」「大鹿村騒動記」のフィルム上映は偶然にも意義あるものになった。当初は観客席に設置した映写機音にクレームがつくのではと心配されたが、逆に「映写機の音が聞けて良かった」という観客もいたほどだった。
余談として、1日目上映の「火の魚」は当初上映予定はなかったが、黒崎博監督が岡山出身ということもあり、ぜひこの映画祭で上映してほしいという要望があり、急きょラインナップに加えた。NHKドラマとして製作されたこの作品は、広島に次いで全国で2番目という幸運な上映となった。
祭り好きな原田芳雄さんの一周忌にふさわしく、関係者とファンが一体となった熱気に包まれた、真夏の忘れられない2日間となった。
今後の課題と問題点
今回のイベント開催によって、原田芳雄と岡山との関係をより深く知ることができた。今後は130本以上ある彼の映画作品を見続けることによって、さらに俳優・原田芳雄の魅力を探り、検証する必要がある。