アメリカで活躍した日本人画家・犬飼恭平の自伝と年譜を出版
代表者:森 容子 所在地:倉敷市 設立年:2011年 メンバー数:4名 助成年度:2012年度 文化活動助成
目的
20世紀の前半、単身米国に渡り絵画を学び、アメリカ人社会の中で成功をおさめた肖像画家・犬飼恭平。日本ではほとんどといっていいほど知られていない犬飼恭平の作品の掘り起こしと、彼が書き残した自伝の刊行を目指す。
また、岡山県をはじめ国内での作品の発表の機会をつくる。
経過
1985年5月、米国ニューヨーク在住のジョン・デイヴィー、美代子・デイヴィー夫妻は、オークション会場で1枚の絵と出合う。画家の名前は犬飼恭平。日本人画家であること以外、何の手がかりもなかった。
その絵にひかれたデイヴィー夫妻は、犬飼の作品を探し、コレクションに加える一方、犬飼に関するさまざまな資料を収集した。
犬飼本人の手による自伝、手紙類などをはじめ、遺族に残された作品など、夫妻は集めた資料をもとに年譜を作成。こうして集められた原稿が、犬飼恭平の親戚にあたる倉敷在住の森容子に託され、犬飼の生まれ故郷・岡山の吉備人出版から、平成25年5月、その評伝が刊行された。それが『肖像画家犬飼恭平-ある異教徒の告白』である。
成果
犬飼恭平は、1888(明治19)年倉敷市山地に生まれた。12、13歳のころには画家になることを志した犬飼恭平は、1900(明治33)年、14歳で親戚と一緒にハワイに渡り、働きながらシカゴの美術学校などで本格的に絵を学び、アメリカ社会で画家として成功をおさめる。
しかし、渡米後は一度も帰国することなく、日本ではその存在や活躍を知る人はほとんどいなかった。偶然、ニューヨーク在住の日本人コレクターであるデイヴィー夫妻の目にとまり、その作品に魅了された夫妻によって、いくつかの作品と自伝がみつかった。
華やかなアメリカ上流社会で生き、数多くの作品を生み出しながら、これまでほとんど知られなかった犬飼恭平の作品とその人生が、デイヴィー夫妻の25年の歳月をかけてまとめられた本書により明らかになったのである。
本書には、恭平の作品と詳細な年譜、そして自らの手による自伝「ある異教徒の告白」を収録している。本書の刊行により、アメリカ、日本両国で犬飼恭平のことが話題になり、所蔵者のあいだで眠ったままになっている犬飼の作品の存在が明らかになることが期待できる。
また、本書の編集の過程で、犬飼作品の画像データ化を行い、今後作品展などの図録作成などでの活用に役立てることが可能になった。
今後の課題と問題点
デイヴィー美代子・編著による『肖像画家犬飼恭平-ある異教徒の告白』の日本版刊行に続いて、同書の英語版が近くアメリカの出版社より刊行される予定。この日米での本書の刊行により、犬飼恭平が書き残した作品の所在がいくらかは明らかになるであろう。ただ、肖像画家という性格上、作品は個人の依頼主に預けられていることが多い。今後は、アメリカにおけるこうした作品の再調査を含め、その所在を明らかにしたい。