ESD教育に資する教育プログラムの開発 〜「就実・森の学校」での里山づくりを通して〜

団体名:「就実・森の学校」の利用をすすめる会
代表者:石田省三 所在地:岡山県 
助成年度:2012年度 教育活動助成
  • 就実・森の学校(笠井山を望む)
  • (写真1)里山サミットの新聞報道
  • (写真2)竹林の整備に汗を流す
  • (写真3)「高校生による干したけのこ料理レシピ集Ⅰ」

研究の目的

里山の荒廃が憂慮されるようになって久しい。本研究は就実学園が所有する山林を「就実・森の学校」として生徒・学生と共に整備し、幼稚園から中学・高校、また短大・大学、さらに地域社会の方々にも対応するESD(持続可能な社会のための教育)教育プログラムを開発することを目的とするものである。
就実学園は昭和46年から岡山市中区今谷地区(操山山塊東端)に山林を所有しているが、その後の管理が不十分で荒廃し、手が付けられない状態となっていた。平成22年秋から、過去の資料の検証や現地調査を行った結果、従来の雑木林中心の里山に竹林の侵入が著しくすすんではいるものの、予想以上に豊かな植生が残っていること、また敷地内に7世紀後半の古墳が8基あることもわかった(その後の調査で20基と確認)。この恵まれた自然や文化遺産を生きた教材として利用出来ないかと考え、里山の再生活動を実施しながら、ESD教育(持続可能な社会のための教育)に役立つ教育プログラムの開発に着手した。

研究の経過

24年度は教育プログラム開発のために以下の行事を実施した。(平成24年4月〜平成25年4月)
(行事PDF参照)

24年度の重点活動について
(1)里山サミットの開催(写真1)
平成24年10月27日、操山里山サミットを開催した。操山山塊をフィールドとして里山保全活動をしている7団体が参加し、それぞれの活動報告をした。富山エコクラブは、裏山から採集したドングリから苗木を育て、植林する活動を報告。岡大附属中からは(EarthRiseProject)「岡山の森を学ぶ」の報告があった。サミットの最後には『わたしたちは操山から多くの恵みを受けてきました。しかし時代の変化と共に里山本来の良さが失われようとしています。わたしたちは今こそ互いにつどい、新たな里山づくりを目ざすことを誓います』とする里山宣言を採択し閉幕した。その後、各地域は互いに連絡を取りながら活動している。

(2)竹林整備および竹の利用研究について(写真2)
森の学校の約8割は孟宗竹で覆われ、人も入れない状況になっている。この竹林の整備を通して生徒、学生に里山の再生を考えさせるプログラムを実施している。グリーンボランティアとして年間3〜4回実施。100名程度が参加しており毎回増加の傾向を示しており関心の高さがうかがえる。
竹は里山を荒れさせる原因になっているが、その一方で1年で10m以上伸びることから、持続可能な資源としての側面も持っている。この利用を考えることはESD活動を進める上できわめて大切なことである。森の学校では協力者である『竹に学ぶ会』と共に、次のような竹の利用研究を進めている。
①竹材としての利用・・・カキ筏(日生)
②竹の肥料化実験(岡山大学と連携)
③たけのこの新たな利用法として干したけのこの製造

(3)赤松の植林活動
森の学校の一部にあたる笠井山南麓は、赤松が多くかつて松茸の産地として知られたところであった。しかし里山の荒廃と、松食い虫被害により赤松が枯死してしまった。この赤松を再生するため、毎年3月に、グリーンボランティアにより500本の「桃太郎松」を植林している。次回は26年3月に実施の予定。

(4)干したけのこプロジェクト(写真3)
竹の利用の一つとして、新たな食材である「干したけのこ」を作った。この食材は九州では広く食されているが、本州ではほとんど見ることはない。たけのこを食品として利用するのはおよそ一ヶ月であるが、干したけのこは1年の保存が可能である。試作品を食べてもらうと、独特の食感が多くの人に好まれることがわかった。この食材の利用が高まると、地域の人々も今以上に竹林に関わるようになり、里山再生にもつながってくるものと思われる。24年度、高校生による干したけのこ料理を開発し、「干したけのこ料理レシピ集Ⅰ」を発行した。このレシピ集がきっかけとなり干したけのこが岡山の新たな食材として定着することを期待する。

研究の成果と今後の課題

24年度は21の教育プログラムを作成し実践した。生徒・学生・また一般の方々にも里山の魅力が伝わったものと思う。今後、これらのプログラムをESD教育に生かしていくためには、地域の方々とのネットワークをより強固なものにしていくこと、また継続していくことが重要だと考え、次年度の計画を進めている。
*「就実・森の学校」のホームページhttp://iwanashi.jp/shujitsu-morino-gakkou

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