故郷を愛する児童の育成 〜「津山歌カルタ」で自分たちの町を知ろう〜
代表者:尾崎文雄 所在地:津山市 助成年度:2012年度 教育活動助成
研究の目的
昨年度、未曾有の大震災が東方地方を襲った。10年後、復興の主役になっているのは、生まれ育った町に誇りを持ち、愛情を持つ子どもたちである。そのためにも、未来を担う子どもたちに自分の住んでいる街を知ってもらい誇りを持ち、夢のある未来をデザインしてほしいという願いがこの研究の原点である。津山の歴史と伝統を「歌カルタ」にして楽しく学習することが目的である。
研究の経過
平成22年度に、有志の教職員で集まり「津山まちづくり教育研究会」を設立した。蘭学で有名な歴史ある津山市を子どもたちにもっと知ってほしいという願いが原点である。そこで、津山の歴史や名所をカルタにするという発想が生まれた。カルタにすることで、楽しみながら津山を知り、より故郷を愛する子どもたちが育つのではないかという考えである。
津山カルタの研究を始めるにあたって、津山に存在しているカルタはないかという先行実践の研究からスタートした。10年以上前に作成されたカルタが1つだけあった。手の込んだカルタではあったが、いくつか気になる点も見受けられた。1つは、絵柄や歌の内容にやや古さがみられること。もう一つが、市町村合併して広範囲になった津山市をカバーできていないことである。
上記のことを考慮しながら、新しい津山カルタの特徴を次のようにした。
①新しく合併した地域の歴史や名品などを入れ、現在の津山市をすべてカバーするカルタにする。
②「あ」から「ん」までの50音すべてを含み、文字学習の教材としても使えるようにする。
③取り札には、写真を使い聴覚情報だけでなく児童の視覚情報にも訴えるようにする。
④短時間で実践できるようにカルタを赤札グループ青札グループの二つにわける。
具体的には、次のような手順を踏んで作成していった。実践は5年生である。
パソコン室でインターネットを使い、児童に津山市の名所や名産品、歴史を調べさせた。カルタにしやすいように「あ」から「ん」までの50音が書かれたプリントを配り、キーワードとなる歴史や人物を記入させながらの作業である。「か」ならば、鶴山公園「く」ならば、黒木ダムなどである。
しかし、50音すべてのキーワードを児童だけで考えさせるのは難しい。大人が考えてもなかなか思い浮かばない文字もある。代表的な文字が「る」や「ろ」である。その場合は、学校の先生方にも助言をいただいた。ちなみに「る」は岡山県に生息するルリビタキ、「ろ」はローカル列車を選んだ。この作業がもっとも大変であった。
次に、選んだ50音のキーワードを含めた5,7,5のリズムで句をつくっていった。
津山を代表する歴史、人物、名品、場所をキーワードに入れた津山カルタをつくります。5,7,5のリズムで最後にキーワードがくるようにしてつくってみましょう。最初から傑作をつくろうと思わなくてもいいでから気軽な気持ちでやってみてください。
取りかかりやすいように最初は教師が例を示した。
「ほ」・・・・いい香り食欲そそるホルモンうどん(キーワードが最後にくる)
あまり、高尚なものを提示するとハードルが高くなりすぎる。少し笑いを誘うような教師の句を聞いて安心したのか、次々と楽しい句をつくっては見せにきた。
「あ」・・・・ほかほかで足湯もあるよあば温泉
「ぬ」・・・・高い丘歴史とロマンのぬま住居跡
出たものからいいものを選び、また先生方の意見も聞きながら完成したのが津山カルタである。一部を紹介する。
写真は、実際に製本し完成した取り札である。
研究の成果
- 津山のことを楽しいながら学習し、自分の郷土を愛する態度を養うことができた。
- 総合的な学習、文字学習にともに使えるカルタを作成することができた。
- 地域教材の難しさに悩む先生方に、使いやすく、レベルの高い教材を提供することができた。
- 短時間で実践できるカルタを作成することができた。
- 津山カルタを実践した児童は口々に楽しい、という感想を持っていた。集中することが苦手な特別支援の児童も、熱中することができていた。
今度の課題
- 津山カルタは、新しい津山市全域をカバーしているが、まだ不十分な面もある。歴史的な建築物、人物がすべて網羅されているとは言い難い部分もある。今後、第2、第3段の津山カルタを作成する必要がある。