「夢」の力が「学び」を変える、3年間を見通したキャリア教育 〜宇宙教育活動を組み込んで〜
代表者:岡 久敏 所在地:岡山県 助成年度:2012年度 教育活動助成
研究の目的
H23年度宇宙教育活動の協力校となり、JAXAからの講演が決まった。専門的な内容が多く中学1年生にとってはかなり難しかったが、超一流がもつ雰囲気・取り組む姿勢に生徒は「すごい」と感銘を受けていた。超一流を知る・超一流に触れることは生徒自身の将来にプラスの影響を与え、将来に対して夢やあこがれをもつきっかけになると確信した。また、学習と将来との関連性をよりクリアーにすることで、自分の将来に対する意識が高くなり、学習に対する意識(粘り)が強くなり、「学び」に変化をもたらす。2年生では、超一流をより身近に感じるとともに、生徒自らワクワクし主体的に活動できる取り組みをすることで、生徒が「夢」の力を納得・共感し「夢」実現に対する意識が高まるのではないかと考え、研究を進めることにした。
研究の経過
1人工衛星「まいど1号」を打ち上げた東大阪宇宙開発協同組合の講演会
民間で、JAXAと比べたら素人集団とも思える大阪のおっちゃん達が、なぜ「夢」を追い続けることができたのか?危機をいかにして乗り越えたのか?大阪のおっちゃんという親近感の湧く身近な存在だけど、世の中があっと驚くプロジェクトを成功させた話は生徒に「夢」の力を合点させ、共感させた。
(1)事前学習
ア惑星・人工衛星・探査機等のペーパークラフト作成
惑星(球体)は、地球・月・木星・土星・金星など。そして、その惑星を探査する「はやぶさ」「まいど1号」「あかつき」「かぐや」を作成した。厚めの画用紙にカラー印刷。少し複雑で本格的。出来上がった作品は惑星同士の距離や位置を考えて、天井から吊り下げた。教室が宇宙空間に大変身した!
イ「まいど1号成功までの道のり」聞き取りテスト+資料+感想
元東大阪宇宙協同組合長青木豊彦氏の講演をもとにした朗読を聞いて、事前ワークシートの空欄に当てはまる言葉やキーワードを埋めていった。「おっちゃん達が人工衛星の開発を始めたそもそもの動機は?」「組合の合い言葉は?」「人工衛星に至るまでの紆余曲折?」など素朴な質問や疑問が解決した。
(2)6月7日講演会「まいど1号打ち上げ成功から夢は再び宇宙へ」
夢を追い続ける“大阪のおっちゃん”から諦めない姿勢やもの作りへの挑戦、支え合うことの大切さなどを学んだ。生徒の感想には、今の自分と向き会い「夢」をもつ大切さを痛感した素直な言葉が多かった。自分自身の夢に対して思いを強め、夢を追い続ける確固とした気持ちを抱いたことが文面から読み取れる。
【生徒の感想】
・私はまだちゃんとした夢を持っていないけど、少し先のことを目標にして計画しそれを実行し、確認して、改善してよくしていこうと思います。そうすることで、大きな夢が見つかるといいなと思います。これから自分の名前に恥じないように毎日を過ごしていこうと思います。
・夢は必ず実現すると言う言葉を聞いて、今、もっと自分の夢に向かってかなえられるようにしっかり努力して頑張りたい。棚橋先生も夢は必ず実現するということを信じて諦めず頑張ったんだと思います。だから自分も諦めずに夢に向かって頑張りたいと思います。
・この講演会は自分の夢について考えるいい機会になりました。これから自分のやりたいことをちゃんと考えて、それに向けて準備していこうと思います。そのためにもやっぱり中学校でしっかり勉強してやることをやっていきたいです。
2内之浦中学校の生徒との交流
UK(内之浦中学校との交流)プロジェクトと名付け、各クラスの学級委員をメンバーとし、〈表1〉のような組織構成とした。また、学年全体のプロジェクトであると意識づけるために、広報部が「UKプロジェクトだより」で進行状況を報告、学年全員に配布した。さらに、後期は、「クラス対抗!桜島大根栽培」を企画。大根の成長は、鹿児島をイメージ。修学旅行へつながった。
(〈表1〉PDF参照)
(1)間接交流
主にメールでの交流となった。テーマは企画部が提案。話題が学年全体に広がるよう、より楽しいものになるよう、全員で検討した。例えば・・・・
アジグソーパズルの暑中見舞い
学級委員22名と担当教員2名。合計24枚。縦4枚×横6枚に並べるとひとつの絵になる仕組み。24枚揃うのが待ち遠しかったと、感想が送られてきた。
イプロジェクトメンバー紹介
メンバーの写真と内之浦中生徒18名のみなさんへ一言。さらに、クラスを色でたとえると?担任の先生のPR(例:担当は音楽。どこに居ようとも怒鳴り声は届きます!)クラスの特色が表れ、楽しいメールとなった。メンバー紹介のメールは印刷され、内之浦中学校の教室に掲示されていた。
(2)直接交流
一日目岡山—鹿児島中央—桜島PA−内之浦・内之浦ロケット祭り参加
二日目えがっね祭り参加—内之浦体験—ロケット基地見学
三日目鹿島バラ園・鹿屋航空基地資料館など—鹿児島中央—岡山
8月末『ロケット祭り』に代表生徒3名が参加。内之浦中学校は波の音が聞こえ、運動場からは内之浦宇宙空間観測所のパラボラアンテナが2基、山の上に小さく見えた。「自然豊か」「人類最先端の科学技術」という両極端のある町、内之浦町だった。台風15号の影響で、花火と内之浦湾クルージングが中止、三日目は移動のみとなったが、内之浦中学校の生徒達と一緒に御輿を担ぎ汗を流し、地元名物のえっがね(伊勢エビ)汁を頂くなど、体験・交流ができ代表生徒達はとても満足気だった。この様子は南日本新聞に掲載された。
研究の成果
生徒達の「夢実現」に対する意識は間違いなく高くなった。それは、「今自分が何をすればいいのか?」「中学時代にしておくべきことは?」と一人一人が答えを見つけ、学習や行事に対してより前向きに真剣に取り組む姿で分かる。また、「次はどんなことをしようか、ワクワクする」UKプロジェクト委員の言葉は、主体的に取り組んだからこその言葉である。さらに、「クラス対抗!桜島大根栽培」は、NO.1予想を保護者も投票。一大イベントになり、結果を楽しみに待っている。
【超一流・プロフェショナルの方に共通することは?】
・どの先生も好きなことに一生懸命だと思った。お話を聞いていると、やはり「努力無しでは結果は出ない」と思った。努力は大事、改めて分かった。
・最後までやり遂げる根気強さ。努力を惜しまない心。「あきらめない」「できない」と決めつけない心。
・4人の先生方一人一人、自分がやったことを話しているとき、とても楽しそうにしている感じがしました。共通することは、何事にもあきらめずに挑戦することだと思います。
今後の課題
- 改選されたため、前期からの学級委員は、後期半数となった。新しく学級委員になった生徒の中には、委員の仕事に加えてこのプロジェクトのあることを知らず、知っていてもこれほど大変だとは分からず、最後までポテンシャルを上げれず主体的に取り組めない生徒もいた。有志を募る方法がベターだったかもしれない。
- 1年生から行ってきたキャリア教育の成果が分かるのは、生徒達が自分の夢に向かって進路選択をするときである。2年間の積み上げを活かせるよう、ラスト1年を大切に取り組んで行かなければと思う。
- 9月に行う予定だった内之浦ロケット祭りの報告会が、学校行事との兼ね合いでUKプロジェクトだよりでの報告となった。その結果、修学旅行直前の3月に、事前学習の一環として、内之浦ロケット祭りのプレゼンを行った。
- 内之浦中学校のご厚意で交流が実現したが、管理職を通して事前に了解を取る必要があった。