横仙歌舞伎の振興−床山師の技術向上と新たな人材育成

団体名:横仙歌舞伎保存会
代表者:花房昭夫 所在地:奈義町 設立年:1966年 メンバー数:61名
助成年度:2011年度 文化活動助成
  • 「絵本太功記十段目尼ケ崎の段」
  • 「寿式三番叟」

目的

横仙歌舞伎保存会は、岡山県下で唯一かつら、衣装、大小道具を保有し、役者だけでなく化粧、衣装、床山などの裏方の育成も続けてきた団体である。現在、県下で活動を続ける歌舞伎保存団体(美作市粟井春日歌舞伎保存会・勝田歌舞伎保存会・奈義町松神会)などの公演すべての道具類の貸出と本番では衣装着付け、化粧、義太夫の語りや三味線演奏など裏方の支援を行っている。
その意味では、横仙歌舞伎保存会で管理する道具類は広く東作州地方の地歌舞伎の保存と振興に活用されており、自ずと使用頻度も多くなる。特にかつらは、衣装、化粧と並び歌舞伎の演出上大変重要なもので、かつらひとつで、役柄や、年齢、身分まで表現するものである。歌舞伎のかつらは繊細で、傷みや汚れが進んでいるものが多く新たに購入すると高額なため、使用頻度の高いものから修理を行った。

経過

歌舞伎の公演で、かつらは役者の役柄や個性、性格までも表すもので、衣装、化粧に並んで大変大切なものである。歌舞伎のかつらは本物の人の髪を絹布(羽二重)に植え銅で作られた帽体に貼り付けてあり、芝居ごとに結替えをし使っている。女型のかつらは汎用性が高く、比較的手入れが容易であり、長持ちするのに対して、男性役のかつらは専用品が多く、特に今回の修理を行ったかつらは、結替えのできない形のもので、使用頻度が高く、長年の使用で化粧や埃で汚れと傷みが進んでおり大幅な修理を行った。

成果

今回修理を行った菱皮(ひしかわ)前髪(まえがみ)ビン張りは、絵本太功記や白浪五人男など、毎年必ず上演される外題で使用するもので、かつらを解体し、洗髪し羽二重に再び植毛しなおし、帽体へ張り、結直しをすることで新品のように再生できた。
また、人毛で作られたかつらは定期的な洗髪と手入れでかつらの寿命が延び、長く使用が続けられる。美しいかつらは舞台映えが良く、出演者のモチベーションも高まり、気持ち良く舞台に出演していただくことできた。また、今回はかつら業者の好意でかつらのメンテナンスを指導していただき、今後の保存伝承活動のためにたいへん勉強になった。

今後の課題と問題点

横仙歌舞伎で現在かつらを50個程度所有しているが、プロのように個人の専用かつらはなく、同じかつらをたくさんの者で使うため、どうしても無理な使用をし、かつらを傷める場合があり、今後も計画的な修理をしていかなければならない。
かつらだけでなく、衣装も古い物はサイズが小さく現代の人が使用するには大幅な改修が必要であり、今後特に傷みの進んだものから修理、新規作成を計画して行かなければならない。また、かんたんな修理や、結替えなどは保存会でもできるように、プロを招いて教室を開講していき、人材育成を進めていきたい。

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