地域力向上のための居場所作り

団体名:牧石子どもプロジェクト黄にらっ子
代表者:森本 寿美 所在地:岡山県 
助成年度:2011年度 教育活動助成
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研究の目的

近年、生活環境の変化に伴い、少子高齢化、共働き、一人暮らし世帯の増加の波が牧石地区にも押し寄せ、子どもを見守ることができにくい環境になってきている。そのため、子育て中の保護者の心配や不安を軽減し、ともに支えあってゆく体制をつくることが急務となっている。
「牧石子どもプロジェクト黄にらっ子(牧石地区の特産品の黄にらのように、すくすくと成長してゆく子どもをイメージして命名)」(以後、「黄にらっ子」)は、牧石地区のネットワークを存分に活かし、子どもたちを地域で支えるとともに、地域住民が気軽に集える居場所を作っていくことをめざし、昨年度発足した。
本研究では、「黄にらっ子」が学校やPTAや地域団体との隙間に介入し、それぞれの団体の特性を活かしながらネットワークを構築するとともに、子どもたちと地域住民との交流を促進するために、①子どもを育てる②大人を育てる③大人や地域をつなげるの3点に研究の目的を具体化して、取り組んだ。

研究の経過

1、講演会「ぼくの場所〜悩む親から考える親へ〜」(平成23年7月6日)
障がいを抱えた子どもや大人の方とどういった関わりをするのが望ましいか、またどういう視点をもつとよいのかを具体的に学ぶ機会を持つため、講師を藤井弥生氏(人・ふれあい・ひろば代表兼岡山県青少年相談員)に依頼し、講演会を行った。
①参加者:小学校保護者及び地域の民生委員約20名ほど
参加者の声:「障がいの有無に関係なく子どもの目線で考えることの大切さに気づくことができた。」「あらためて子育て・子どもへの接し方を見直すきっかけができた。」「ついつい親の視点で子どもに注意していたが、子どもの気持ち目線で考えようと思った。悩まず考える親になりたい。」「困っている人を助けよう!というセリフは心に残った。社会適応できずに困っている感の理由をきけるようになりたいと思った。」という意見があり、講演を通じて、自分の子育てについて振り返る機会となった。

2、わくわく科学ランド(平成23年8月8日)
豊かな文化的活動として、科学の魅力を実験を通じて体験することを目的に「わくわく科学ランド」を開催した。講師の小田成知先生・藤本忠男先生(わくわく科学ランド代表)の指導を受けながら、地域住民から参加を募った15名のスタッフで実施した。
①参加者:児童69名スタッフ:15名
②小田先生・藤本先生による科学実験:空気砲・ペットボトルロケット・錯覚体験・ドラム缶つぶしなど
③各ブースでの実験(12ブース)
プラ板/ダイラタンシー世界/手作りラムネ菓子/マイナス30度の世界/ストロー笛/くるくるシャボン玉/音コプター/牛乳パックトンボ/手作りスーパーボウル/かるめ焼き/風船スライム/ドライアイスシャーベット/飛ぶ種の模型ミニ
科学実験ブースが多いのにもかかわらず、子どもたちは5〜9ブースを効率よく回ることができた。また、スタッフに中学生も加わり、活動の進行がスムーズに行われ、スタッフ・保護者ともに子どもたちと一緒に科学のおもしろさを体感することができた。地域の方も参加したことから、電子町内会へも開催時の様子が掲載された。

3、獅子舞体験(平成24年1月14日)
新年の行事の一つである獅子舞を子どもたちに披露し、日本の伝統文化を体験することを目的に実施した。PTAのとんど焼きの日に合わせて、昨年度たちあがった備前獅子舞中原社中(地域のお父さんたち)を招待し、地域の文化的活動の場とすることができた。また、広報紙は町内会と近隣の保育園・幼稚園・高齢者施設・JA及び郵便局に配布し掲示や案内を依頼したので、地域の高齢者施設等、小学校関係者だけでなく近隣住民も参加することができた。
①参加者:約500名
②参加者の声:「地域の方がたくさん参加してよかった。獅子舞の方が地域の人でより身近でよかった。」獅子に直接手をふれたり、頭をかじられたりと子ども達の喜ぶ様子が印象的であった。

4、年間8回の打ち合わせ会を開催した。(内1回は科学館の事前講習会)
各イベント打ち合わせや地域のネットワーク構築をどのようにしていくかを話し合った。

研究の成果

それぞれのイベントを通じて、どのような成果があがったのかを検証する。
①子どもを育てるから大人を育てるへ
わくわく科学ランドは子どもたちが科学的な体験を行うことを目的に開催したが、子どもたちの育ちのみならず、相互作用により大人たちが自ら考え、互いに協力していく親育ちへも影響を与えた。また、有志の賛同者が増え、当日スタッフとして参加し、子どもたちと同じ空間でともに感動体験をすることにつながった。
②大人を育てるから地域をつなげるへ
講演会には、地域の民生委員・主任児童委員の方も参加されており、障がい者への対応を学べたとの意見があった。受講者が、地域で子どもや障がい者を見守り、支援へとつなげるネットワーク作りの契機となり、地域に発達障がいの理解を促すことにつながった。
③大人や地域をつなげる
地域には町内会や地区社会福祉協議会や民生委員・主任児童委員など既存の団体が存在し、また学校やPTAなども個々に存在し、それぞれに活動を行っていた。獅子舞演舞を通じて、広報紙を町内会や高齢者施設や保育園等に配布し掲示してもらうことで、図2に示すように、地域を巻きみ、ネットワーク作りに好影響を与えた。

今後の課題


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