人間関係づくりを土台にした学級集団の育成「みとめ合い ささえ合う あたたかい集団を目指して」 〜授業のユニバーサルデザイン化を通して〜
代表者:佐藤 琢夫 所在地:岡山県 助成年度:2011年度 教育活動助成
研究の目的
本校の児童は友達同士の人間関係が希薄で、友達との関わり方が十分身についていない面がある。それが、学習集団としてのまとまりを阻害していると思われる。そこで、互いに認め合い、支え合うあたたかい集団を作りたいと考えた。そのためには、落ち着いた教室環境で分かりやすい授業を展開することと、意図的に友達と関わることを大切にした学級経営を展開することの両面が必要である。具体的には、授業面では授業のユニバーサルデザイン化を研究し、学級経営面では人間関係づくりを工夫することにした。
研究の経過
1児童の実態把握(1)教職員が見取った学級集団や子どもの実態を分析
(2)「アセス」を活用して、学習集団の視点から見た子どもの実態を分析
(3)「アセスメントシート」を活用して、個別の支援の視点から見た子どもの実態を分析
2授業のユニバーサルデザイン化の工夫
(1)教材研究
(2)単元構成や導入、課題提示の工夫
(3)発問や指示、説明の工夫
(4)板書構成の工夫
(5)ICT活用の工夫
(6)個への支援や指導と一斉指導の関連させる工夫
3学習集団作りの工夫
(1)環境づくり
(2)学習ルールの徹底
(3)特別支援コーディネーターとの連携
(4)人間関係づくりを目指した取り組みの工夫
(5)挨拶の習慣化を目指した取り組みの工夫
4授業研究と校内研究【概要】
5月 研究領域・研究主題・研究組織設定と子どもの実態把握
6月 校内研修「アセスメントシートについて」
講師県総合教育センター定久照美指導主事
校内研修「アセス」の活用
授業実践「算数」6年B組「算数」2年A組
8月 校内研修「特別支援教育の視点を取り入れた通常学級の授業」
講師ノートルダム清心女子大学青山新吾先生
校内研修「学習規律や環境整備について」
9月 授業実践「算数」4年A組「体育」2年A組「国語」2年B組
校内研修「アセスメントシート結果の分析と活用」
講師県総合教育センター定久照美指導主事
10月 授業実践「図工」3年B組「音楽」1年B組
授業実践「社会」5年A組
講師ノートルダム清心女子大学青山新吾先生
11月 授業実践「自立活動」特別支援学級「理科」6年A組
12月 授業実践「理科」4年A組「体育」4年B組
1月 授業実践「国語」1年A組「学活」3年A組「理科」5年B組
2月 研究のまとめ
研究の成果
児童の実態把握では、教職員の主観的な実態把握だけでなく、「アセス」や「アセスメントシート」の客観的な実態把握と分析による支援方法の方向性が明確になり、指導案作成や授業実践における指導や支援を具体的に行うことができた。
授業面では、配慮を要する子どもが、より落ち着いて学習に取り組むことができるようになった。また、教職員の意識も向上し、配慮を要する児童への的確な支援と一斉指導のバランスがとれるようになってきた。また、「学習のきまり」を全校で実践し徹底した。学級経営面では、あたたかい集団づくりに向けた教職員のアイデアを出し合い、共有することができた。さらに、人間関係づくりの基本として「挨拶のできる子ども」を目指して、児童会や全職員で工夫した取り組みを行った。年度当初に比べて挨拶ができる児童が増してきた。
これらの取り組みから、あたたかい学習集団がつくられつつある。
今後の課題
授業のユニバーサルデザイン化の研究は深まりつつあるが、支援や指導が細やかになればなるほど、児童の力が伸びにくいといった課題も見られた。そこで、精選して実践したり授業を重ねるごとに支援や指導の手立てを軽減したりする必要がある。
学級経営面では、学年の連携の大切さや低・中・高学年の発達段階に応じた支援を共通理解する必要がある。
今後は、指導するべき場面や内容は確実に指導し、特別支援教育の視点を大切にしながら細やかに支援や指導を行うことが必要ではないかと考えている。さらに、学級経営の取り組みを学年や校内で共通理解していきたいと考えている。