記録集「写真家山﨑治雄の写した岡山 1938−1960」の発刊
代表者:藤井 弘 所在地:井原市 設立年:2010年 メンバー数:8名 助成年度:2010年度 文化活動助成
目的
写真家山﨑治雄は、戦後直後から1987年の最晩年に至るまで、変わりゆく郷土岡山の景観、民俗、生活風俗、文化財等の写真記録を郷土固有の共有財産とするため、その生涯を費やし、また最晩年に至るまで後進の育成にも尽力した。しかし山﨑の想いと活動の証である貴重な写真資料類は、その多くが未発表、もしくは数十年以前に公表されたため、近年省みられてこなかった経緯がある。
本活動はそのような山﨑治雄の遺した写真記録の掘り起こしと保存保護、調査研究、またその業績の普及顕彰を目的とする。そして「共有財産としての写真記録の活用」を願って遺された山﨑の写真記録を通し、写真先進地でもあった岡山の地において、岡山にしかない地域に根ざした記憶の継承に資することを目指す。
経過
調査研究活動:犬島での調査および定点観測記録、美咲町(旧:旭町)での調査保存活動、またい草、吉備津の記録等1960年頃までの活動の調査および資料発掘を実施した。また戦前の活動の調査のため、国立国会図書館、植田正治写真美術館、東京都写真美術館図書室等で戦前の写真作品掲載誌を調査。
顕彰普及活動:4月30日レディオモモ出演。5月3日「犬ノ島から覗いてみたら」ツアーとプレゼン発表(参加人数約38名)。6月5日−6月30日岡山市デジタルミュージアム「アイランダー岡山犬島の今昔」展参加。6月5日開催記念イベントにて発表およびシンポジウム参加(動員約1,480人)。6月13日「犬島貝塚探険&クリーンアップ大作戦」(参加人数約29名)。7月18日−8月8日犬島自然の家にて「犬島発掘」現地パネル展参加。10月8日−11月7日岡山県立美術館「岡山美の回廊」展山﨑治雄撮影旭川ダム記録写真展示協力。11月23日「東の島々から犬島を眺めてみる」ツアー(参加人数約24名)。2011年3月21日「瀬戸内海最古の貝塚に行く」ツアー
成果
犬島諸島を中心とした4回のツアーと2度の展示広報活動、シンポジウムでの発表を実施。岡山県立美術館の展示に協力。さらに旧・旭町では国民文化祭に関連し、地元主体による山﨑治雄写真展が開催された。また戦前から1960年までの調査成果は、A5版小冊子(24ページ)に記録集としてまとめた。
また10月6日(水)毎日新聞岡山版に「よみがえる「昭和の岡山」写真家山﨑治雄の世界「保存顕彰する会」発足次の世代へ」として、本会の紹介記事が掲載された。
今後の課題と問題点
- 戦前の資料調査は困難であった。特に1939年東京で開催された「浅口郡六条院満州分村移民記録写真展」の資料は発見できず、継続調査が必要。また石津良介、植田正治、そして山﨑も属した「中国写真家集団」については、蔦谷典子氏の先行する貴重な業績があるとは言え、日本の写真史の分野でもまだまだ未調査の部分が多い。この点についても調査を続行し、専門家と情報交換していく必要がある。
- 膨大な量の写真記録をデジタル化し、重要なものは大判写真としてプリント保存、そして公開するには、まとまった予算を持続的に確保する必要がある。
- 県立美術館には数年来、情報や資料、作品の提供をしてきた。岡山が写真先進地であったことと山﨑治雄の業績を改めて紹介し後世に伝えるためには、今後「市民と行政とのよりよき共働体制」を構築する必要がある。情報交換、役割分担等、担当者と協議、協力を重ねていけることを期待したい。