子ども専用電話「チャイルドライン」の受け手ボランティア養成講座

団体名:特定非営利活動法人子ども劇場岡山県センター
代表者:宇野恵 所在地:岡山市 設立年:1986年 メンバー数:17名
助成年度:2010年度 文化活動助成
  • 受け手養成講座で話す芹沢俊介さん(2010. 5. 30)

目的

私たちは子どもの心の居場所として、2001年に子ども専用電話チャイルドラインを開設しました。子どもが話したいと思ったとき、どんなことでも耳を傾ける電話です。匿名でかけられる電話だからこそ話せることがあります。秘密は守ります。大人の価値観を押し付けたり、評価したりしません。イヤだと思ったら子どもの方から電話を切っていいのです。主導権は子どもにあります。これがチャイルドラインのコンセプトです。
また、受け止めた子どもの声を聴きっぱなしにしないで、子どもたちの状況を社会に伝えていくのもチャイルドラインの大切な役割だと考えています。

経過

チャイルドラインはおかやま県内の18歳未満の子どもを対象に2001年に期間限定で3回、2002年5月から毎週月曜日・土曜日の午後3時から9時までの常設に踏み切りました。2009年5月より、各地のチャイルドラインと連携して、日本中の子どもたちからの電話をフリーダイヤルで受けています。
あわせて電話の「受け手ボランティア」の人材確保のため、毎年「受け手ボランティア」養成講座を開催しており、平成22年度は第10期生を迎えました。また、語彙が少なく自分の気持ちを表現することが苦手な子どもを受容し、共感するための継続的なスキルアップ研修にも力を注いでいます。
また、「支え手」を設置し、受け手ボランティアのストレスなどをケアする体制をとっており、「受け手」「支え手」の研修は臨床心理士などの専門家の協力を得て行っています。
子どもたちへのチャイルドラインの周知は、各市町村教育委員会と各小・中学校の協力を得て、現在では年1回、県内すべての小・中学生に電話番号を明記したカード配布により行っています。
毎年電話の内容をまとめた年次報告書を発行し教育委員会、各学校を始め、各界へ配布しています。また、学校や地域でチャイルドラインで受けた電話内容から見える子どもの現実をお話ししています。

成果

2009年に受けた電話件数は、4,842件で、北海道から沖縄までの子どもたちからのものでした。指示や指導をしないで共感を持って聴くことに重きを置くチャイルドラインのコンセプトと受け手ボランティアの傾聴の「質」に子どもたちからの期待が高まっているのが数字上からも見えます。
「受け手ボランティア養成講座」を毎年開催した結果、現在42名が受け手ボランティア登録をしています。また、語彙の少ない小学生や、「性の悩み」を抱える思春期の子どもたちの気持ちに焦点を当てる継続的な研修(年間12回)により「受け手」の聴く力の向上がはかられています。
また、電話内容をまとめた年次報告書、子どもの声リーフレットの発行や、シンポジウムの開催、学校や地域での講演などにより、子どもが抱えている問題を地域社会に提起できていると感じています。

今後の課題と問題点

受け手の増加と更なるスキルアップ:年間、5,000件近くの電話を受けていますが、これはアクセスした子どもの30%弱に過ぎません。受けられる電話の件数を増やすには受け手ボランティアの養成が不可欠です。また、電話件数の増加とともにフリーダイヤル料金負担は増えることになりますので、それを支える運営費の捻出が課題です。
運営費について:チャイルドラインは講座参加費、助成金、賛助会費で運営していますが財政的には潤沢ではない状態です。上記課題の解決に向けても、また受け手の「質」の向上のためにも財政的な裏づけが必要だと痛感しています。

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