調査研究テーマ:犬島製錬所のルーツは、倉敷中庄の帯江銅山にあった。
代表者:戸板啓四郎 所在地:倉敷市 設立年:2005年 メンバー数:9名 助成年度:2010年度 文化活動助成
目的
今回、私たちが「アイランダー岡山・犬島の今昔」展に参加することに決めた最大の理由は、近代化産業遺産「犬島精錬所」が、ほぼ100年前の明治42年(1909)に、倉敷中庄の「帯江銅山」から煙害が原因で移転したという歴史的繋がりによります。「帯江銅山」は、古くは8世紀にすでに奈良東大寺の大仏鋳造に「備中桐木谷(中庄村)」の産銅を献納していました。また、江戸時代には銅山の試掘願いが出されたとの記録も古文書にみえます。明治期には、鉱山開発のブームが起り、中小の鉱区が中庄でも開坑されました。明治20年代に入ると、三菱から岡山の実業家・坂本金弥に鉱山経営が移り、「帯江銅山」の命名もこの頃で、急速に発展しました。しかし、先に述べた「煙害」等の公害問題により、明治42年に製錬所を犬島に移転。4年後には、坂本は藤田組に会社を売却します。その藤田組も6年後の大正8年(1919)、帯江鉱山の操業を停止します。犬島製錬所も同年、わずか10年の操業で休止されてしまいます。私たちはこうした「帯江銅山」の歴史を、地元の人はもちろん、岡山の人たちにも是非とも知ってもらいたいと参加しました。
経過
今回の展示は、会の活動としては「規模・期間」ともに初めての経験でした。また、会場がデジタルミュージアムということで「視覚」「映像」に最大限の注力を試みました。それは、見学者にとって「見やすい」「楽しい」「分かりやすい」展示コーナーを用意することでもありました。会員の中から(1)展示、(2)映像、(3)渉外、(4)受付の4部門に、スタッフとして参加・協力をお願いしました。3月に第1回の準備会合を持ち、展示会のテーマを検討するとともに、各担当部署の準備を急いでもらいました。「犬島製錬所のルーツは、倉敷中庄の帯江銅山にあった」−このテーマにそって、6月の開催までに数回会場の下見もしました。スタッフへの注文も、今まで以上に厳しくなりました。
成果
「アイランダー岡山犬島の今昔」の開催
日時:2010年6月5日〜30日
場所:岡山市デジタルミュージアム5階
1ヶ月近い展示会で、倉敷の「中庄」で掘り出された銅鉱石が、どのようなルートで、何によって「犬島」にまで運び出されたか、ふるさとを流れる「六間川」。金比羅詣にも利用された瀬戸内の海上交通、そうした歴史を県民の皆さんに広く紹介するまたとない機会になったと考えています。アンケートに寄せられた意見も、大変好意的で励ましの言葉が多く寄せられました。私たちの努力は幾分は報われたものと考えています。
今後の課題と問題点
今回の展示会については、「中庄の歴史」にその足跡を掲載し、読者の皆さんにも批評していただく予定です。また、各所で展示及び上映会も予定しています。「帯江銅山」と「六間川」、さらに多様な角度からの「中庄の歴史」の考察etc。秋期「ふるさと歴史講座」の開講(9月から12月までの4回)など、さらに一層の地域おこしを考えています。